<a href="https://nichidaibunrigojokai.swiki.jp/index.php?cmd=related&page=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%81%A8%E8%AA%9E%E5%BD%99%28%E4%BA%95%E4%B8%8A%E5%84%AA%29">日本語の意味と語彙(井上優)</a> の編集
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> 日本語の意味と語彙(井上優)
日本語の意味と語彙(井上優)
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*概要 [#Gaiyou] 「現代日本語学講義2」が改称され、「日本語の意味と語彙」という名前になった。 #br 「ことばの意味」について考える研究領域には「意味論」「語用論」「語彙論」の3つがある。 この講義では、現代日本語を素材として「意味論」「語用論」「語彙論」について概観するとともに、 「ことばの意味」について考える方法について、実際の研究例をもとに解説する。 #br 毎回、授業の内容をふまえて考えたことをまとめる課題を出す。 成績割合は期末レポート(40%)、授業参画度(60%)である。 教科書は使用しない。 欠席が4回(落第まで残り1回)になると警告メールが届く。 #br この科目は新カリキュラム(令和2年度以降入学者)に於いては、 文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP1,2及びカリキュラムポリシーCP1,2に対応している。
''■[[日本語学講義]]'' ■現代日本語学講義1|[[社会言語学(田中ゆかり)]] ■現代日本語学講義2|日本語の意味と語彙(井上優) ■文献日本語学講義|[[日本語学史(鈴木功眞)]] #contents |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):''分類''|''選択必修(国文学科)&br;現代日本語学講義のみ国語科教員(国文学科)必修&br;日本語教育選択''| |区分|[[国文学科]]科目| |履修形態|一般(人数過多の場合は抽選)| |履修条件|第2回授業までにCanvas LMSに自己登録し、第2回授業までに最低1回は出席すること。&br;(やむをえない事情による場合を除き、受講を認めない。)| |単位数|2| |講師|[[井上優]]| |学位等|学士(文学)| *概要 [#Gaiyou] 「現代日本語学講義2」が改称され、「日本語の意味と語彙」という名前になった。 #br 「ことばの意味」について考える研究領域には「意味論」「語用論」「語彙論」の3つがある。 この講義では、現代日本語を素材として「意味論」「語用論」「語彙論」について概観するとともに、 「ことばの意味」について考える方法について、実際の研究例をもとに解説する。 #br 毎回、授業の内容をふまえて考えたことをまとめる課題を出す。 成績割合は期末レポート(40%)、授業参画度(60%)である。 教科書は使用しない。 欠席が4回(落第まで残り1回)になると警告メールが届く。 #br この科目は新カリキュラム(令和2年度以降入学者)に於いては、 文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP1,2及びカリキュラムポリシーCP1,2に対応している。 *講師の印象 [#Inshou] *令和八年度(2026年度) [#h81d5434] 前期のみ開講。 #style(class=submenuheader){{ **前期 [#k8bca74e] }} #style(class=submenu){{ |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業| |日程/教室|金曜日 三限目/422教室(四号館二階二番教室)| >''期末レポートについて'' 「意味論」「語用論」「語彙論」について、授業で学んだこと・考えたことを自分の言葉で書く。(AI不可) それぞれについて1つの節にまとめること。1つの段落が長すぎないようにすること。 -条件(絶対遵守) |~提出期間|7/25(土)0:00 ~ 7/30(木)23:59| |~書式・提出方法|指定のテンプレート(書式変更不可)を使うこと。&br;pdfファイルに変換して提出すること。(3回まで提出可。)&br;ファイル名は「日本語の語彙と意味_学生番号_氏名」とすること。| |~内容|2.5ページ以上3ページ以内(多少の増減は可)&br;学生番号と氏名を必ず明記すること。&br;講義資料を含め、他から引用する際には、必ず引用元を明記すること。| ***第一講目の内容 [#ad2c5598] #region(意味論・語用論) ''意味論・語用論'' コンテクスト(context、文脈)から切り離して考えることができる側面を扱うのが''「意味論(semantics)」'' コンテクストから切り離して考えることができない側面を扱うのが''「語用論(pragmatics)」'' #br 意味は人の頭の中にしかない。どう表すかに着目。 >''意味論の問題:「ほす(干す)」と「かわかす(乾かす)」'' 明鏡国語辞典第3版を参照 -かわかす 日光・日・風などに当てて、ぬれた物や湿った物の水分を取り除く。 「ぬれた服をストーブでかわかす」「涼風に当たって汗をかわかす」 -ほす --①水分を取り除くために、物を日光・風・火などのあたる場所に置く。特に、日に当てて乾かす。 「物干し場に洗濯物をほす」「本を日にほす」「ほした魚」 --②その中にある水などをすっかりなくす。からにする。 「池の水をほす」「杯をほす」「飲みほす」 ⇧②の用法は「池・田」「杯」に限られる。これらは水がないと存在価値がないもの。 「水分を抜く=存在価値をなくす」という意味拡張。 --③意図的に仕事や役割を与えないでおく。「役をほされる」 ⇧③の用法は、「仕事・役割」を「水分=生命活動を支えるもの」にたとえたもの。 >''語用論の問題:「いいです」の解釈(井上 2024)'' 応答表現「いいです」は、 ①許可・承諾(してもいい)を表す場合と、 ②断り・遠慮(しなくてもいい)を表す場合がある。(二義的、ambiguous) #br 「いいです」はよく「あいまい」と言われるが、実際は「いいです」が「許可・承諾」か「断り・遠慮」かは明確。 (ambiguous だが vague ではない。) 表情や身振り以外にも「いいです」の意味を判断する手がかりがある。 >「いいです」の解釈の手がかり +終助詞・イントネーション |~許可・受諾|いいです%%%よ%%%↑| |~断り・遠慮|いいです%%%よ%%%(非上昇)| |~来るはずの聞き手に念押し|来て%%%よ%%%↑| |~話し手は来てほしいと思っているが、聞き手は消極的|来て%%%よ%%%(非上昇)| +「話し手利益」と「聞き手利益」 |例1|A:ちょっと中を見学したいんですが。[お願い]&br;B:いいですよ。[許可・承諾]| |例2|店員:レジ袋はどうされますか?[申し出]&br;客:いいです。[断り・遠慮]| -「お願い=話し手利益」は「してもいいか(可能)できないか(不可能)」という気持ちの発話。 それに対する「いいです」は「してもいいです(許可・承諾)」。 -「申し出=聞き手利益」は「する必要があるか(必要)しなくてもいいか(不必要)」という気持ちの発話。 それに対する「いいです」は「しなくてもいいです(断り・遠慮)」。 -相手の発話が「お願い」か「申し出」かは、多くの場合、文脈から明らかなので、 「いいです」が「許可・承諾」か「断り・遠慮」かも文脈から明らか。 -ただし、「お願い」が相手の利益にもなる場合は「申し出」ともとれるので、その場合は、 「お願い」に対する返答も「申し出」に対する返答も可能。 最近は「いいです」にかわって「大丈夫です」が用いられることが多い。 「いいです」「けっこうです」よりも「大丈夫です」のほうが「私の側では問題ない=お気遣いなく・ご心配なく」という気持ちが明確に感じられるから。 ⇧不適切な日本語とは言えない。 #endregion ***第二講目の内容 [#p394428a] #region(辞書に書いてあること・辞書に書いてないこと) ''辞書に書いてあること・辞書に書いてないこと'' 国語辞典は「知らないことばについて調べる」「ことばの意味や使い方を確認する」ときに引くが、国語辞典はそのためのものか? →知らない言葉について調べる為の辞書(例:専門語辞典)はあるが、国語辞典は寧ろ「誰でも知っている基本的な語」を優先して見出語にする。 →国語辞典には「ことばの意味や使い方」を十分に説明するためのスペースがない。 #br 国語辞典は「日本語にはこういう語がある」ということを示すためのもの。 ことばの意味や使い方は、限られた分量の中で大まかに解説を加えるのみ。(井上 2009) →辞書は「ことばの意味や使い方」について考えるためのよい材料。 (「この説明で日本語学習者が正しく使えるか?」という観点から考えるとよい。) #br >''「様(さま)」と「さん」'' -様 |~デジタル大辞泉|人を表す語(名詞・代名詞)または人名・役職名・団体名などに付いて、尊敬の意を表す。| |~明鏡国語辞典第3版|(人を表す語や団体名などに付いて)尊敬を表す。&br;一般に良くない印象のある呼び方には「様」は付けない。| -さん |~デジタル大辞泉|人を表す語や人名・役職名・団体名などに付いて、尊敬の意を表す。&br;また、動物名などに付いて、親愛の意を表すこともある。| |~明鏡国語辞典第3版|(人を表す語や団体名などに付いて)軽い尊敬や親しみの気持ちを表す。&br;織内で使う「課長―」などは標準的な言い方ではない(役職名は本来敬称)。&br;ただし、部外者の立場からは尊敬語として使う。&br;幼児語では動植物名などに付けて親しみを表す。| →同じような説明。これを読んで単語の区別ができるようにはならない。 #br >''国語辞典に書いてあること'' ①語の(ごく)大まかな意味と考えられること ②意味が近い、あるいは意味的に関連する他の語 ③語の意味特徴が現れる用例 >''国語辞典に書いてないこと'' ①説明しなくても日本語母語話者には何となくわかる具体的なニュアンスや使い方 ②用例を見れば日本語母語話者には何となくわかること ③意味や使い方の分析がされていないこと。 #br 国語辞典は、何よりもまず「日本語にはこういう語がある」ということを示すためのもの。 基本的に日本語母語話者が使うことを前提にしており、「ことばの意味や使い方を詳しく説明する」ためのものでは必ずしもない。 #endregion ***第三講目の内容 [#v4fc8d64] #region(語の意味について) ''語の意味について'' >''「多義」か「同音異義」か'' +芋をにる(煮る)/父ににる(似る) 意味に関連なし +夜があける(明ける)/箱をあける(開ける・空ける)/穴をあける(空ける) 「明ける」は自動詞、「開ける・空ける」は他動詞 (夜をあかす / 箱をあける、穴をあける) +地面をほる(掘る)/穴をほる(掘る)/芋をほる(掘る)/仏像をほる(彫る) 辞書では、「彫る」は別の見出し語になることが多い。 +池に氷がはる(張る)/ロープをはる(張る)/壁にポスターをはる(貼る) >''語の意味の内部構造をどう整理するか'' 用法の整理→用法間の関係→基本義の抽出 #br 明鏡国語辞典第3版の「あける」の記述を整理する。 あくまで分析の一例。他の見方もおそらく可能。 -①内と外を分けるものを動かして、内と外の行き来ができるようにする。 --ヲ格=内と外を分ける、何かの部分としてのもの 「扉をあける」「幕をあける」「口をあけて眠る」「鍵をあける」 --ヲ格=内と外を分けるものを部分として含むもの 「箱をあける」「九時に店をあける」 -②何もない空間をつくる。 --ヲ格=何もない空間そのもの 「壁に穴をあける」「登板の間隔をあける」「行間をあける」「午後は時間をあけておく」「水をあける(=差をつける)」 --ヲ格=何もない空間が存在する場所 「家をあけて遊び回る」「会議室をあけておく」「瓶をあける」「道をあける」「部長の椅子をあけて後任を待つ」「胸元をたっぷりあけたドレス」 --ヲ格=もともと場所を占めていたもの 「一晩で一升あける」「油を別の容器にあける」 |~内と外を分けるものを動かして、内と外の行き来ができるようにする。|ヲ格=内と外を分ける、何かの部分としてのもの| |~|ヲ格=内と外を分けるものを部分として含むもの| |~何もない空間をつくる。|ヲ格=何もない空間そのもの| |~|ヲ格=何もない空間が存在する場所| |~|ヲ格=もともと場所を占めていたもの| 辞書の分類は用法分類の一例(辞書によって違う)。国語辞典では漢字表記も考慮するが、表記を基準に分類しなければならないわけではない。 > ''どのようなレベルの意味か'' 語彙的意味(明示的意味)/文脈的意味(暗示的意味) 対象的意味(概念的意味、百科事典的意味)/感情的意味/文体的意味 > ''例'' 「話がある。」→不安な印象 #br |和語|漢語|外来語|h |宿屋|旅館|ホテル| |回り道|迂回路|バイパス| |取り消し|解約|キャンセル| |思いつき|着想|アイディア| 印象や意味や用法が異なる。 #br |感覚的・個人的|論理的・集団的|h |&ruby(あしあと){足跡}(具体的)|&ruby(ソクセキ){足跡}(抽象的)| |&ruby(ひやざけ){冷酒}(状況依存的・一時的)|&ruby(レイシュ){冷酒}(分類的・客観的)| |&ruby(バチ){罰}(私的・現象的)|&ruby(バツ){罰}(公的・人為的)| |先祖(個人的・近)|祖先(集団的・遠)| |将来(個人的・近・具体的)|未来(集団的・遠・抽象的)| > ''他の語との間の意味関係'' -類義関係 //|BGCOLOR(#f08080):語A&br; |BGCOLOR(#9370db): |BGCOLOR(#1e90ff):語B&br; | //|~|~|~| -矛盾関係 //|BGCOLOR(#f08080):語A&br; |BGCOLOR(#1e90ff):語B&br; | //|~|~| -反対関係 //|BGCOLOR(#f08080):語A&br; |~ |BGCOLOR(#1e90ff):語B&br; | //|~|~|~| -包摂関係 //|>|>|BGCOLOR(#f08080):語A| //|~|BGCOLOR(#1e90ff):語B|~| //|>|>|~| -隣接関係 //|>|>|>|BGCOLOR(gold):意味分野α| //|~|BGCOLOR(#f08080):語A|BGCOLOR(#1e90ff):語B|~| //|~|>|>|~| >> ''語の「意味素性」'' -同義関係(類義関係) 青年[+人間、+若い、+漢語 …] 若者[+人間、+若い、+和語 …] -反意関係(対義関係) 少年[+人間、+男性、+若い] 少女[+人間、+女性、+若い] -包摂関係 少年[+人間、+男性、+若い] 若者[+人間、±男女、+若い] >''音声素性'' [i] [+高、-低、-後] [u] [+高、-低、+後] [e] [-高、-低、-後] [o] [-高、-低、+後] [a] [-高、+低、-後] #endregion ***第四講目の内容 [#o993e92a] #region(類義語の比較) ''類義語の比較'' + |>|>|CENTER:「簡単」と「容易」|h |1|簡単に説明できる。|①複雑でない ②困難でない| |~|容易に説明できる。|困難でない| |2|しくみが簡単だ。|複雑でない| |~|しくみが容易だ。|✕| |3|こんなの、簡単簡単。|| |~|こんなの、容易容易。|?「容易」は基本的に書きことば| + |>|>|CENTER:「注目」と「注視」|h |1|市場の動向%%%に%%%注目する|→何かに視線や関心を向ける| |~|市場の動向%%%を%%%注視する |→注意や関心をもってじっと見る| |2|世間の注目を集める|| |~|世間の注視を集める|×| |3|注目の新人|| |~|注視の新人|×| + |>|>|CENTER:「足す」と「加える」|h |1|足す(他動詞)|足りる(自動詞:不足がない)| |~|加える(他動詞)|加わる(自動詞:追加される)| |2|砂糖を少し足す|=不足分を補う| |~|砂糖を少し加える|≒砂糖を入れる| |3|彼をメンバーに足す|| |~|彼をメンバーに加える|| + |>|>|CENTER:「必ず」と「絶対(に)」|h |1|彼が選んだワインは絶対においしい|おいしくないはずがない| |~|彼が選んだワインは必ずおいしい|おいしくないことがない| |2|絶対に大丈夫。私が保証する。|| |~|必ず大丈夫。私が保証する。|×| // |~必ず|「確実に(100 パーセントの確率で)こうなる」という見通し。| |~絶対(に)|「これ以外は認められない(認める気はない)」という意向。| + |~なにも|「いくらなんでもそこまで考える必要はない(考えすぎだ)」という気持ち。| |~別に|「そのように考える必然性は認められない」という気持ち。| |~特に|「そのように考えてもよいが、そのように考えなければならないならないわけでもない」という気持ち。| --だからといって、{なにも/別に/特に}今日でなくてもいいのに。 --なにも/別に/??特に}カバンをとろうとしているわけではありません。 --なにも/??別に/??特に}よりによってこんな天気の悪い日に洗濯することはない。 + |~〜とみえる|発話時において、ある状況が成立することを、既成の状況から自然発生的に判断すること。| |~〜とみられる|発話時においてある状況が成立すると判断可能であること。| --どうもエイズが日本に入ってきたと{みえる/みられる}。 --犯人はこのドアから中に入ったと{みえて/??みられて}、鍵が壊されている。 --売上税の導入は庶民の生活に大きな影響を与えると{??みえる/みられる}。 #endregion ***第五講目の内容 [#pd7313d8] #region(助詞・助動詞の意味分析) ''助詞・助動詞の意味分析'' |~ヨウダ|この状況は、自分には…というふうに映る。[状況に対する感覚的印象]| |~ラシイ|この状況は…という事柄の存在を示唆している。[状況から受けた示唆]| →「個人的な推量」と「状況にもとづく推定」 |~例1|1万円で足りるかなあ。まあ、何とかなるだろう。|個人的な推量| |~|1万円で足りるかなあ。まあ、何とかなる{らしい/ようだ}。|×| |~例2|(ドアをノックしたが返事がない)おそらく誰もいないだろう。|| |~|(ドアをノックしたが返事がない)どうも誰もいない{らしい/ようだ}。|状況にもとづく推定| |~例3|(生徒が全員集まったのを見て)全員そろいましたね。|| |~|(生徒が全員集まったのを見て)全員そろった{ようです/×らしいです}ね。|「らしい」は物事の背景に隠れたものを推定→示唆・暗示| >''「推定」以外の用法'' +ある人を見て --いかにも大学の先生らしい。[様子:本質が外ににじみ出る] --まるで大学の先生のようだ。[比況:話し手にはそう映る] +病院での検査を終え、帰宅後妻に --大した病気ではないようだ。[検査の過程で感じた個人的印象] --大した病気ではないらしい。[検査結果や医師の話からの示唆] #br >''「てもいい」の意味と用法'' 「てもいい」の基本的意味:当該事態が許容されることを表す。 #br 「てもいい」の用法(二次的意味)は次の3つの素性で整理できる。 +当該事態の制御可能性(コントロールできる事態か否か) +当該事態の実現性(未実現か反事実か) +行為者の人称 ||制御可能性|実現性|行為者|例|h |許可|制御可能|未実現|聞き手|これ、食べてもいいよ。| |意向|制御可能|未実現|聞き手以外|その仕事、私がやってもいいよ。| |許容|制御不可能|未実現|-|私はどう思われてもいい。| |後悔|制御可能|反事実|話し手|もう少し塩を入れてもよかったなあ。| |不満|制御可能|反事実|話し手以外|もう少し手伝ってくれてもいいのに。| |~|制御不可能|反事実|-|もう涼しくなってもいいんだけどなあ。| #br >''終助詞「さ」の意味'' 「さ」の基本的意味:このことについてはこれ以上考える必要はない。 #br -そりゃ、そうさ。 (あらためて考えるまでもなく当然だ。) -がんばれば、きっとそのうち、いいこともあるさ。 (これ以上考えてもしかたがない。くよくよするのはやめよう。) -どうせオレはダメな男さ。 (これ以上考えてもむだだ。この結論にかわりはない。) #br >''格助詞「で」'' (明鏡国語辞典第3版:1091-1092) +動作・作用の行われる場所や場面を表す。において。 +手段・道具・材料を表す。 +原因・根拠を表す。 +動作を行うときの様態を表す。 +範囲を限定する意を表す。基準となる範囲や期限・限度を示す。 +(「では」「でも」の形で)場合や場面など取り立てたり、累加したりする。 +動作や様態の主体を表す。 +(「…でいい」「…で構わない」「…で差し支えない」などの形で、次善や最低条件の意を表す体言を受けて)許可・許容を表す。 >''格助詞「で」の分類の仕方'' |分類|例文|h |~場所|会議で発言する。| |~手段|投票で決める。| |~原因|心臓発作で入院する。| |~様態|親子で出席する。| |~範囲|三日で仕上げる。| |~主体|自分で考えろ。| |~許容|金メダルでなくとも入賞でいい。| #br |分類|例文|h |~領域・段階|会議(の場)で発言する。[領域]| |~|肝心なところでミスを犯す。[段階](心なときにミスを犯す。[時点])| |~|3個で百円だ。[段階]| |~手段・原因|車で行く。[手段]| |~|ドルで支払う。[手段]([状態]?)| |~|心臓発作で入院する。[原因]| |~形態・状態|親子で出席する。[状態]| |~|土足で上がる。[状態]([手段])| #endregion ***第六講目の内容 [#l88f2f4a] #region(意味の対照研究) ''意味の対照研究'' 一見意味が似ているようで、実は違うことがあり、意味を「直訳」で理解すると危険なことがある。 >''[[日本語]]と[[韓国語>韓国語/朝鮮語]]の過去形と非過去形の使い分け'' ||日本語|韓国語|h |~1|昨日田中さん来た?&br;いや、来なかった。|ecey(昨日), tanakha(田中)-ssi(氏) wass-e(来た)?&br;ani(いや), an(否定) wass-e(来た).| |~2|ここのキムチはおいしいですよ。食べてみてください。&br;そうですか。じゃ、ちょっと。(一口食べて、辛そうな表情をする)&br;(そうな表情をしているのを見て)辛いですか?/辛かったですか?|(前提条件の記載は省略)&br;mayweyo(辛いですか)?| |~3|子供が生まれて、病院から実家に電話をかけた。子供の性別を聞かれて)&br;男だよ。/男だったよ。|atul(男の子)-ieyyo(です).| 2と3は、韓国語では過去形が使えない。 |>|~仮説1|主文末の「た」「-ess-」はともに「発話時以前(過去)」を表す。| |~仮説2|~a|日本語では、現在知覚されている状態αが知覚された最初の瞬間、&br;あるいは動作αが開始された最初の瞬間だけを過去の状況として過去形で述べられる。| |~|~b|韓国語では、当該の状況の存在が意識されなくなり、話し手が「場面が移行した」と感じた後に、&br;状況全体が過去の状況として「-ess-」で叙述される。| |状況|日本語|韓国語|h |~名簿で井上の名前を探している。|あった。&br;[発見のタ]|iss-ta(ある).| |~探し物が見つかった。|~|ss-ess-ney(あった).&br;[過去の認識の修正]| >''提案表現の使い分け:訴え型と疑問型'' |日本語|北京語|h |ちょっと休みませんか?&br;[疑問型]|咱们(我々) 休息(休む) 一下(少し) 吧(しよう)。&br;[訴え型]| 日本語母語話者では聞き手領域に踏み込んだ発話は控えられ、 話し手の意見を述べるのみにとどまる演述型や相手の意見を打診する疑問型が好まれると言える。 中国語母語話者は(中略)親しい人あるいは同位の人に対して聞き手領域に踏み込んだ発話を使いやすい。 「咱们一起去看看吧。(一緒に見に行きましょう。)」 「咱们还是换个地方吧。(他のところに変えましょう。)」のような言い方で、一緒に行動を呼びかける。 このような言い方で、相手への協力姿勢を示し、親しさをアピールする。 (王 2013:57) 言語上、押しが強いが、中国人全体の気風として押しが強い訳ではない。 認識の上では[疑問型]と変わらない。 #br 実際は、“…吧”は「…しよう」と「…しようか」の両方にまたがる意味で使える。 |~[[中国語]]|話し手が迷っている場合は疑問文。&br;「さあ」という気持ちの場合(話し手の意向が確定している場合)は“…吧”。| |~[[日本語]]|話し手が迷っている場合だけでなく、聞き手の意向がわからない場合も疑問文「…しようか」を用いる。&br;「…しよう」を用いるのは、確定した筋書きに基づいて聞き手を一方的に誘導する場合。| →「…しよう」は「聞き手領域に踏み込んだ発話」。“…吧”は必ずしもそうではない。 #br |状況|日本語|中国語|h |話し手が迷っている。|どうしようか。もう帰ろうか。|怎么办呢(どうするか)?&br;要不(なんなら) 咱们(我々) 先(一先ず) 回去(帰る)?| |話し手は帰るつもりだが、聞き手はどうかわからない。|さあ、帰ろうか。|咱们(我々) 回去(帰る) 吧(勧誘)。| |聞き手も帰るつもりでいるはずだと思っている。|さあ、帰ろう。|~| |~ |~話し手の意向|~その場の筋書き|日本語|中国語| |~Ⅰ|~不確定|~不確定|しようか|疑問文| |~Ⅱ|~確定|~|~|V吧| |~Ⅲ|~|~確定|しよう|~| 「申し出」の「…しよう/…しようか」と“…吧”についても同じ。 #br |日本語|中国語|h |これはあなたのですか?&br;[疑問文]|这(これ) 是(だ) 你(君) 的(の) 吗(疑問)?&br;[疑問文]| |これはあなたのでしょう?&br;[確認文]|这(これ) 是(だ) 你(君) 的(の) 吧(確認)?&br;[確認文]| |みなさん、お元気ですか?&br;(「お元気でしょう?」とは言えない。)|你们 都 挺 好 的 吧(確認)?| 「話し手は『Pであってほしい/Pであるに違いない』と思っているが、 現実にPであるかどうかはわからない」という場合、日本語は疑問文「Pか」、中国語は確認文“P吧”。 |~ |~話し手の意向|~その場の筋書き(現実世界)|日本語|中国語| |~Ⅰ|~Pかどうか疑っている |~現実にPかどうか不明|Pか|P吗?| |~Ⅱ|~Pと信じる(疑っていない)|~|~|V吧| |~Ⅲ|~|~現実にPと判断される。|Pだろう?|P吧?| #br |状況|日本語|中国語|h |遅れて到着し、「遅れてごめん」という思っている|けっこう待った?&br;(けっこう待ったでしょう?)|等了 好长时间 了 吧?&br;(「等了 好长时间 了 吗?」とは言えず)| |「事故に遭った」というメールが届き、心配している。|ケガとかしてないですよね?&br;(ケガとかしてないですか?)|你 没 受伤 吧?&br;(「你 没 受伤 吗?」とは言えず)| |「ケガをしていない」と言ったのに対して|本当にケガしてないんですか?|你 真 没 受伤 吗?| #endregion ***第七講目の内容 [#fcda3892] #region(言外の意味) ''言外の意味'' 聞き手は、発話された表現の意味をまず解読し、それを基礎にして、コンテクストに照らして、 推論(inference)を駆使することにより、話し手の意図していた意味を仮説として構築するのである。(会話を支える原理) |意味論|語用論|h |コンテクスト(場面・文脈)から切り離して考えることができる意味を扱う。&br;→言語表現そのものがどのような意味を有するか。|コンテクストから切り離して考えることができない意味を扱う。&br;→言語表現が具体的な場面・文脈の中でどのように解釈されるか。| >''例'' -① 甲:ビールでも飲みに行かない? 乙:明日健康診断なんだ。 -② A:Is Jane a good cook? B:She’s English. >''コミュニケーションに関するグライス(Paul Grice)の理論'' 協調の原理(cooperative principle):いま行われている会話の方向や目的に沿う形で会話に参加せよ。 #br 協調の原理のもとで会話において遵守しなければならない「格率」(maxim)がある。 →我々は「格率(当たり前の決まり)」の存在を前提として相手の発話を解釈している。 #br |~量の格率(maxim of quantity)|会話での情報の提供は、過ぎても及ばなくてもいけない。| |~質の格率(maxim of quality)|信じていないこと、証拠のないことを言ってはいけない。&br;(普段言わないことを言うのも含む。例:妻に綺麗だねと伝える。)| |~関連性の格率(maxim of relevance)|関係のないことを言ってはいけない。| |~様式の格率(maxim of manner)|明確に話せ。不明確さ、曖昧さを避け、簡潔に、順序よく。| >''「意味」の問題か「語用」の問題か'' コミュニケーションに関わる現象が「意味」の問題なのか「語用」の問題なのかを吟味することが重要。 +否定疑問文の解釈 お昼近くになってきて、「おなか空かない?」と聞かれた時の回答 |言語|解釈|返答|h |~[[日本語]]|食事のお誘い|そうねえ、空いてきたね。食事にでも行きますか| |~[[中国語]]|自分に対する思いやり|我不饿。(いいえ)[注:直訳は「お腹は空いていない」]| 日本語には〈察し〉の会話がある? #br 否定疑問文の解釈に関する日本語と中国語の違いが 「同じことを言っても、日本語と中国語では受け取り方が違う」という語用論の問題として述べられることがある。 しかし、実際は、日本語と中国語とでは否定疑問文の意味が違うので、受け取り方が異なる、ということ。 #br →日本語でも中国語でも「おなかすいてない? 大丈夫?」と聞かれたら、 相手に心配をかけないように「大丈夫」と答える。 #br 日本語の「おなかすかない?」は「おなかがすくと思うけど、どう?」 という意味の文になりうるが、中国語の“你不饿吗?”はそうならない。 +感謝のことばの使い方 中国語の“谢谢”は、「ありがとう」よりも「どうもありがとう(ございます)」に近い。 “谢谢”と言われたら、“不客气”“不用谢”“哪儿的话”(どういたしまして)と応じる。 家族と「どうもありがとう――いえ、どういたしまして」という会話をするのは、日本語でも他人行儀で水くさい。 #br 日本人が家族の間で軽く「ありがとう」と言うのは、無言だと相手の行為を無視したことになるので、 何かしてもらったら「ありがとう」と言って反応するというだけ。 中国語では、ちょっとした行為に対していちいちことばで反応しなくても、 相手の行為を無視したことにはならない。 +日本人の謝罪 日本人は自分が悪くなくても謝ることがある。(例:ちょっと肩がぶつかっただけで「すみません」) これは実際に謝罪している訳ではない。 何も言わない場合、無視したことになるので発言しただけである。 #endregion ***第八講目の内容 [#i20d15be] #region(間接言語行為) ''間接言語行為'' 何かを言うことは、それにより何かをすることである。→言語行為(speech act) >''Austin の言語行為論(Speech Act Theory)'' -発語行為(locutionary act) 文を発話する行為 -発話内行為(illocutionary act): 発話をする際にその発話に慣習的に結びついた遂行的な機能を果たすという行為 -発話媒介行為(perlocutionary act):発話によって結果を生じさせるという行為 >''Searleの「言語行為の適切性条件 felicity condition」'' -命題内容条件 発話の内容が満たすべき条件 -準備条件 発話の状況に関する条件(話し手の聞き手に対する対人関係、話し手の聞き手に関する信念など) -誠実性条件 話し手の意図に関する条件 -本質条件 特定の発話内行為の遂行に本質的な条件 |>|「依頼」の適切性条件|h |命題内容条件|当該行為は、話し手の利益になる、聞き手による将来の行為である。| |準備条件|聞き手は当該行為を実行できる。| |~|話し手は、聞き手が当該行為を実行できると信じる。| |誠実性条件|話し手は、話し手の利益のために、聞き手に当該行為を実行してほしいと思っている。| |本質条件|話し手の利益のために聞き手に当該行為を実行させる試みと取れる。| >''間接言語行為(indirect speech act)'' 話し手は言語行為の適切性条件を断定ないし質問することによって間接的にその言語行為を遂行することができる。 -聞き手の実行能力に関する予備的条件を断定ないし質問する。 例:すみません、お醤油取れますか?[準備条件の質問] -命題内容条件を断定ないし質問する。 例:すみません、お醤油取ってくれますか?[命題内容条件の質問] -誠実性条件を断定する。 例:お醤油取って欲しいんですが。[誠実性条件の断定] -その行為をするべき理由を断定するか、その行為をしない理由が存在するか否かを質問する。 例:お醤油取ってくれると助かるんだけど。[その行為をするべき理由の断定] 能力の疑問文を依頼などの行為要求に転用することは、通言語的に見られる現象である。 「明日のパーティー、来られる?」や“Can you come to the party tomorrow?”などは、 「可能であれば実現して欲しい」が「不可能であれば実現を求めない」という意味になり、 準備状況あるいは事前条件の確認をしていることになる。 #br [[中国語]]では、薬局に入っていって“有退烧药没有?”(解熱剤あります?)と言うと、 相手は“有”(ある)と答えるだけで一向に椅子から立ち上がろうとしないといった場合が間々ある。 中国人には(日本人が持つ)察する力がないのだろうか。 ⇨そんなことはない。間接言語行為の違いである。 |話し手の気持ち|聞き手への働きかけ|日本語の形式|中国語の形式|h |よろしく!|依頼行為を遂行|…してくれ|直接依頼文| |~|依頼の気持ちを表出|…してくれるか|~| |どう?|意見伺い(要望を暗示)|~|疑問文| #endregion ***第九講目の内容 [#sc7ab6db] #region(ポライトネス) ''ポライトネス'' コミュニケーションにおける「聞き手に対する配慮」の普遍性に関する理論 >''フェイス(face:面子)'' 人は次の2つの欲求を持っている。 |~ポジティブ・フェイス(positive face:PF)|「他者に受け入れられたい、よく思われたい」という欲求。| |~ネガティブ・フェイス(negative face:NF)|「他者にじゃまされたり、立ち入られたくない」という欲求。| >''フェイス侵害行為(Face threatening act:FTA)'' コミュニケーションにおいては「フェイスの侵害」が生ずることがある。 ||ポジティブ・フェイスの侵害|ネガティブ・フェイスの侵害|h |~自分のフェイスへ作用|「謝罪」する(=自分の非を認める)。|「約束」する(=自分が負担を受け入れる)。| |~相手のフェイスへ作用|「批判」する(=相手の非を責める)。|「依頼」する(=相手に負担をかける)。| -例 上司(男):髪切ったね。何かあったの?[→部下の変化に関心を示さないことは、部下のPFの侵害になると思っている。] 部下(女):(これってセクハラだよね…。)[→立ち入った質問をされることは、自分のNFの侵害になると感じている。] >''ポライトネス(politeness:丁寧さ)'' 人はコミュニケーションにおいてフェイスの侵害が生じないように配慮する。 |~ポジティブ・ポライトネス|共感的配慮(親しみ)| |~ネガティブ・ポライトネス|敬避的配慮(遠慮・あらたまり)| 「間接的な言い方」は、フェイス侵害の回避・軽減のために有効な方法である。 >''ポライトネスの両面性と優先順位'' 聞き手に対する行為は、2つの面を併せ持つことがある。 ①(ポジティブ/ネガティブ)フェイスを満たす。 ②(ポジティブ/ネガティブ)フェイスを侵害する。 その場合、何を優先するかが、言語や方言によって異なることがある。 (そのように見えるだけのこともあるので注意が必要。) #br 例えば、相手の意見に同調する場合、 相手のポジティブ・フェイスを満たすことになるが、その一方で、 話が続かない(=相手のポジティブ・フェイスを侵害する)ことになる。 #endregion ***第十講目の内容 [#x9cb97d5] 異文化交流はストレスになる。 言語行動について知ると、多少ストレスが軽減される。 #region(言語行動の対照研究) ''言語行動の対照研究'' コミュニケーションに関する説明は、既存のイメージやネイティブの説明に惑わされずに、「公平な見方」を考えることが重要。 ネイティブの説明は額面通りに取るべきではない。 また、コミュニケーションに関する説明は、あくまでも傾向の話であることに留意すべし。 #br 例えば、中国人の厚意の表し方は、日本人には「一方的なおしつけ」と感じられることが多い。 中国人自身は「相手に対する厚意をアピールする」と言う。 #br 実際は、 ①日本でも中国でも「相手が自分の気持ちを受けとめやすいようにする」。 ②中国人は「与え手と受け手が離れた領域にいる」という感覚。相応の力を加えないと受け手にきちんと届かない。 ③日本人は「与え手と受け手が領域を接している」という感覚。適度に力を抑制しないと受け手が受けとめにくい。 ⇨中国人は遠い相手に届くように強く表現する。 #br 中国人のプレゼントの贈呈は一種の「儀式」なので、儀式らしくプレゼントを材料にして会話をするというだけ。 プレゼントを受け取る側も、プレゼントについて色々言われた方が、嬉しそうに“谢谢”と応じやすい。 |>|CENTER:「シーソー型」コミュニケーションと「天秤型」コミュニケーション|h |>|共通原理:日本語でも中国語でも「場を同じくする相手を無視してはいけない」。|h |~[[中国語]][シーソー型]|自分と相手は領域的に離れており、&br;言葉のやりとりがなければ「関係なし=相手を無視」。やりとりを維持するのが課題。| |~[[日本語]][天秤型]|自分と相手は領域を接しており、互いに相手に気をつかっていれば、&br;言葉のやりとりがなくても「関係あり」。境界の状態保持が課題。| #br >''話を続けたい中国人'' 「中国人ははっきり言う」の多くは、 実際は「相手の発話に見合った発話をして、相手が次に話を続けやすくする(それが礼儀)」というだけ。 (“你快说呀!你不说我怎么能知道呢?”も実際は「貴方が何か言わないとそれに合わせられない」というだけ。) -例① 妻(中国人):娘と息子、どっちがかわいい? 夫(日本人):(「そんなの答えられないよ」と思いながら)どっちもかわいいよ。 妻(中国人):(「う~ん」という様子で)どっちがよりかわいい? 夫(日本人):??? #hr 妻が「娘と息子、どっちがかわいい?」と聞くのは、単に「おしゃべりをしたい」だけ。 「どっちがよりかわいい?」と聞いてくるのは、「どっちもかわいい」では話が終わってしまうから。 -例② 日本人:これ分かる? 中国人:知らない。 #hr 日本人は「さあ」と言って、「知らない」という情報を伝えるよりも気持ちを伝えている。 ※「知らない」という情報は送っているが、気持ちを伝えるのが優先。 >''「会話」と「一言」'' 日本語は「一言」が重要。中国語は「会話」は重要だが、「一言」は重要ではない。 日本語のコミュニケーションでは定型表現(=「一言」の一種)がよく用いられる。 「一言」ですませる定型表現は中国人には形式的で堅苦しい。 >''感謝の気持ちの表し方'' 日本人にとって「先日はありがとうございました」は普通の発話だが、 中国人にはなぜそのように言うのかがわからない。日本人も「感謝の気持ちがあるから」としか言えない。 日本人には、中国人が「先日はありがとうございました」と言わない理由がわからない。 中国人も「よそよそしいから」「人間関係を長期的に考えているから」としか言えない。 #br 実際には、この問題は「ことば」と「態度」のどちらが重要かという問題。 日本語では、感謝の気持ちを表すためには「ありがとう」の一言が最も重要。 相槌をしないと相手の話を聞いていることにならないのと同じように、 「ありがとう」と言わないと相手の厚意を受けとめたことにならない。 #br 日本人が「先日はありがとうございました」と言うのも、 中断していた関係をスムーズに再開するには前回の共通体験に言及するのが最も効率的であり、 その際、相手から恩恵を受けたことに言及するのが最も丁寧だから。 (「先日はありがとうございました――いえいえ」というやりとりだけで、すぐ本題に移れる。) #br 中国語では「恩恵を受けたその場で感謝の気持ちを態度に表す」ことが最も重要。 行為に対して“谢谢”ということばだけで応じるのはつりあいがとれない。 行為には行為で応じないと相手の厚意を受けとめたことにならない。 #br 中国人が「先日はありがとうございました」ということを言わないのも、 恩恵を受けた場以外のところでは「恩恵を受けたその場で感謝の気持ちを態度に表す」ことができないから。 #br 日本語では「ありがとう」の一言が最も重要だが、そのことが、 恩恵を受けたその場で感謝の気持ちを態度に表す中国人には「口で言うだけ」「表面的で実質がない」ように見える。 #endregion ***第十一講目の内容 [#mc00df3b] #region(語彙の対照研究) ''語彙の対照研究'' //「[[日本語]]は外来語だらけ」には理由あり。[[中国語]]と比べればすぐに分かる。 「[[日本語]]は外来語だらけ」の理由=日本語の語彙の特徴 -語種(和語・漢語・外来語)による使分けが明確で、外来語が既存の和語・漢語ではカバーできない意味領域をカバーしている。 -語彙に関して[[中国語]]が持っている柔軟性を日本語は持っていない。 |>|>|CENTER:中国語の外来語受容法|h |>|例|意味|h |意訳|机器猫(機器猫)|ドラえもん| |音訳|哆啦A梦(哆啦A夢)|ドラえもん| //Duōlāēimèng |音と意味の組み合わせ|啤酒|ビール[beer 酒]| //píjiǔ ⇨日本語の名付けは個別的。中国語の名付けは分類的。 #br :中国語にできて日本語にできないこと| + 中国語では、漢字の組み合わせが独立の意味を表す「語」と意識されれば、 「漢字」の意味は意識されない(漢字による造語が柔軟にできる)。 日本語では、そのことは固有名詞や一部の名詞にしかあてはまらない(漢字による造語が柔軟にできない)。 例:熱海≠熱+海 #br + 日本語では、漢字語は(漢字の意味を反映した)一般的な意味を表し、 外来語は限定された意味(専門用語的な意味)を表すという使い分けがある。 中国語では、漢字語が一般的な意味も限定された意味も表し得る。 --例 |~日本語|機械猫(機械の猫)/ドラえもん(キャラクター名)| |~中国語|机器猫(キャラクター名)| + 日本語では、漢字の意味や一般的な意味から離れるためにカタカナ表記をすることも多い。 例:豊田/トヨタ #br + 中国語では「既存の語に新しい意味を付与する」ことが容易だが、日本語では難しい。 例: |~日本語|住所(地図上の住所)/アドレス(インターネット)| |~中国語|地址(地図上の住所、インターネット)| + 中国語では「語の一部を意訳し、一部を音訳する」ことができるが、日本語では難しい。 例:New Zealand→新西兰(Xīnxīlán) #br + 中国語では「あまり使わない外来語の語形の一部を語構成要素として使う」ということができるが、日本語では難しい。 --例 バスを表す単語に公交车と巴士(bāshì)があり、後者はあまり使われない。 巴士(bāshì)の巴を使って、校巴(スクールバス) #br + 日本語の漢字語が中国語に入る場合は、日本語の表記を取り入れて、中国語読みするが、 中国語の単語が日本語に入る場合は、他の外来語と同様、中国語の発音を取り入れる(漢方薬の分野を除く)。 |~日本語の漢字語が中国語に入る場合の例|日本料理を日本菜としない。| |~中国語の単語が日本語に入る場合の例|&ruby(チンジャオロースー){青椒肉絲};| #endregion ***第十二講目の内容 [#a9afc5c5] #region(日本語の語彙の特徴) ''日本語の語彙の特徴'' 語彙:語が集まって構成するまとまり |~社会的語彙|その言語共同体が総体として保有している語彙。| |~心理的語彙(心的語彙)|一個人が習得・所有している語彙。理解語彙と使用語彙がある。| |~物理的語彙|実際の言語活動において運用された語彙。直接観察可能。| #br 要素が少ない音韻(音素‘phonemes’)の場合は、 1個の要素の増減も、ただちに体系の破壊・変更につながるので、容易には行われないが、 語彙の場合は、要素が無数に存在するようなもので、基本的でない特殊な単語の増減はまったく自由であって、 現実にも間断なくそれが行われていると見られるのである。 音韻のような固い体系を、〈閉じた体系〉とか〈閉ざされた体系〉とか呼ぶのに対して、 語彙の一般に見られるゆるい体系を、〈開いた体系〉とか〈開かれた体系〉とか呼ぶ。 >''日本語の語彙の特徴'' -語種(和語・漢語・外来語)による使い分けが明確。(結果的に外来語が多い。) |和語|漢語|外来語|h |宿|旅館|ホテル| |店|商店|ショップ| |回り道|迂回路|バイパス| -名詞については、同じ語種の中でも名詞の使い分けが細かい。 |感覚的・具体的・個人的|論理的・抽象的・集団的|h |礼儀|儀礼| |習慣|慣習| |誕生|生誕| |生死|死生| -表記が語のイメージと深く関わる。 さくら/桜/サクラ -オノマトペ(擬音語・擬態語)が多い。 ただし、日本語だけではない。 -定型表現を含め、動作に伴う「一言」「定型表現」が多い。 いただきます。ごちそうさま。 -感動詞の使用頻度が高く、使い分けも細かい。 ええと、あのう、さあ?、え?、は? 擬音語は外界の音をそのまま写したものだから、万国共通と思いがちだが、 「写す」際にその言語の音韻体系に写像される。これで変わってくる。さらに各国語の文化のフィルターがかかる。 例えば、[[英語]]ではオンドリは cock-a-doodle-doo と鳴くとならったことがある。英語の犬は bow-wow だったか。 [[中国語]]ではオンドリは“喔喔喔喔”wōwōwōwō であり、犬は“汪汪”wāngwāng である。 英語の牛は moo、[[日本語]]では「モー」、中国語では“哞”mōu だ。 #br >''日本語は「語彙量が多い」か'' 日本語は〈単語の数が多い〉とか〈単語をたくさん覚えなければならない言語である〉とか言われることがある。 しかし、これは〈表記法が複雑である〉とか〈待遇表現がむずかしい〉とか言うのと同じ確度で明言できることではないだろう。 外国の言語と日本語とを同じ基準で分析する方法は容易に見つけられるものではない。 取り分け、語の多少について、そのような角度から論じることは難しい。 しかし、外国語教育や日本語教育に携わっている人が、上記のような漠然とした印象をもつことが少なくないのも事実である。 //#br //日本語は、抽象表現に与る語が少ない上に、個別的具体的表現を好む言語で、 //待遇表現・音象微語などに見られるような〈即場面性〉〈即個別性〉〈相対的表現〉の強さが、 //異なり語を多くしていることを考え合わせなければならない。 //以上をまとめると、日本語では語彙面で 90%以上の理解を可能にするためには、 //上位約 10,000語を覚えなければならず、基本語彙という時にも、最低 5,000~7,000語が必要になるということである。 #endregion ***第十三講目の内容 [#n51cdc7e] ***第十四講目の内容 [#h136ea0c] ***第十五講目の内容 [#y0f041d6] }} *コメント [#comment] #pcomment(,reply,20,)