■人類の進化
生物としての人間の特徴を理解するとともに、それに対する社会の受け止め方について考えることを目標とする。
試験100% Canvas LMSによる中間試験2回(各成績の25%)、期末試験(成績の50%)を実施する。 期末試験は試験期間に行う。(15回目の講義ではない。)
受講するにはCHIPSによる抽選に当たる必要がある。加えて、LMSで履修を希望する旨のメールを送ること。 抽選に応募していなくても、希望する旨のメールを送ることで、受講が認められる場合がある。
教科書は、井原泰雄,梅﨑昌裕,米田穣の『人間の本質にせまる科学:自然人類学の挑戦』(東京大学出版会 2021年) なくても問題なし。
この科目は文理学部のDP及びCPの3、4、5に対応している。
外人にあるまじき日本語の上手さ。ほぼ日本人。
履修を希望する者はLMSでその旨のメールを送ること。
我々は何者で何処から来て何処へ行くのか?→人類学の誕生
思想
⾃然⼈類学の基本課題 ⼈類の⽣い⽴ち:我々はどこからきたのであろうか? ⽂化・哲学⼈間はどのような存在なのか?⼈間は⾃然を超越する存在なのか?⼈間と他の動物の間には絶対的な断絶はあるのか?⾃然科学としてのヒトの研究⽣物としてのヒトの特異性ヒトの進化の過程ヒトが進化した理由や原因現代のヒトの⽣物学的な多様性の理解
⾃然⼈類学の基本課題 ⼈類の⽣い⽴ち:我々はどこからきたのであろうか?
⾃然⼈類学の2⼤トピック ⾃然⼈類学は⼈類の⽣物学的な基盤を主要な研究トピックとする学問分野 トピック1:ヒトの進化 トピック2:現代のヒトの⽣物学的な多様性 英語では、Human evolution and modern human biological diversity
⾃然⼈類学の2⼤トピック ⾃然⼈類学は⼈類の⽣物学的な基盤を主要な研究トピックとする学問分野 トピック1:ヒトの進化 トピック2:現代のヒトの⽣物学的な多様性
英語では、Human evolution and modern human biological diversity
⽂化的背景:創世神話 Origin myth 世界のほとんどの⺠族や宗教は創世の物語を持つ。 現代の⼈類起源論 ⾃然主義 Naturalistic奇跡や神々に頼らない⾃然現象としての説明科学的 Scientific現代の科学的な理論と⽅法によって得られる知⾒に基づく説明
⽂化的背景:創世神話 Origin myth 世界のほとんどの⺠族や宗教は創世の物語を持つ。
⾃然科学の Epistemology 認識論 Empiricism 経験主義:knowing based on the senses and experience ⼈間の五感を使う観察と経験によって得られる知識を優先する。 単語としても⽇常的によく使われる:Empirical 形容詞 肯定的Empirical science Empirical observation Empirical evidence否定的“That is not an empirical statement.”non-empirical 〇〇
⾃然科学の Epistemology 認識論 Empiricism 経験主義:knowing based on the senses and experience ⼈間の五感を使う観察と経験によって得られる知識を優先する。 単語としても⽇常的によく使われる:Empirical 形容詞
経験主義に基づくEmpiricalな研究とは ・Observation 観察 が必要 ・実際に⾒る、聞く、触る、嗅ぐ、味を感じる。 ・測定機器を使う。:5感を超える観察能⼒を開発して活⽤する(望遠鏡、顕微鏡など) ・出来れば情報を数値化する:数値のほうが正確で再現可能 ・観察不能なものはそもそも研究の対象にしない。 観察の主な⽅法論 Experiment 実験: ・重要な要因や条件をコントロールした観察 ・ターゲットしている要因を操作しながら、ほかの要因は固定する。 Fieldwork 現地調査: ・実世界の現場で現状を観察する。 ・野性動植物の研究は多くの場合は野外調査 ・化⽯調査はターゲットしている⽣物が⽣息していた地域において、⽣息していた時代の地層が露出する地球の地域に⾏って調べる。 ・ヒトを対象とする研究は世界中の⼈々を訪ね歩いて協⼒をお願いする。
経験主義に基づくEmpiricalな研究とは ・Observation 観察 が必要 ・実際に⾒る、聞く、触る、嗅ぐ、味を感じる。 ・測定機器を使う。:5感を超える観察能⼒を開発して活⽤する(望遠鏡、顕微鏡など) ・出来れば情報を数値化する:数値のほうが正確で再現可能 ・観察不能なものはそもそも研究の対象にしない。
観察の主な⽅法論 Experiment 実験: ・重要な要因や条件をコントロールした観察 ・ターゲットしている要因を操作しながら、ほかの要因は固定する。 Fieldwork 現地調査: ・実世界の現場で現状を観察する。 ・野性動植物の研究は多くの場合は野外調査 ・化⽯調査はターゲットしている⽣物が⽣息していた地域において、⽣息していた時代の地層が露出する地球の地域に⾏って調べる。 ・ヒトを対象とする研究は世界中の⼈々を訪ね歩いて協⼒をお願いする。
観察の主な⽅法論
科学の哲学:科学のプロセス 研究とはどの様な⼿順で「科学的」になるのであろうか? ただ⾝の回りを⾒ているだけでは「科学的」な観察とは⾒なされない! 「科学」の条件:主に2つの⽴場 帰納主義 Inductivism(Induction)観察が理論構築の前に来る。観察の蓄積⇨一般化⇨理論構築反証主義 Falsificationism(Falsification)観察は理論を検証する。理論による仮説⇨観察⇨仮説の否定反証主義の提唱者:Karl Popper Inductivism 帰納主義Falsificationism 反証主義主な主張・客観的に観察を重ねて現象を把握する。・⾒えてきた事例の蓄積を⼀般化する。・⼀般化できる現象をもとに理論を構築する。・観察が多くなればなるほど理論が裏付けられて、確かなものになっていく。(確からしさ)・論理的には理論の「証明」や「確認」は不可能・可能なのは理論の否定(反証 falsification)のみ・科学者は理論に基づく仮説を提案(演繹法 deduction)・理論的に仮説を否定する可能性のある観察を繰り返す。・科学的理論とはまだ否定されていない理論問題点・同じ観察を繰り返しても論理的には「証明」にはならず、次の観測で結果が異なる可能性が残る。・観察の理論依存性(theory dependence of observation)⇨そもそも研究者が何を観察するべきかは理論によって導かれる。
科学の哲学:科学のプロセス 研究とはどの様な⼿順で「科学的」になるのであろうか? ただ⾝の回りを⾒ているだけでは「科学的」な観察とは⾒なされない! 「科学」の条件:主に2つの⽴場
科学的な主張の基準 ・仮説の反証可能性 Falsifiability ・反証ができない主張は⾮科学的とみなす。 ・検証する⼿段がない仮説も unfalsifiable とみなされることがある。 反証可能な仮説をTestable hypothesisという よくある表現 This is not a falsifiable statement. Can this theory lead to testable hypotheses?
科学的な主張の基準 ・仮説の反証可能性 Falsifiability ・反証ができない主張は⾮科学的とみなす。 ・検証する⼿段がない仮説も unfalsifiable とみなされることがある。
反証可能な仮説をTestable hypothesisという
科学史の視点 反証主義への批判 とても新しい⼤胆な仮説ならば理論の「確認」と認めてよいのではないか (例えばアインシュタインの相対性理論はニュートン⼒学では想像もできない現象を多く予測した) 科学者は理論と合わない現象が観察されたぐらいでは諦めないで頑張り続ける。 科学⾰命論(提唱者:Thomas Kuhn) 科学者は特定の⾃然観に基づく理論体系(パラダイム Paradigm)に基づいて研究を進める。 科学の進歩はパラダイムの⼤転換(Paradigm shift)とともに起こる。 パラダイム転換は科学⾰命 教科書によく紹介される Paradigm Shift:天⽂学の天動説から地動説への⼤転換
科学史の視点
科学哲学としてのポイント:⽅法依存性 Method dependence of observation 帰納主義では天動説と地動説の区別がつかない。(太陽が東に上るのは同じ) 地動説は観察⼿段がないためになかなか検証が難しかった。 「新しい観察⼿段の開発で仮説の検証が可能になった。」+「天体観測の場合は望遠鏡の発明で⾶躍的に進歩した。」 ⽐較的精密な天体観測の結果を報告した Galileo ガリレオは⾃分で望遠鏡を作った。 ・科学論⽂には必ず「⽅法」を報告する部分が必要
科学哲学としてのポイント:⽅法依存性 Method dependence of observation 帰納主義では天動説と地動説の区別がつかない。(太陽が東に上るのは同じ) 地動説は観察⼿段がないためになかなか検証が難しかった。
「新しい観察⼿段の開発で仮説の検証が可能になった。」+「天体観測の場合は望遠鏡の発明で⾶躍的に進歩した。」 ⽐較的精密な天体観測の結果を報告した Galileo ガリレオは⾃分で望遠鏡を作った。 ・科学論⽂には必ず「⽅法」を報告する部分が必要
⾃然⼈類学の Paradigm:進化論 ・19 世紀までに⾃然史(Natural History)の知⾒は多く集積されていた ・ダーウインの進化論のおかげで⽣物学は全般的に整理されて、統⼀的な理論体系による研究の⽅向性が⽰された。 ・⼈類の起源についての研究も進化論に基づく理論によって導かれるようになる。
⼈類学の特徴 Holistic ホーリスティック、Holism ホーリズム: ・部分の理解だけでは全体は理解できないという思想 ・パーツの相互作⽤はシステム全体を⽀えると考える。 ・Holistic な視点は研究の専⾨化やパーツ・部分の Analysis 分析を否定しない。 ・それぞれのパーツをしっかりと理解した上でシステムの全体像を描こうとする。 ・モデルは⾝体:⽣命を維持するためには臓器全てが機能しなければならない。 ・Holistic の反対は Reductionist 還元主義 Comparative ⽐較 ・様々なスケールでの⽐較検証:哺乳動物とその他⽣物、霊⻑類とその他哺乳動物、ヒトとその他霊⻑類、現代のヒトと化⽯⼈類、ヒト同⼠ Fieldwork フィールド調査、野外調査、現地調査 ・世界中の⼈々と交流しながら、地球上の様々な環境を調査する。
⼈類学の特徴
Reductionist 還元主義(Holistic の反対) Reductionist とは部分⼀つで全体が決まるという思想 定番の還元主義は「お⾦が全て」や「遺伝⼦で全てが決まる」
練習試験を行う。(成績評価には含まれない。)
進化論と世界観 進化論も一種の創世神話。しかし、科学的である。
進化のある世界観 ヒトは他の類⼈猿から分岐して進化してきた霊⻑類の⼀種 ⽂化と道具使⽤と社会的協⼒を⼤きく拡⼤させて、地球上のあらゆる環境に適応して進化してきた。
進化のある世界観
進化のない世界観(中世ヨーロッパの場合) 中世ヨーロッパにとって「世の中の秩序」は固定されていた。 Scala naturae(英語:Natural Scale)=Great Chain of Being 中世ヨーロッの世界観:Ladder of Intellect(知性の階段) God「神」 Angel「天使」 Heaven「天国」 Human「⼈間」 Beast「獣」 Plant「植物」 Flame「炎」 Stone「⽯」 進化のない世界観の特徴 ⽣物種は固定されている。 創世期に全ての種が創造される。 それぞれ別々に創造される。 種は変化しない。 種は絶滅しない。 新しい種はない。 進化論のない世界観は⽇常の観察とはさほど⽭盾しない。
進化のない世界観(中世ヨーロッパの場合) 中世ヨーロッパにとって「世の中の秩序」は固定されていた。 Scala naturae(英語:Natural Scale)=Great Chain of Being
中世ヨーロッの世界観:Ladder of Intellect(知性の階段)
進化論の前夜の時代 ⽣物は変化するのではないかと薄々感じられていた。 ・化⽯が発⾒される。(昔に⽣きていた⽣物が絶滅した痕跡、実は古代から世界中に記録あり) ・家畜・作物の品種改良(⽣物は変化しうる。) ・地質学の発展により「地球は古い」と認識されるようになる。(⻑い年⽉を経て地層が蓄積する。) ・⾃然史の研究が進み、世界の⽣物多様性が認識されるようになる
進化論 Theory of Evolution ⾃然淘汰説の提唱者 ・Charles Darwin チャールズ・ダーウイン 1809‒1882 ・Alfred Russel Wallace アルフレッド・ウオーレス 1823‒1913 ダーウイン著:「種の起源」
進化論 Theory of Evolution ⾃然淘汰説の提唱者 ・Charles Darwin チャールズ・ダーウイン 1809‒1882 ・Alfred Russel Wallace アルフレッド・ウオーレス 1823‒1913
ダーウイン著:「種の起源」
進化のある世界観 ⽣物種は常に変化する。 ・種(species)は変化する。 ・種分化(speciation)によって新しい種が発⽣する。 ・種は時に絶滅する(extinction)。 ・⽣命は地球上に⼀回だけ発⽣、現存する⽣命は全てその⼦孫 ・全ての⽣命は系統的に繋がっている。 ただし、進化論は進化のみではない。
進化論:⾃然淘汰説とは何か? 19世紀当時の哲学的問題:進化を認めたくても ⽣物が変化する必然性が⾒えない。 適応を説明できない。(適応は神様の知恵?)
進化論:⾃然淘汰説とは何か? 19世紀当時の哲学的問題:進化を認めたくても
ダーウイン・ウオーレスの進化論は3つの要素の融合:①進化 ②適応 ③⾃然淘汰 「⾃然淘汰 Natural Selectionによる環境への適応 Adaptationの結果として⽣物は進化する。」 ⾃然淘汰説は徹底した結果主義:⽣物は⽣息地のその場その時の環境に適応しながら進化する。
進化思想の寄り道:直線的進化 ゴールに向かって進む直線的進化 Linear evolution 19世紀半ばに流行った「単系社会進化論」(Unilinear Evolutionの例) 未開→野蛮→文明 魔術→宗教→科学 小集団→首長→国家 ↓ 部族→国家 ↓ 首長 ↓ 国家 進化は「世の中の秩序」を反映する。 進化は決まった段階を通過する。 進化は決まった⽅向性やゴールがある(Teleology ⽬的論) ゴールに向かって直線的に進む。 「進歩」や「発展」や「向上」の思想と結びついていた。 古い段階がまだそのまま世の中に残っている。 進化の経緯をもって「世の中の秩序」を説明・正当化しようとする。
進化思想の寄り道:直線的進化 ゴールに向かって進む直線的進化 Linear evolution 19世紀半ばに流行った「単系社会進化論」(Unilinear Evolutionの例)
未開→野蛮→文明 魔術→宗教→科学 小集団→首長→国家 ↓ 部族→国家 ↓ 首長 ↓ 国家
現代の進化思想:徹底した系統発⽣主義 現存種はみな同じ時間を進化しているので「より進化した種」はない。 全ての種は独⾃の新しい派⽣形質を獲得して進化してきた。 重要単語 系統 Lineage 系統発⽣ Phylogenesis
現代の進化思想:徹底した系統発⽣主義 現存種はみな同じ時間を進化しているので「より進化した種」はない。 全ての種は独⾃の新しい派⽣形質を獲得して進化してきた。
現代の分類学:分岐学 Cladistics 「枝わかれ」を客観的に⾒なす。「系統」を強調、「枝」に名前をつける。 分岐学的には恐竜はまだ生き残っている。(恐竜の子孫の鳥類が生き残っているため) 関連単語(覚えなくて良い) Clado︓ギリシャ語の「枝」 Cladogram︓枝分かれ図
現代の分類学:分岐学 Cladistics 「枝わかれ」を客観的に⾒なす。「系統」を強調、「枝」に名前をつける。 分岐学的には恐竜はまだ生き残っている。(恐竜の子孫の鳥類が生き残っているため)
進化思想:⽤語の整理 表現単語和訳・解説今は使わない概念や表現Teleology⽬的論、進化の⽬的やゴールPrimitive‒Advanced原始的、遅れている−進んでいるLess evolved‒More evolved進化していない−より進化したLower‒Higher下等−⾼等現在使う表現Ancestral‒Derived祖先−派⽣Plesiomorphic‒Apomorphic祖先形質−派⽣形質要注意(特定の形質のことならば許される。)Simple ‒ Complex単純-複雑(特定の形質ならば許される。)Teleonomy⽣物個体はゴールを持ちうる(例えば繁殖成功)。進化全体にはない。
進化思想:⽤語の整理
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