Top > 近代文学講義(堀井一摩)


#include(日本文学史・日本文学講義項目,notitle)
#contents
|BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c
|BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):''分類''|''国文学科選択必修/国語科教員(国文学科)選択''|
|区分|[[国文学科]]科目|
|履修形態|一般(人数過多の場合は抽選)|
|履修条件|二年生以上|
|単位数|2|
|講師|[[堀井一摩]]|
|学位等|学士(文学)|
*概要 [#Gaiyou]
戦争と植民地を描いた文学を受講生と共に読む。
授業内テスト(60%)、授業参画度(30%)、小課題(10%)
教科書なし。
#br
対面参加が困難な学生については、Canvas LMSのメール機能を用いて、事前に教員に申し出ること。
この科目は文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP1,2及びカリキュラムポリシーCP1,2に対応している。
*講師の印象 [#Inshou]
平和主義者
*令和八年度(2026年度) [#h81d5434]

#style(class=submenuheader){{
**前期 [#i20333f8]
}}
#style(class=submenu){{
|BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c
|BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業|
|日程/教室|火曜日 四限目/3405教室(三号館四階五番教室)|
***第一講目の内容 [#g035d217]
授業の説明と平和について。
***第二講目の内容 [#w5e611c3]
#region(泉鏡花『琵琶伝』「国民之友」一八九六年一月)
''泉鏡花『琵琶伝』「国民之友」一八九六年一月''
>''概要''
お通は父清川通知の遺言によって、許嫁の陸軍尉官江藤重隆に嫁するが、その初夜、夫に向かって妻たる節操を破るとまで言い放つ。
近藤は、お通に意中の人、従兄の相本謙三郎がいることを承知で結婚し、嫉妬の余り、お通を当夜から孤屋に幽閉する。
日清戦争の開戦に際し、予備兵の召集に応じた謙三郎は、お通と自分との恋の仲立ちをした「琵琶」という名の鸚鵡が
叔母の手によって籠から放たれるのを目のあたりにしつつ、脱営をしてでもお通に会えとの叔母の言に従いお通を訪ねるが、
孤屋の番人の殺害と脱営の罪により逮捕され、お通の面前で銃殺刑となる。
里に帰ったお通は「ツウチャン」と呼ぶ鸚鵡の声に誘われて彷徨い出で、いつしか恋人の墓前に至り、夫重隆に出会う。
重隆が謙二郎の墓を足蹴にし唾して辱めるのに堪えず、ついに夫の咽喉を喰い破り、謙三郎の名を呼びつつ果てる。
傍らの枝に下りた琵琶の「ツウチャン」の声が辺りに木霊する。

>''戦時の女性ジェンダー規範と通の脱国民化''
軍国の母・軍人の妻としての性役割(良妻賢母規範)→女性の国民化
※「軍国の婦人」の役割:「銃後の守り」(家政、子女の教育、倹約、廃兵や遺族の救護、恤兵金や軍資金の義捐、傷病兵の看護)
感情抑えること(身内の戦死を悲しまないこと)や国民を産むことも役割
→直操規範の侵犯は出征兵士の士気を阻喪させる最大のリスク要因
軍人の妻(=通)の姦通は、自由恋愛の追求だけでなく「国民」からの離脱を意味する。

>''『琵琶伝』の結末の考察''
二人の魂は「琵琶」(鸚鵡)に宿った?
鳥になることで社会の柵から抜け出した。(「国民」からの離脱)
#endregion
***第三講目の内容 [#l822d790]
#region(『高野聖』)
''『高野聖』''
>''[[泉鏡花『高野聖』>https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/521_20583.html]]''
あらすじ(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』)
#br
若狭へ帰省する旅の車中で「私」は一人の中年の旅僧に出会い、
越前から永平寺を訪ねる途中に敦賀に一泊するという旅僧と同行することとなった。
旅僧の馴染みの宿に同宿した「私」は、夜の床で旅僧から不思議な怪奇譚を聞く。
それはまだ旅僧(宗朝)が若い頃、行脚のため飛騨の山越えをしたときの体験談だった。
#br
若い修行僧の宗朝は、信州・松本へ向う飛騨天生峠で、
先を追い越した富山の薬売りの男が危険な旧道へ進んでいったため、これを追った。
怖ろしい蛇に出くわし、気味悪い山蛭の降ってくる森をなんとか切り抜けた宗朝は、
馬の嘶きのする方角へ向い、妖しい美女の住む孤家へたどり着いた。
その家には女の亭主だという白痴の肥った少年もいた。
宗朝は傷ついて汚れた体を、親切な女に川で洗い流して癒してもらうが、女もいつの間にか全裸になっていた。
猿やこうもりが女にまとわりつきつつ二人が家に戻ると、
留守番をしていた馬引きの親仁(おやじ)が、変らずに戻ってきた宗朝を不思議そうに見た。
その夜、ぐるりと家の周りで鳥獣の鳴き騒ぐ声を宗朝は寝床で聞き、一心不乱に陀羅尼経を呪した。
#br
翌朝、女の家を発ち、宗朝は里へ向いながらも美しい女のことが忘れられず、
僧侶の身を捨て女と共に暮らすことを考え、引き返そうとしていた。
そこへ馬を売った帰りの親仁と出くわし、女の秘密を聞かされる。
親仁が今売ってきた昨日の馬は、女の魔力で馬の姿に変えられた助平な富山の薬売りだった。
女には、肉体関係を持った男たちを、息を吹きかけ獣の姿に変える妖力があるという。
宗朝はそれを聞くと、魂が身に戻り、踵を返しあわてて里へ駆け下りていった。

宗朝はコレラの流行を知っており、川から汲んだ水を避けた。
近代的な衛生観念を持った人物として読み取れる。(富山の薬売りと対比)
#endregion
***第四講目の内容 [#oc2b8aba]
#region(『高野聖』の考察)
''『高野聖』の考察''
>''宗朝の人物像''
-近代化
参謀本部編纂の地図を用い、コレラ対策を行う文明的な人物
-次郎との分身関係
次郎:成人しているのに童形、人と獣の狭間の体付き
→宗朝に嫌悪と同一化への欲望を抱かせる。

>''明治の衛生''
コレラが度々大流行
ウイルスを妖怪化した衛生プロパガンダが展開
衛生的=文化的
-『高野聖』の描写
「&ruby(じせつがら){時節柄};暑さのため、恐しい悪い病が流行って、先に通った辻などという村は、から一面に&ruby(いしばい){石灰};だらけ」

>''「この恐しい山蛭は神代の古からここに屯をしていて」''
→蛭子神の子孫
イザナギとイザナミの間に生まれた最初の神。不具だったため葦船に乗せられ海へ流された。
天皇制国家への復讐か?
男を動物化して兵隊になれないようにする⇨強制的な脱国民化
#endregion
***第五講目の内容 [#ea6e4da0]
#region(『肉弾』)
''『肉弾』''
『肉弾』とは、櫻井忠温が日露戦争後に実体験をもとにして描いた戦記文学作品。
国内で大ベストセラー、十五ヶ国で翻訳出版 →各国で滅私奉公の教科書のように読まれる。

|CENTER:日本軍|CENTER:ロシア軍|h
|大和魂・忠義&br;上下睦まじい軍隊&br;軍紀は固く、秩序守る。|皇帝の徳は届かない。&br;上下の関係は中世の封建的服従&br;役人は民を虐げ、軍は民を脅して前線に送る。|

>''『肉弾』の交差対句法''
江河の決するが如く、山嶽の崩るるが如く
↕
死屍は積んで山を築き、鮮血は流れて河を成し、
#br
生のエネルギーと死のエネルギー

>''桜と鉄''
 発ひては、万朶花咲く我が児等の
 精気、今凝る百錬の鉄。
 大漠の深けて行く夜を警めて
 一声動く呼笛の音。
  
 石川啄木『老将軍』
朶(乃+木)=乃木希典
桜のように美しく散る。→生死の可逆性/不可逆性を隠蔽
#br
凝っては百錬の鉄となる大和魂=肉弾
精神から物質へ
#endregion
***第六講目の内容 [#xeb465f8]
#region(『肉弾』に於ける男の友情)
''『肉弾』に於ける男の友情''
上下親睦の融和(軍人間の友愛)は『軍人勅諭』(1882年)に起因する。

>''[[軍人勅諭>https://worldjpn.net/documents/texts/pw/18820104.O1J.html]]の抜粋''
朕は汝等軍人の大元帥なるそ
されは朕は汝等を股肱と頼み汝等は朕を頭首と仰きてそ其親は特に深かるへき
朕か國家を保護して上天の恵に應し祖宗の恩に報いまゐらする事を得るも得さるも
汝等軍人か其職を盡すと盡さゝるとにゆ由るそかし
我國の稜威振はさることあらは汝等能く朕と其憂を共にせよ
我武維揚りて其栄を耀さは朕汝等と其譽を偕にすへし
汝等皆其職を守り朕と一心になりて力を國家の保護に盡さは
我國の蒼生は永く太平の福を受け我國の威烈は大に世界の光華ともなりぬへし
//天皇親率

-天皇は頭や首、兵士は手や足
⇨天皇と軍人との身体的結合を強調
-「朕と一心になりて」
⇨身も心も一体の国民軍のイメージ
-上官は天皇の代理人
⇨天皇-軍人の関係が上官-部下の関係にトレース(=跡を辿る)
天皇をホモソーシャルの対象に含めた。

#br
「上下親睦」・「男の友情」(ホモソーシャル)は、同性愛(ホモセクシャル)と連続して繋がっている。(同性愛と近接)
愛の為に肉弾へ・共死への欲望
#br
軍人的男らしさ=天皇陛下や男の友情に殉ずること
→靖国神社の論理と合わさって神聖な行為になる。
戦死:天皇の股肱として忠義を果たす。 →究極の一体化
戦死した戦友と同一化することへの欲望 →戦死の美学

>''フロイト「不気味なもの」との考察''
美化を失わせる戦争の残酷さ
肉弾(男らしさの象徴)と肉断(去勢の象徴)
切れた手足⇨去勢コンプレックス
#endregion
***第七講目の内容 [#e47db571]
#region(夏目漱石『趣味の遺伝』)
''夏目漱石『趣味の遺伝』''

>''[[あらすじ(Wikipedia)>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%A3%E5%91%B3%E3%81%AE%E9%81%BA%E4%BC%9D]]''
「陽気の所為で神も気違になる。「人を屠りて餓えたる犬を救え」と雲の裡より叫ぶ声が、
逆しまに日本海を撼かして満洲の果まで響き渡った時、
日人と露人ははっと応えて百里に余る一大屠場を朔北の野に開いた。」
#br
余は新橋の停車場で凱旋する兵士を迎える群集に行き会った。
将軍の風貌や帰還した下士官を迎えて喜び合う「婆さん」の姿に感慨をおぼえる一方で、
余は旅順で戦死した浩さんのことを思い出す。小説では旅順の戦場での攻撃のありさまと戦死の場面が描かれる。
#br
別の日、浩さんの遺髪が埋葬されている寂光院にお参りに出かけ、浩さんの墓に向かって合掌している美しい女性に出会う。
浩さんの母親の家で、彼の日記を読み、生前郵便局で一度出会っただけの女性と惹かれあったことを知る。
その一目惚れの原因を先祖に求めて調べると、河上才三という武士と、美しい娘が相愛になって婚約するが、
御上の意向によって仲を裂かれた話があって、才三の孫が浩さんであり、
寂光院の娘は婚約者の子孫で2人はその祖先によく似ていたことがわかる。
その後、娘は息子を失って悲しみに暮れていた浩さんの母親と時々会うようになり、「丸でお嫁さんの様に」仲がよくなった。

|>|CENTER:対象法|h
|相除|互いの印象を和らげる。|
|相乗|互いの印象を強める。|

|項目|例|h
|惰性的観察点(事象A)|試験の点が悪かった。|
|風語(事象B)|良い点を取ったねと発言|
|情緒の増幅|試験結果への不快感|
事象AとBが反対だと皮肉

>''作中の表現''
犬や四つ足:近代兵器のメタファー
#br
神の乗る雲が黒いのは着弾の煙だから
神の視点と想像の視点はどちらも指揮官の視点
読者は疑似体験する?

この作品で言う「趣味」とは、恋のこと。
先祖の恋愛感情が子孫に遺伝した。
しかし、明らかなエセ理論である。→なぜ、こんな理論を持ち出したのか。
浩さんへの哀悼か?
#br
夏目漱石は遠回しに乃木希典を批判した。
乃木希典は多くの兵隊を戦死させたが、自身の息子も死なせており、
戦死者遺族の代表のような存在であったので、公然と批判できなかったのだ。
#endregion
***第八講目の内容 [#y25537ae]
#region(オリエンタリズム)
''オリエンタリズム''
ここで言うオリエンタリズムとは、
西洋の植民地主義・帝国主義を支える認識の枠組み・知の構造(エドワード・サイードの定義)
→東洋を他者として位置づけ、劣ったものと考える思想

>''『菊と刀』''
アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトの著書
米国の戦時情報局(プロパガンダなどを作る政府機関)の依頼で、在米日本人や映画を観察して執筆した。
当時は戦時中であり、日本に赴いて執筆した訳ではない。

|>|CENTER:ルース・ベネディクトの概念|h
|恥の文化(日本)|罪の文化(キリスト教圏)|h
|世間が基準(他律的)|内面化された神の視線が基準(自律的)|

>''福沢諭吉''
『時事新報』(1894年7月22日)
日清戦争は文明と野蛮の戦いである。
世界の文明進歩の為に止むを得ない。

>''エメ・セゼール''
『帰郷ノート/植民地主義論』
植民地化する者は、相手を獣として扱う訓練を積み、客観的には自ら獣にする。(非人間化)
こうした作用は自分達に返ってくる。(例:ナチスによる虐殺 =欧米人が欧米人を虐殺)

>''西洋による差異化(他者化)''
東洋に対してフォビア(嫌い)とフィリア(好き)の両方を抱く。
例:東洋の女性は淫乱(フォビア)で従順(フィリア)である。
⇨様々な部分でステレオタイプが作られる。
#br
こうした行為を通して、西洋はアイデンティティー(自己)を確立する。

>''フランツ・ファノン''
『黒い皮膚・白い仮面』
フランツ・オマー・ファノン は植民地主義を批判し、
アルジェリア独立運動で指導的役割を果たした思想家・精神科医・革命家。
ポストコロニアル理論の先駆者としても認識されている。
#br
フランスによる教育で「白い仮面」を付けたアルジェリア人は、
切り離せない「黒い皮膚」に劣等感を抱く。
苛まれたアルジェリア人はいずれ精神を患う。
植民地主義の打破でしか解決しない。即ち内面化された意識(自己差別)を脱ぎ捨てなければならない。
#br
そして、白人が持つステレオタイプは自己の内部を投影したものである。
→逆説的に植民者の不安を呼び起こす。

オリエンタリズムは個人を消し去るとエドワード・サイードは言う。
個々のものを東洋とひと括りにする。→個人の抹消

>''植民地的主体''
植民者が文教政策によって宗主国の価値観(イデオロギー)を先住民に教化
植民地的主体(西洋の優位性・東洋の劣位性を内面化)の形成
被植民者は、植民者の文化と先住民の文化とに引き裂かれる。(分裂した意識)
#endregion
***第九講目の内容 [#l98572e5]
#region(桃太郎)
''桃太郎''
桃太郎は帝国主義戦争を正当化する物語になった。

>''巌谷小波『桃太郎』''
日本の児童文学の父こと巌谷小波(大江小波)が1892年に『桃太郎』を出版
美文を意識して書かれた為か、表記や訓読みが難しい。
桃太郎は天皇の名の下に鬼を討つ皇国の子として描かれる。(鳥越信『桃太郎の運命』より)
1892年は日清戦争を間近に控え、戦時ナショナリズムが国中に満ちていた。

>''森桂園『征露再生桃太郎』''
1904年(日露戦争の年)に出版
軍服を着た桃太郎が登場。鬼は勿論ロシアである。
こうした桃太郎は当時多く作られた。

>''新渡戸稲造『桃太郎の昔噺』''
桃太郎は南進論のメタファーであると語る。
鬼ヶ島は南洋諸島のこととし、宝とは植民地から供給される物資とする。
日本人は幼い頃から桃太郎を聞くことで桃太郎の持つ教訓を学ぶ。

>''芥川龍之介『桃太郎』''
雲の上に枝が伸び、根の国まで根が広がり、天地開闢の頃から生える桃の木
八咫烏が子を宿した桃をつついて落とす。
→桃太郎は高天ヶ原から葦原の中つ国へ降臨した。
#br
古事記の枠組みを用いて、植民地戦争をアレゴリカル(寓意的)に批評
桃太郎は農村暮らしに飽き、また宝が欲しいが為に鬼ヶ島征伐へ行く。
#br
桃太郎は犬・猿・雉を黍団子半分をそれぞれに与えて家来にした。
犬=軍人,猿=商人,雉=(国民道徳を説く)知識人
犬・猿・雉は臣民の縮図
#br
鬼ヶ島は南洋の楽園のイメージで語られる。
鬼の視点では、人こそ&ruby(けだもの){獣};であり、桃太郎は侵略者である。
#endregion
***第十講目の内容 [#lf568586]
&color(Red){''休講''};
補講は課題と授業動画の予定。
***第十一講目の内容 [#xfff2d03]
#region(桃太郎と日本神話)
''桃太郎と日本神話''



異文化の人間や異民族を人間以外の鬼神であるがの如く言い伝える場合がある。
彼らの悪行は生活上の必要、あるいは自由に利用できた筈の土地が占領されたが為に行われる。
#br
古事記・日本書紀には、先住民を神や鬼(モノ)として表現している。
そうした物語では、しばしば人を人として扱わない。
#endregion

作成中
***第十二講目の内容 [#ufdb273e]
***第十三講目の内容 [#h760b86b]
***第十四講目の内容 [#g75a9d4b]
***第十五講目の内容 [#x202bf04]
}}
*コメント [#comment]
#pcomment(,reply,20,)


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