日本大学学生互助会(文理学部) Wiki
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> 特別支援教育概論(田部絢子)
特別支援教育概論(田部絢子)
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''■[[特別支援教育概論]]'' #contents |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):''分類''|''教員''| |区分|[[教職課程科目>教職コース/教職課程]]/一般| |履修条件|二年生以上| |単位数|1| |講師|[[田部絢子]]| |学位等|文理学部(学士(教育学))| *概要 [#q1f88e6e] 本授業は教員免許状取得のための必修科目であり、特別の支援を必要とする幼児児童生徒への教育の基礎的理解に関する科目に位置づく。 「視覚障害、聴覚障害、言語障害、発達障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱」等についての基礎的理解と障害・疾病等の特別ニーズに 応じた特別支援教育のシステム・実践について講義を行う。 &color(Red){本授業は第八回講義で終了する。}; #br 本講義は授業日にCanvas LMSにて講義資料と課題を配布する。(急病等の諸事情によりやむなく対面授業に参加できない場合はこれで学習する。) 成績成績評価は試験に替るレポート100点により行う。 #br この科目は文理学部(学士(教育学))のディプロマポリシーDP6,DP7及びカリキュラムポリシーCP6,CP7に対応している。 *講師の印象 [#ucc03ead] 日大生の授業態度を不満に思っており、勤めていた他大学の学生の授業態度と比べて悪いと評価している。(本人談) 我々はこの印象を打破する授業態度を心掛けなくてはならない。 *令和七年度(2025年度) [#a2becd30] #style(class=submenuheader){{ **前期 }} #style(class=submenu){{ |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業| |日程/教室|火曜日 二限目/3510教室(三号館五階十番教室)&br;火曜日 三限目/3203教室(三号館二階三番教室)&br;火曜日 四限目/3203教室(三号館二階三番教室)| }} #style(class=submenuheader){{ **後期 [#xce47a59] }} #style(class=submenu){{ |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業| |日程/教室|火曜日 二限目/3410教室(三号館四階十番教室)&br;火曜日 三限目/3203教室(三号館二階三番教室)| 今年度の単位取得条件は試験に替るレポート課題(5問・各20点=合計100点)の提出。出さないと落第。 提出期限は11月30日(日曜日)の正午、提出場所はLMSのテキストボックス。救済措置はなし。 所属・学年・学籍番号・氏名をつけ、適切に改行する。 課題への考察を深めるにあたり参照した文献等の出典を必ず末尾につけ、引用箇所がわかるように作成。 レポートの例:&attachref(./特別支援教育概論の最終課題の例_1.pdf,nolink); ***第一講目の内容 [#h066d2fa] >''特別支援教育制度・設置基準'' |項目|内容|h |100||c |制度の背景&br;(2007年施行)|盲・聾・養護学校を一本化し、「特別支援学校」制度を創設。複数の障害種に対応可能な教育を目指す。| |教育の「場」|特別支援学校(幼稚部〜高等部)、通常の学校の特別支援学級、通常の学級での通級による指導、および訪問教育がある。| |通級による指導|通常の学級に在籍しながら、一部の授業を特別な指導(自立活動に相当)で受ける。&br;対象はLD・ADHD、言語障害、自閉症、情緒障害、難聴、弱視、肢体不自由、病弱虚弱など。| |制度上の課題&br;(設置基準)|国の設置基準(校舎の広さや必要な施設)がごく最近(2021年9月24日)まで存在しなかった。&br;結果、児童生徒数の増加による''「過大・過密化」や特別教室の不足''が深刻な問題となっている。| |教員免許状|盲・聾・養護学校ごとの免許状は''特別支援学校教員免許状に一本化''されたが、&br;専門的な教員確保の課題から、基礎免許状を持つ教員への特例的な運用が存在。| ***第二講目の内容 [#f763c979] 前回の続き #youtube(https://www.youtube.com/watch?v=JaK8OincyVk) ***第三講目の内容 [#y3961ccd] 前回の続きと聴覚の困難について >''聴覚過敏'' -◆定義と特徴 音が不快なものとして認識されてしまう状態。 通常の人が気にしない音を不快に感じたり、痛みを伴うほどの強い不快感が生じることもある。聴力は正常なことが多い。 -◆支援の現状と課題 【支援】特定の音への対策、感覚への配慮。 【課題】認知度が低く、誤解されやすい。 >''APD/LiD(聴覚情報処理障害/聞き取り困難)'' -◆定義と特徴 聴力検査では異常がないが、脳での音情報の処理がうまくいかず、言葉として聞き取れない症状(APD)。 また、APDの診断基準に当てはまらないが、聞き取りに困難がある状態(LiD)。 -◆支援の現状と課題 【支援】FMシステムなどの補聴援助システム活用、視覚情報の併用、環境調整、聴覚トレーニング。 【課題】専門的な診断・支援を受けられる施設や専門家が少ない。世間から「サボり」「やる気がない」と誤解されやすい。 ***第四講目の内容 [#tdcb3751] >''聴覚障害教育'' |項目|内容|h |100||c |教育の目標|言葉の発達を支援すること、補聴器や人工内耳を活用すること、社会とのコミュニケーション方法を習得することに重点を置く。| |人工内耳|手術で耳の奥に埋め込む部分と、音を拾う体外装置からなる。幼児段階からの導入が進み、通常の学級に装用児童が増加している。| |教育上の課題|人工内耳装用児が増える一方で、集団環境での音声情報の聞き取りにくさが課題として残る。また、コミュニケーション手段(手話、音声言語、筆談など)の選択と指導が一貫して重要である。| ***第五講目の内容 [#i64a6ff4] >''知的障害教育'' |項目|知的障害|境界知能(ボーダーライン知的機能)|h |100|||c |定義(IQ)|個別知能検査でIQ 70未満。|個別知能検査でIQ 70〜85の範囲。| |その他の定義|社会適応行動に制約があり、継続的な支援を要すること(18歳以前から)。|知的障害ではないが、平均より遅れがある。| |支援の枠組み|特別支援学校・特別支援学級の教育の対象。手厚い個別指導と自立活動が行われる。|特別支援教育の対象外となるため、制度的な支援を受けにくい。| |直面する困難|学習の遅れや社会生活上の困難があり、個別化された教育が必要。|通常学級で学習についていけず、自己肯定感が低下しやすい。周囲から「努力不足」と誤解されやすい。| 関連するものとして、少年院在院者において、「小児期逆境体験」を背景に、境界知能や発達障害と類似した状態を示す者が多いことが指摘されている。 ***第六講目の内容 [#qb62366d] 前回の続きと発達障害などについて >''発達障害教育(自閉スペクトラム症、学習障害など)'' 特徴と支援の基本的な考え方 -◆自閉スペクトラム症 (ASD=Autism Spectrum Disorder) コミュニケーション能力の困難、強いこだわりが特徴。「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を総称する。 知的障害を伴う場合(自閉症)と伴わない場合(高機能自閉症、アスペルガー症候群)がある。 言葉は理解できているのに伝えられない重度障害者へのタブレットによる意思伝達支援など、ICTによるコミュニケーションの代替が有効。 口での意思伝達は出来ないが、タブレットやキーボードでの入力は出来るという子がいる。 -◆学習障害 (LD=Learning Disability) 全般的な知的発達の遅れはないが、「聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する」といった特定の能力の習得や使用に著しい困難を示す。 読み書き困難には、音声化ソフト(TTS)や音声入力ソフト(STT)などのICT活用が効果的。 >''トゥレット症'' -◆定義 児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患。 -◆有病率と経過 推定有病率は学童期の子で1000人あたり3〜8人。 平均的に4〜6歳で発症し、10〜12歳くらいに重症度のピークがきて、その後青年期の間に症状は軽減するといわれている。 -◆症状の具体例 瞬き、首振り(単純運動チック)から、物に触る・蹴る、不謹慎な言葉を唐突に言う(複雑運動チック/音声チック)へと進行する場合がある。 ***第七講目の内容 [#tc9ee997] #region(自閉スペクトラム症(ASD)) ''自閉スペクトラム症(ASD)'' →「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を総称して自閉スペクトラム症(障害)と呼ぶ。 |項目|自閉症|高機能自閉症|アスペルガー症候群|h |BGCOLOR(Silver):コミュニケーション|とても困難|困難|少し困難| |BGCOLOR(Silver):言葉の遅れ|ある|ある|ない| |BGCOLOR(Silver):知的障害|ある|ない|ない| |BGCOLOR(Silver):拘り|ある|ある|ある| >自閉症の特徴 言葉の遅れや知的障害を伴い、人とコミュニケーションをとることが困難であることが大きな特徴である。また、拘りが強いなどの特徴がある。 -高機能自閉症では、知的障害は見られない。 -アスペルガー症候群は、知的障害はなく、人によっては優れた才能を発揮することがある。しかし、コミュニケーションをとることは苦手。 -アスペルガー氏が発見した「アスペルガー症候群」は近年使われなくなっている。 新たな研究で、臨床医がナチスドイツの児童安楽死プログラムに協力していたことが判明し、アスペルガー氏も協力していたと判った為。 (※アスペルガー症候群の名前自体はアスペルガー氏が付けたものではない。) >自閉症研究 -1943年:アメリカの小児科医レオ・カナーが「早期幼児自閉症」を報告したことにはじまる。 -1944年:オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが「自閉性精神病質」を発表。 ⇒精神分裂病(統合失調症)の最早期の発症、心因性の情緒障害と考えられていた。 ■1960年代後半より自閉症は脳機能障害という共通認識が広がる。 -1981年 イギリスの児童精神科医のローナ・ウィングがアスペルガーの業績を再評価したことで、アスペルガー症候群について広く知られるようになった。 >''アスペルガー氏'' アスペルガーは1938年に初めて、明確な心理的差異を持つ子供たちのグループを「自閉症」と特徴づけ、 1944年にこのテーマに関する包括的な研究を発表した。 彼の研究結果は1980年代に国際的に認知され、「アスペルガー症候群」という用語が一般的に使われるようになった。 自閉スペクトラム症は「コミュニケーション(対人関係)の障害」と「興味や行動への強いこだわり」という2つの特徴を併せ持っている。 どちらかだけという子どもが多くいるが、どちらか一つだけでは、自閉スペクトラム症とは診断されない。 >自閉スペクトラム症の診断基準 -コミュニケーション(対人関係)の障害 以下の3つの項目で持続的な障害があるか。 ①会話のやりとりや感情を共有することが難しい ②人と交流する際、身ぶり手ぶりなどの非言語的コミュニケーションがとれない ③年齢に応じた対人関係が築けない -興味や行動への強いこだわり 以下の4項目のうち2項目以上当てはまるか。 ①常に同じ動きや会話を繰り返す ②同一性への強いこだわりがある ③非常に限定的で固執した興味がある ④音や光などの感覚刺激に対して、極度に過敏。あるいは鈍感。 感覚の感じ方に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合がある。→感覚情報統合の困難 感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれ。そのため、感覚の偏りがある人の困難さは、他の人からは理解されにくい。 多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがある。 授業中に席を離れてしまうなど、問題とされる子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性がある。 |感覚過敏(過剰反応性)→ 光や音をはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態|h |感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がることがある。&br;刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることもある。| |感覚の鈍さ(鈍麻・低反応性)→ 刺激に対する反応が低くなること|h |感覚の鈍さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがある。&br;身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともある。刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることもある。| |>|感覚過敏の症例|h |触覚過敏|他の人の接触を嫌う。歯磨き、耳掃除を嫌う。| |聴覚過敏|特定の音を嫌う。自分で調整出来ない音を嫌う。| |重力不安|揺れ、回転、高い所を嫌う。姿勢変換を嫌う。| |視覚過敏|明るい所を嫌う。特定の模様を嫌う。| |嗅覚・味覚の過敏|特定の味を嫌う。偏食。臭いに敏感。など| 自閉スペクトラム症の子どもは、その特性から、親に叱られたり、友達から仲間外れにされることが多く、不安障害などの二次障害を起こしやすくなる。 日常生活での困難を軽くし、二次障害を防ぐためにも、適切なサポートが必要。 発達障害は個性や特性に近いものなので、家族や周囲の人は、治さなくてはいけないと思わないことが大切。 「障害」ではなく「違い」と捉え、その子にあった対応方法を見つけ出すようにすべし。 >''サポートのポイント'' -その子の「いいところ」を見つけて、手放しでほめて自信を持たせること。 「頑張ったね」「上手だね」などのストレートな言葉で、努力したこと自体を褒める。 -「抱きしめる」「ごほうびをあげる」など、言葉以外で褒める。 家族はもちろん、学校や幼稚園、保育所など、子どもの周囲の人たちがチームを組んで、その子の個性や特性に合ったサポートの方法を見つける。 -極度に興奮してしまった場合には言葉や行動で緊張を和らげる。 「落ち着くグッズ(母親のタオル等)を持たせる」「別室に移動させ、落ち着くのを待つ」「以前興奮した場面と似た場面になるのを避ける」等が考えられる。 #endregion #region(ADHD(注意欠如・多動症)) ''ADHD(注意欠如・多動症)'' |>|注意欠如・多動症→ほかの子と比べて落ち着きのなさが極めて目立つ|h |【注意欠如の特徴】|「授業中、注意を持続できない」「忘れ物が多い」「片づけが苦手」など| |【多動・衝動性の特徴】|「授業中、席を離れ歩き回る」「順番を待てない」「しゃべりすぎる」など| 多くのADHD(注意欠如・多動症)の人は、「順序立てて行動する」「喜びや満足を得るために待つ」という、脳の2つの機能に支障があると考えられている。 ADHDの子どもは、忘れ物が多かったり、ルールが守れず、友達とトラブルになるなどの問題が起こってくる。 多くの子は、家や学校でしかられ続けるために、自尊心が低下することが多くなる。 自尊心の低下や失敗体験が積み重なると「うつや不安障害といった二次障害」を合併しやすくなる。 重い二次障害を起こしてしまうと、なかなか元の生活に戻るのが難しいので、早く気づいて対処し、二次障害を防ぐことが大切である。 #endregion ***第八講目の内容 [#i2e87811] #region(言語障害の基礎知識) ''言語障害の基礎知識'' |100||c |BGCOLOR(#FFFFD2):''教育的定義&br;(文部科学省)''|発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりする為、話し言葉によるコミュニケーションが円滑に進まない状況、またはそのため本人が引け目を感じるなど社会生活上不都合な状態を指す。| |BGCOLOR(#FFFFD2):''特徴''|教育的定義は、医学的定義(言語の構造ないし機能が通常から逸脱している状態)よりも広義に捉えられている。| |>|>|言語障害児の特性と教育的支援の留意点|h |心理・行動の特性|目立ちにくい障害|話さなければ分からない障害であり、学級内では「大人しい子ども」と見なされたり、困っている状況が理解されなかったりすることがある。| |~|二次的困難|伝えたいことが伝わらなかったり、話し言葉に違和感を指摘されたりすることが繰り返されると、話す意欲の喪失や自己不全感につながり、健全な成長・発達に不都合が生じることが少なくない。| |>|医療との関係|言語中枢の機能や発語器官の形態・機能との関係で生じる場合もある為、医療との連携を視野に入れる必要がある。| |>|発達的な観点|発音の未熟さや言葉の遅れは、成長に伴って改善されることも少なくない。このため、子どもの発達の状況を見極め、適切な判断と働きかけを行うことが重要。| #endregion #region(肢体不自由) ''肢体不自由'' 肢体不自由のある人々への適切な支援ニーズの把握が重要。 #br 小児科医であり、生後間もなく脳性麻痺となった熊谷晋一郎氏 は、「当事者研究」を研究分野としている。 当事者研究とは障害や病気を持った本人が、仲間の力を借りながら、自らの「困りごと」について研究すること。 専門家の研究では、自閉スペクトラム症の人=パニックを起こす人、コミュニケーションが苦手な人、といった表層的な捉え方をされるが、 一方の当事者研究では、なぜ彼らがパニックを起こすのか、そもそもどのような「ものの見え方」や「音の聞こえ方」をしているのかといった、 障害を持つ人の言動の背景にあるものが具体的に見えてくる。 熊谷氏は一人暮らしの経験から、友人や社会など依存できる先を増やしていくことで生きていけると知り、「自立とは依存先を増やすこと」だと提唱している。 この考えは、障害の有無にかかわらず、全ての人に通じる普遍的なものと捉えられている。(「自立」の再定義) >''熊谷晋一郎'' 生後すぐに出た高熱によって、脳性麻痺となる。手足が不自由なため、中学生の頃から車椅子を利用している。 日常生活を送る上では他者の介助が欠かせない状態である。 熊谷氏が出生した1970年代には、&color(Red){脳性麻痺は早期にリハビリをすれば9割は治ると考えられた};ために、熊谷氏の親は物心つく前から、 膝立ちの仕方、寝返りの打ち方、茶碗の持ち方など、毎日5、6時間にも及ぶ厳しいリハビリをさせた。 できる限り健常者に近づけて「自立」して生活できるようにすることが目ざされた。 #br 1980年代に入って、&color(Red){脳性麻痺は治らないという論文};が出され、障害も身体の中だけでなく外にあるという考えが浸透することとなった(障害の社会モデル)。 障害の重い方が生活しているのを見る様になり、「リハビリをしても治らないけれど、健常者にならなくても社会に出られるんだ」という確信が出てきたという。 #br 親が生きている間に親亡き後をシミュレーションしておきたい、そのために一人暮らしをしようと、強く思うようになり、山口から東京大学に進学する。 実際に一人暮らしを始めて熊谷氏が感じたのは、「社会は案外やさしい場所なんだ」ということであった。 それまで熊谷氏自身が依存できたのは親だけだったために、親を失えば生きていけないのでは、という不安がぬぐえなかったという。 しかし、一人暮らしをしたことで、友達や社会など、依存できる先を増やしていけば、自分は生きていける、自立できるんだということがわかった。 「自立」とは、依存しなくなることだと思われがちであるが、そうではなく、「依存先を増やしていくこと」こそが、「自立」であるという。 このことは、障害の有無にかかわらず、すべての人に通じる普遍的なことだと考えている。 日本では、古く「不具」「かたわ」など外見や動作の特徴から呼ばれ、戦前は法律用語として「不具廃疾」が用いられてきた。 「肢体不自由」という用語は、東京帝国大学整形外科教授であった高木憲次によって提唱された。肢体不自由当事者であった政治家の橋本龍伍氏は高木氏へ、 「他人から批判されるような名称には我慢が出来ない」「自分自身が唯不自由であるだけのことであって、一切他人から批判されるような名称には我慢が出来ない」 と訴えかけた。この用語には、当事者の思いや意見が反映されている。 >''橋本龍伍'' 橋本龍伍は、大日本麦酒の常務を務めた橋本卯太郎の五男で、大蔵官僚・政治家で戦後には文部大臣、厚生大臣等を務めた。 小学校4年生の時に、結核性腰椎カリエスを患い、小学校は卒業することができたが、闘病生活を余儀なくされた。 逗子開成中学に進み、闘病しながらも勉学に励み、検定で開成中学を卒業した。 第一高等学校に進学するべく願書を提出したが、軍事教練ができないという理由で入学願書は受け入れられなかった。 何校かの私学では、身体障害者へ門戸をひらいており、その一つの慶應義塾大学に進学した。 慶應義塾大学進学後、旧制高等学校への進学を目ざすために、文部省への座り込みを行い、当時の文部大臣に対して、 「足が不自由だからということで受験させないのはおかしい。公平にチャンスを与えるべきである」 「からだが不自由という理由だけで自分の人生に立ち向かっていく勇気ある人間に機会を与えないような国家は、国家としての意味がない」と意見した。 #br その後、受験資格の認定制度が改訂され、障害者にも高等学校への受験資格が与えられるようになった。 (橋本龍伍は第一高等学校(現在の東京帝国大学)を卒業後、大蔵省へ入省した。) #br 吉田内閣が発足した後に、1948(昭和23)年に官房副長官に抜擢され、翌年に故郷の岡山より衆議院に当選して、代議士として政界入りを果たす。 1951(昭和26)年に第三次吉田内閣において、厚生大臣に就任し、終戦後の重要問題であった 戦傷病者、戦没者遺家族の援護、社会保障制度の拡充などに解決の糸口を見出すために国民健康保険、国民年金制度の改善に取り組んだ。 文部大臣就任後には戦後の校舎不足解決に奔走しながらも、施設や自宅にいる肢体不自由児への教育機会の拡充のために、 自分が小学校のときに勉強できなかった経験を踏まえて、取り組んでいた。 #br 橋本龍伍が「肢体不自由」という用語を浸透させたかは定かではないが、障害のみによってその個人がすべて規定されるのではなく、 周囲の環境や支援、自分の意思と行動によって「障害」は改善され、生活はより良いものになっていくことが示唆される。 |>|肢体不自由の定義|h |医学的定義|発生原因のいかんを問わず、四肢体幹に永続的な障害があるもの。| |教育的定義|身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態をいう。| >''教育的措置の基準'' -特別支援学校(肢体不自由) 補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度、または常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの。 -特別支援学級(肢体不自由) 補装具によっても基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの。 -通級による指導(肢体不自由) 通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。 幼稚園、小学校などに準じた教育を行うと共に、障害による学習上または生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養う自立活動の指導を行うことが肢体不自由教育の目的である。肢体不自由の他に知的障害など、他の障害を併せ有する幼児児童生徒も在籍していることから、一人一人の障害の状態等を考慮した弾力的な教育課程を編成し、医療との連携を実施する。 |>|肢体不自由の基礎知識|h |BGCOLOR(#FFFFD2):''要因''|%%%先天性のもの%%%と、%%%生後の事故等によるもの%%%があり、原因疾患としては脳性疾患(脳性まひ等)、脊椎・脊髄疾患(二分脊椎等)、筋原性疾患(進行性筋ジストロフィー症等)などがある。| |BGCOLOR(#FFFFD2):''特性''|上肢、下肢または体幹の運動・動作の障害のため、起立、歩行、書字、食事などの日常生活動作や学習上の運動・動作の一部または全部に困難がある。| >''肢体不自由者の教育的課題'' -肢体不自由特別支援学校には,学校が単独で設置されている形態の他,医学的治療が必要な者を対象とした障害児入所支援(医療型障害児入所施設等)と併設又は隣接している形態等がある。寄宿舎を設置している学校や,訪問教育を行っている学校もある。 -肢体不自由児の運動・動作の困難の程度は一人一人異なるので、日常生活や学習上どのような困難があるのか、それは補助的手段の活用によってどの程度軽減されるのか、といった観点から把握する必要がある。運動・動作の困難は、姿勢保持の工夫と運動・動作の補助的手段の活用により軽減されることが少なくない。 -肢体不自由児は言語障害や書字の困難、表出手段の乏しさなどから、コミュニケーション手段が限られがち。当事者の自己決定・主体的参加を目指すうえで、権利としてコミュニケーションを保障することが重要な教育課題になる。ICTやロボット機器の活用が学校教育においても追及されるようになっている。 -肢体不自由の子どもでは、摂食嚥下障害、知的障害、日常的な医療的ケアを伴う重複障害を有する子どももが増加している。重度重複障害や医療的ケアを要する場合、就園・就学に親の付き添いを求められるケースが未だ多く、送迎バスに看護師がいない、学校に看護師が足りないという実態の解決も不可欠である。 >''医療的ケア児・者の現状と支援制度'' -現状 医療の進歩により、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な「医療的ケア児」が増加しており、2020年時点の在宅数は約1万9000人(10年前の1.8倍)と推定されている。 -課題 かつての法律や制度では地域での生活が想定されていなかったため、保育園・学校での受け入れ体制不足や、家族への重い負担(長時間の介助、就園・就学時の付き添い)が問題となっていた。 -法整備 2016年に障害者総合支援法と児童福祉法が改正され医療的ケア児の存在が法律に明記され、さらに2021年6月には「医療的ケア児支援法」が成立し、国や地方公共団体に支援の責務が課された。 肢体不自由児はコミュニケーション手段が限られがちであるため、当事者の自己決定・主体的参加を目指すうえで、権利としてコミュニケーションを保障することが重要な教育課題となる。 >''社会参加を促進する取り組み'' -アパレル支援サービス「キヤスク」 重度の脳性麻痺のある利用者に対して、着脱が困難な服をファスナーや生地の調整で「お直し」することで、 好みの洋服を着て心豊かに日常生活を送れるようにするサービス。 -分身ロボットカフェ「DAWN」 外出困難なパイロットが遠隔操作型ロボット「OriHime」を操作し、自宅にいながら接客の仕事をするプロジェクト。 脊髄性筋萎縮症でほぼ寝たきりの状態にある中島寧音がパイロットとして働き、大学受験に合格した事例が紹介された。 #endregion }} *コメント [#comment] #pcomment(,reply,20,)