<a href="https://nichidaibunrigojokai.swiki.jp/index.php?cmd=related&page=%E6%86%B2%E6%B3%95%28%E4%B8%8A%E5%B2%A1%E6%95%A6%29">憲法(上岡敦)</a> の編集
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> 憲法(上岡敦)
憲法(上岡敦)
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**前期 [#v344b592] }} #style(class=submenu){{ |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業| |日程/教室|月曜日 二限目/3505教室(三号館五階五番教室)&br;月曜日 五限目/3505教室(三号館五階五番教室)&br;火曜日 二限目/3505教室(三号館五階五番教室)|
''■[[憲法]]'' #contents |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):''分類''|''教員必修''| |区分|総合教育科目・[[教職課程>教職コース/教職課程]]科目| |履修形態|完全抽選| |履修条件|抽選に当たる| |単位数|2| |講師|[[上岡敦]]| |学位等|学士| *概要 [#Gaiyou] 講義は受講者が法律学の基本的な知識を理解していることを前提として進める為、法学を履修済みまたは並行履修していることが望ましい。 ...とシラバスにはあるが、丁寧な授業なので大学に入れる程度の知識があれば十分。 社会的状況、受講者の理解度などに合わせて授業計画を変更する場合がある。 教科書は『日本国憲法』(東裕・杉山幸一編 弘文堂 2022年)であるが、なくても何とかなる。 #br 試験100% 記述式または論述式から1題を選択して解答する形式。紙製のものであれば全て持ち込みを認める。 記述式は、いわゆる空欄補充型とし、合否のみを判定。 論述式は、指定された題目に解答する形式として、内容に応じて成績評価を行う。 試験は授業資料等を読むだけでは少し厳しい。資料にはない、講師が授業で述べた内容をしっかり書き留めるのが吉。 毎回リアクションペーパーを配布するが、質問や要望などがあった時だけ提出する。(強制ではない) ''[[教職課程>教職コース/教職課程]]選択者は必修なので注意。'' #br 授業資料の配布等はGoogle Classroomを用いる予定であるため、NU-AppsGのアカウント(@g.nihon-u.ac.jp)が必須となる。 Google ClassroomのクラスコードはCanvasLMSにて配信するため、履修予定者は必ず初回授業時までにCanvasLMSを確認し、Google Classroomに登録をしておくこと。 本科目はCHIPSによる抽選を行うため、履修予定者は必ず手続きを行わなくてはならない。 *講師の印象 [#Inshou] 厳しくはない先生。この先生の授業で落第する人はそんなにはいないと思う。 #br 配布資料に誤字や衍字が多い。(時折) 中には憲法の条項の数を誤るという[[憲法]]の講義としては致命的なものも。 #br 当サイトに掲載された内容は編集者によって授業内容を分かりやすく再構成したものであり、 誤謬の類いは改めていますが、取り零したものもあるかもしれません。注意して読んでください。 誤りを見つけた場合は編集ページから直してください。 *令和七年度(2025年度) [#u45f9cee] 前期と後期にそれぞれに3講座開かれている。 &color(Red){授業中に試験を実施しない。(実施日と実施場所が伝えられるので、それに従うこと。)}; 授業ではスライドの撮影や音声の録音等は禁止されています。 編集者は振り返りの一助になるだけの記述に限って書き込みしてください。 #style(class=submenuheader){{ **前期 [#v344b592] }} #style(class=submenu){{ |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業| |日程/教室|月曜日 二限目/3505教室(三号館五階五番教室)&br;月曜日 五限目/3505教室(三号館五階五番教室)&br;火曜日 二限目/3505教室(三号館五階五番教室)| ***第一講目の内容 [#l874e58e] #region(憲法・法律) ''憲法・法律'' >''立憲主義'' 「権利保障が確保されず、権力分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」(フランス人権宣言:1789) 近代立憲主義とは、公私の領域において個人の自由が尊重され、基本的人権の確立と保障を国民に義務付けるもの。 >憲法の種類 軟性憲法:憲法の改正手続きが通常の法律の改正の場合と同じ手続きで可能な憲法 硬性憲法:憲法改正の手続きが、通常の法律の改正手続きよりも厳しい条件が課されている憲法 欽定憲法:君主主権に基づき君主がもっぱら自己の意思によって制定した憲法 >''近代思想の特徴'' -公私二分論 社会空間を公と私の領域に区分 -自由主義 個人の自由の尊重 -個人主義 個人の考え方や決定を尊重 >''権力分立と法の支配'' -法の支配:あらかじめ定められた法に基づいて統治を行うことにより、人々の自由を確保するという考え。 「正しい内容の法」と「正しい内容の法が忠実に執行されること」が必要。 日本では、法律は国会の議決によって作成される。 法律は民法,商法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法に分けられ、憲法を含めて「六法」と呼ばれる。 #endregion #region(日本の憲法) ''日本の憲法'' 日本国憲法の制定は敗戦を受けて行われた。 |>|>|>|CENTER:''日本国憲法制定関連年表''|h |年|月|日|事項|h |1945|7|26|ポツダム宣言発表| |~|8|14|日本政府、ポツダム宣言受諾| |~|~|15|天皇、ラジオで「終戦の詔勅」放送(玉音放送)| |~|10|4|マッカーサー、近衛国務相に改憲示唆| |~|~|13|日本政府、憲法問題調査会(松本烝治委員長)設置| |~|11|11|〈共産党、「新憲法の骨子」を発表〉| |~|~|27|〈憲法研究会、「新憲法草案要綱」発表〉| |~|~|28|〈高野岩三郎、「改正憲法私案要綱」発表〉| |1946|1|1|天皇の「人間宣言」、神格を否定| |~|~|21|〈自由党、「憲法改正要綱」発表〉| |~|2|1|毎日新聞、政府の憲法改正案(松本案)をスクープ(正確には最終案の前のもの)| |~|~|3|【マッカーサー、GHQ民政局にマッカーサー三原則にもとづく憲法原案作成を指示】| |~|~|8|【政府、憲法改正要綱(松本案)を、GHQに提出】| |~|~|13|【GHQ、松本案を否定し、GHQ案を日本政府に提示】| |~|~|14|〈進歩党、「憲法改正案要綱」決定〉| |~|~|22|【閣議、GHQ案の受け入れを決定】| |~|~|23|【社会党、「新憲法要綱」を発表】| |~|~|26|極東委員会、ワシントンで第1回会合| |~|3|2|政府、GHQ案にもとづく憲法改正草案作成| |~|~|6|【政府、「憲法改正要綱」を発表】| |~|4|10|新選挙法による衆議院総選挙(戦後第1回)| |~|~|17|日本政府、「日本国憲法草案」発表| |~|6|20|第90回帝国議会に憲法改正案提出| |~|8|24|憲法改正案、衆議院本会議で修正可決| |~|10|6|憲法改正案、貴族院本会議で修正可決| |~|~|7|衆議院本会議、貴族院の回付案を可決| |~|11|3|日本国憲法公布| |1947|5|3|日本国憲法施行| |>|>|>|【】内は当時非公開の出来事&br;〈〉内は政党や民間の憲法草案| >ポツダム宣言(一部抜粋,担当者が旧字体等を改めてある。) -10. われらは日本人を民族として奴隷化し、または国民として滅亡させようとする意図は持たないが、 われらの俘虜を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては、厳重な処罰が加えられるであろう。 日本国政府は日本国国民の間における民主主義的傾向の復活、強化に対する一切の障礙を除去すべきである。 言論、宗教および思想の自由ならびに基本的人権の尊重は確立されるべきである。 -12. 前記の諸目的が達成され、かつ日本国国民の自由に表明した意思に従い平和的傾向を持ち、かつ責任ある政府が樹立された場合には、 連合国の占領軍は直ちに日本国から撤収するものとする。 >憲法改正の示唆と日本側の憲法作成の動き 連合国軍総司令部(GHQ)総司令官ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)による憲法改正の示唆 1945年10月25日に松本烝治(商法学者)を委員長とする憲法問題調査会を設置し、憲法改正を検討 (1)天皇が統治権を総攬する原則を変更しない (2)議会の権限を拡張して従来の天皇の権限を制限する (3)国務大臣が議会に対して責任を負う (4)個人の権利と自由の保護を強化する >マッカーサー・ノート -1. 天皇は国家の元首の地位にある。皇位は世襲される。天皇の職務および権能は、憲法に基づき行使され、 憲法に表明された国民の基本的意思に応えるものとする。 -2. 国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに&color(Red){自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する};。 &color(Red){日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる};。 日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。 -3. 日本の封建制度は廃止される。貴族の権利は、皇族を除き、現在生存する者一代以上には及ばない。 華族の地位は、今後どのような国民的または市民的な政治権力を伴うものではない。予算の型は、イギリスの制度に倣うこと。 >''帝国議会での審議'' 1946年4月10日に衆議院議員総選挙(初の女性へ選挙権付与)、吉田茂内閣成立。 4月22日より、枢密院にて審議開始。明治憲法第73条の改正手続に基づいて審議が進められる。 帝国議会では、芦田均を委員長とする帝国憲法改正委員会で審査が行われる。 8月24日、改正案は衆議院本会議で賛成421、反対8で可決。 貴族院で修正が行われ、10月6日に賛成多数で可決、衆議院へ回付され、衆議院本会議で圧倒的多数で可決。 >''八月革命説'' 宮澤俊義(1946)「八月革命と国民主権主義」『世界文化』 主権の変更など、&color(Red){憲法の基本原理は改正できないという論理に対する日本国憲法成立を正当化するための論理}; ポツダム宣言受諾による天皇主権の否定と国民主権の成立を法的な革命と捉える考え → 一応の説明にはなるが、批判も多い #endregion ***第二講目の内容 [#i986023d] #region(天皇) ''天皇'' |BGCOLOR(#D6DFFF):|BGCOLOR(#D6DFFF):明治憲法|BGCOLOR(#D6DFFF):日本国憲法| |BGCOLOR(#D6DFFF):天皇の地位の根拠|神勅|国民の総意| |BGCOLOR(#D6DFFF):天皇の地位|現人神(絶対不可侵)+象徴|象徴| |BGCOLOR(#D6DFFF):主権者|天皇|国民| |BGCOLOR(#D6DFFF):天皇の権限|統治権の総攬者|形式的・儀礼的権限| |BGCOLOR(#D6DFFF):皇室|自律主義|議会による統制| >''天皇'' 明治憲法、日本国憲法ともに第 1 章が天皇について規定 -''明治憲法'' 天皇の地位は現人神→神の命令が天皇の地位の根拠 国家神道の考え方に基づく権威性を背景とする。→天皇の尊厳を侵す行為は不敬罪として厳しく処罰「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」(3条) 皇室について定める皇室典範は皇室会議と枢密顧問の諮詢を経て勅定するという手続きによってのみ改正可能→皇室の自律主義(74条) -''日本国憲法'' 天皇の地位は象徴「主権の存する日本国民の総意に基く」(1条) 皇室典範は国会の議決の対象 >''象徴天皇制の成立と背景'' マッカーサー・ノートの第1原則により「憲法に表明された国民の基本的意思に応えるもの」とされる →GHQ 案で、「日本国および日本国民統合の象徴」となる #br 象徴とは、日本という国、日本国民の統合体という目に見えない概念を天皇という具体的な存在を通じて想起されることを意味する。 明治憲法下でも天皇は象徴という地位→%%%憲法に明示することで象徴として以外の権限を行使することが不可能に%%% 天皇・皇族も人間ではあるが、天皇の地位が象徴であったり、世襲制が採用されていることなどを理由として人権に一定の制限が課されている。 >''天皇陛下の国事行為の性質'' 国事行為には内閣の助言と承認が必要なため、国事行為は実質的には形式的・儀礼的行為と理解される。 私人としての私的行為には内閣の助言と承認は不必要(国事行為以外の行為→研究、テニス、芸術鑑賞など) 私的行為と国事行為のどちらにも該当しない行為には内閣の助言と承認に関しては議論あり(退位表明、国会開会式に参列して行われるお言葉、全国巡行) 私的行為ではない行為については、象徴としての地位に基づく公的行為として考えられる。 →事実として、お言葉は内閣によって原案が作成され、事前に閣議決定が行われている。 >''皇族の範囲'' 「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」(2条)→世襲制 皇族男子が婚姻を行う場合には皇室会議の議を経なければならない。 |>|皇族|h |皇后|天皇陛下の正妻。摂政・国事行為臨時代行・皇室会議議員の就任権が認められている。| |上皇后|上皇陛下の正妻。太皇太后は以前皇后だったものに対して用いる。| |皇太后|先帝の皇后または天皇の母(生みの母である必要はない。)の称号| |親王|歴代の天皇の直系卑属の男系男子の内、嫡出かつニ親等以内の者| |親王妃|親王の妃。敬称は「妃殿下」である(皇室典範第23条第2項)。| |内親王|歴代の天皇の直系卑属の男系女子の内、嫡出かつ二親等以内の者。| |王|歴代の天皇の直系卑属の男系男子の内、三親等以上離れた者。| |王妃|王の妃。敬称は「殿下」。| |女王|歴代の天皇の直系卑属の男系女子の内、三親等以上離れた者。| 「天皇が成年に達しないとき」、「精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないとき」→摂政設置 長期の病気などのように摂政を置くまでには至らないなどの場合→摂政となる順位にあたる皇族に、国事行為の臨時代行を委任。 #br 皇位継承の資格を有しているのは「皇統に属する男系の男子」のみ(皇室典範第1条)→現状、男系女子、女系男子、女系女子は天皇になることはできない。 皇位継承の順位は長系、および長子が優先(皇室典範第2条) >皇位の継承の原則 世襲主義:天皇家の子孫のみが継承できる(皇室典範第1条) 男系主義:男系男子のみが継承できる(皇室典範第1条) 長系主義:長子の血筋が優先される(皇室典範第2、3条) 崩因主義:天皇が崩御した場合のみ、皇位継承が行われる(皇室典範第4条) 直系主義:嫡出子のみが継承できる(皇室典範第6条) 実系主義:養子を認めない(皇室典範第9条) >''皇室経済'' 日本国憲法下では皇室財産の国有と皇室費用の国会議決を原則 生活必需品等を除いた私的財産を国有化し、必要な経費を国費から支出 皇室に財産を譲り渡したり、皇室から財産を賜与する場合は国会の議決に基づかなければならない →皇室が私有財産を増やしたり、特定の者との結びつきを防ぐ為 |内廷費|天皇や上皇、内廷皇族の日常生活に充てるもので、宮内庁の経理に属さない。| |宮廷費|内廷費以外の宮廷諸費に充てるもので、公金として宮内庁が管理する。(園遊会、宮中晩餐会、宮殿の補修など)| |皇族費|皇族の品位保持等に充てるもので、内廷費と同様に御手元金として扱う。| >天皇制に関わる諸問題 -''国旗・国歌に関する問題'' 1989年以降の学習指導要領 「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国家を斉唱するよう指導するものとする」 →国旗掲揚と国歌斉唱の実施徹底を指導する当時の文部省と対立、「国旗及び国歌に関する法律」(国旗国歌法)が1999年に制定 教育委員会の教育長から教職員に対して、国旗に向かって起立し、国歌斉唱をピアノなどの伴奏などにより行うこと、 そしてその職務命令に従わなかった場合は、服務の責任を問うなどの通達 →日の丸、君が代を否定する思想を持つ生徒や教師の思想・良心の自由を侵害するか? ※生徒に国旗掲揚や国歌斉唱を強制することは、思想・良心の自由の侵害となる。 |法的な論点|h |①公立学校の教職員に対する校長の職務命令が、教職員に対して思想を外部に表明することを強制し、その思想・良心の自由を侵害するかどうか| |②その命令違反に対しての懲戒処分がどの程度まで許されるか| ピアノ伴奏拒否訴訟(最判平成19.2.27 民集61巻1号291頁)や不起立訴訟(最判平成 23.5.30 民集 65-4-1780)...等 →最高裁は職務命令が思想・良心の自由を侵害しないと判断 ピアノ伴奏や君が代斉唱の際に起立することは、帝国主義や戦前の天皇制絶対主義のシンボルであるとする歴史観や世界観とは結びつかない。 特定の思想を持っていることを外部に表明する行為ではないことから、教職員の思想・良心の自由は直ちに制約されない。 -''天皇の生前退位の問題'' 2016年8月8日、(当時の)天皇陛下がビデオメッセージで退位のご意向を報告→天皇による退位の意向により生前退位が可能になると、憲法4条に違反する可能性 ⇒天皇の生前退位を認めるかどうかが議論に 2017年6月9日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が全会一致で成立 -''女帝に関する問題'' 皇室典範によって皇位継承を「男系の男子」に限定→象徴天皇制の維持が困難な時代に ⇒女性天皇や女系天皇の皇位継承が検討対象に 明治以前は非嫡系による皇位継承が広く認められていたが、現在は嫡出子のみが皇位継承資格を有する(皇室典範9条)。 安定的な皇位継承を確保するために、女性宮家の創設や旧皇族の皇籍復帰など様々な考えがあるが、天皇制のあり方そのものを考える必要がある。 →あり方によっては憲法改正も必要なため、喫緊の課題ではあるが慎重な検討が必要 #endregion ***第三講目の内容 [#lcd39192] |''正戦観''|近代|自己防衛、悪い行いに対する処罰等、正当な理由がある場合に戦争ができる| |''無差別戦争観''|十九世紀|戦争は国家の権利であり、戦時国際法の許容する範囲で武力行使が可能| |''集団的自衛権''|二十世紀|第1次大戦後、国際連盟規約、パリ不戦条約で侵略戦争が違法化&br;第2次大戦後、国際連合憲章で武力行使が原則禁止され、国連の集団安全保障に基づく場合か、集団的自衛権の行使に制限| #region(憲法九条) ''憲法九条'' >''九条の成立過程'' GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)最高司令官マッカーサーが憲法草案に盛り込むべき必須要件として提示した。 マッカーサー・ノートの第2項に、戦争の放棄、軍隊の保持の禁止、交戦権の否認が示される その後、新憲法草案の審議過程で芦田均によって、第2項に「前項の目的を達成するために」という文言が追加 >''日米安全保障体制と自衛隊'' -''朝鮮戦争の勃発と警察予備隊の成立'' 1950 年朝鮮戦争の勃発、日本に駐留していたアメリカ軍の出動により、マッカーサーは、治安維持を目的に日本の警察力の増強を要求 →警察予備隊令を公布して約7万5000人の警察予備隊を設立 1952年サンフランシスコ平和条約が発効→日本の独立回復 同時に締結された日米安全保障条約により米軍の駐留と基地使用が認められる。 -''自衛隊の設置'' サンフランシスコ平和条約が発効による警察予備令の失効を受けて1952年に保安庁法を制定 →警察予備隊を改組・増強し、約11万人の保安隊と約7600人の警備隊を設置 侵略・自衛目的のいずれの戦力の保持も禁止し、近代戦争遂行に役立つ程度の装備や編成を伴うものを「戦力」であるとする見解を提示 →日本に駐留するアメリカ軍は日本が保持するものではないため、憲法に違反しない。 1954年に日米相互防衛援助協定(Mutual Security Act:MSA協定)を締結 自衛隊法を制定して、自衛隊を設立 >自衛隊を巡る裁判 -砂川事件 在日米軍が憲法 9 条で禁止されている戦力にあたるかが争われた事件 一審では違憲判決がでたが、最高裁は外国の軍隊は戦力にはあたらず日米安保条約は違憲ではないと判断 -百里基地事件 航空自衛隊の基地建設用地を所有していた者の土地を国に売却した行為が憲法9条に違反するとして訴えられた民事事件 土地の持ち主と国は民事上の契約によって土地を売買した行為であり、憲法9条は適用されないとして、訴えは退けられた。 -恵庭事件 酪農家の兄弟が陸上自衛隊演習場の電話線を切断し、自衛隊法違反で起訴された事件 兄弟は自衛隊法は憲法に違反するため無効と主張したが、裁判所はそもそも自衛隊法に違反していないので、違憲判断はせずに無罪とした。 #br -自衛隊の海外派遣をめぐる裁判 1991年に起きた湾岸戦争以後、日本政府は「国際貢献」を理由として、自衛隊を海外に派遣するようになった。 自衛隊の海外派遣に関して裁判所は訴えの利益がないとして、ほとんどの訴訟を受け付けず、判断をしないことが多い。 >''日本国憲法第9条の解釈を巡る法理論'' -戦争の意味 |国権の発動たる戦争|宣戦布告等の意思表示が行われる武力衝突で戦時国際法が適用されるもの| |武力による威嚇|武力行使を行う態度を示して自国の要求を相手国に強要すること| |武力の行使|意思表示なく始まる武力衝突で、戦時国際法の適用がないもの| -交戦権とは --①敵国の軍事施設の破壊、中立国の船舶の立入検査等、戦争をしている国が国際法上有する権利 --②戦争そのものをする権利 --③どちらも含む -戦力の不保持 戦力とは何か? 戦争に使えるものを戦力と考えると、航空機、船舶など日常生活に欠かせないものまで使用できなくなってしまうことになる。 戦争時に軍隊になりうる実力部隊を戦力と考えると、日本は警察も持てない。 &color(Red){裁判所の判断では外国と戦うことを目的として、その目的のための人的組織と装備を備えたものを戦力と考える。}; >''&color(Red){1項と2項の矛盾};'' 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、 武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」 →1項は戦争の全面放棄ではなく、侵略戦争のみを否定している。 「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」 →2項は自衛戦争を含む全ての戦争を否定している。 ⇒1項と2項で正反対の論理が書かれているため、9条の解釈には多様なものがある。 |1項全面放棄説|1項で全ての戦争(含む自衛戦争)が放棄されている。| |2項全面放棄説|1項と 2 項を合わせて戦争が放棄されている。| 1項は侵略戦争のみを放棄していると解釈するが、2項をいかなる戦力も持ってはいけないし、交戦権も認められていないと解釈するので、 結局、どのような戦争(含む自衛戦争)も認められない。 |自衛戦争容認説|「国際紛争」を解決する手段としての戦争を「侵略戦争」と解釈。第2項の「前項の目的」を「侵略戦争のために」と解釈&br;→自衛のための戦争であれば、憲法に違反しない。| >''9条をめぐる政府見解'' 第1項が放棄している戦争は侵略戦争を意味→自衛戦争や制裁戦争は含まれない。 第2項「自衛のための必要最小限度の実力」を保持することは禁止されていない。 自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」を備えた「実力組織」である。 →「戦力」には該当しない(戦力>自衛力=自衛のための最小限度の実力) #br -「武力の行使」が憲法上許容されるべきであると判断する基準(新三要件) --わが国に対する武力攻撃が発生したこと、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、 これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。 --これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。 --必要最小限度の実力を行使すること。 -旧三要件 --我が国に対する急迫不正の侵害があること --この場合にこれを排除するためにほかの適当な手段がないこと --必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと |集団的自衛権|他国が武力攻撃を受けた場合に、その国と密接な関係にある国が攻撃を受けた国と集団的に防衛を行う権利| |集団安全保障|対立する国々を含めて武力行使を禁止し、違反国に対して集団的に共同して対抗する制度| >''安全保障関連法問題'' 今までの政府解釈:日本が攻撃されていなくとも海外で外国と戦う集団的自衛権は認められない。→2014年7月1日、安倍内閣はこれを認める解釈を閣議決定 2015年4月、日米の軍事的な任務と役割分担を決めた日米ガイドラインを再改定し、事実上、地球のあらゆる所で日米共同の武力行使、集団的自衛権の行使が可能に 2015年9月安全保障関連法が成立→6月、衆議院憲法審査会で3人の憲法学者が安保法制は憲法違反と発言し話題に #endregion ***第四講目の内容 [#c0ef8835] #region(人権) ''人権'' >''人権の語源'' 人権(human rights)は自然権(natural rights)と同じ意味→人権は自然権の延長線上にある。 「human rights」という言葉はトマス・ペインによって『人間の権利』(1791 年)で初めて使われた。 20世紀に入ってから広く用いられたが、普及したのは第二次大戦後。 >''人権の種類'' -''自由権(消極的権利)'' 国家の不作為を要求する権利 →国家が個人の領域に介入することを排除する権利(国家からの自由) 例:精神的自由、経済的自由、人身の自由 -''社会権、国務請求権(積極的権利)'' 国家に対して一定の積極的な作為、施策を要求する権利(国家による自由) →国家に一定の積極的作為を要求するが人権確保を目的とする。 例:生存権、教育を受ける権利、勤労の権利 -''参政権(能動的権利)'' 国民が能動的に国政(国家意思の形成)に参加する権利(国家への自由) 例:選挙権 >''理念(自然権)としての人権と憲法上の人権'' 理念(自然権)としての人権の性質 |固有性|不可侵性|普遍性|h |誰もが生まれ持っているもの|誰にも侵すことができないもの|人間であれば誰もが持っているもの| 自然権としての人権を法的に保障しなければ、人権が実際に守られることはない。→法の中でも最高法規性をもつ憲法で保障 #br 自然権を憲法で規定することで「憲法上の人権」となる。 立憲主義の憲法:国家権力を抑制する、国家の基本法→「憲法上の人権」は国家の存在がなければならず、国家権力に対して行使される。 国家:領土とそこに住む人々から構成される→憲法上の権利は国民の権利 >''憲法上の権利は誰の権利なのか'' 『国民』の権利か?→人権は人間の権利であり、人間であれば誰もが持っているもののはず 日本国憲法第3章 国民の権利と義務→「日本国民たる要件は法律でこれを定める」(10条) 国籍の取得には出生、準生、帰化があり、出生の取得の際は血統主義を採用 ※準生:非嫡出子(婚姻関係にない両親から生まれた子)が嫡出子(婚姻関係にある両親の子)の身分を取得すること 国籍法 第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。 一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。 二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。 三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。 →日本では国民でなければ人権は保障されないのか。 ・外国人の人権享有主体性 外国人:定住外国人、一般外国人、難民(定住以外の外国人) 2024年6月末時点で在留者数331万1292人と特別永住者数27万7664人合わせて358万8956人存在 「理念としての人権」を前提に「憲法上の権利としての人権」をどこまで認めるのか。 「権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものをのぞき、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(マクリーン事件での最高裁の見解) >判例上外国人に保障されない権利 -政治活動の自由(マクリーン事件) -出入国の自由(森川キャサリン事件) -選挙権(マクリーン事件) -公務員就任権(管理職選考事件) -生存権(塩見訴訟) >法人、その他の団体と人権 理念としての人権は本来は個人の権利 →現代社会では団体の活動の重要性が増加し、団体があるからこそ諸個人が活発に活動できるという。 ⇒法人、団体の人権の主体性をめぐる議論 -八幡製鉄政治献金事件 八幡製鉄所の代表取締役2名が昭和35年3月14日、同社の名において自民党へ350万円の政治献金をした。 これに対し一部の株主が、政党に献金をするのは会社の業務ではないため、損害賠償を求めた事件。 〈最高裁判所の判決要旨(昭和 45 年 6 月 24 日最高裁判決)〉 法人は社会的実在であるから、権利の性質上可能な限り憲法上の権利が内国の法人にも適用される。 →会社が政党に政治献金をすることは、国の特定の政策を支持したり反対したりする政治的行為の自由の1つ >法人(団体)に保障される権利の種類 法人には、権利の性質上法人にも保障される権利が保障される。→自然人のみを対象とした権利は保障されない。(人身の自由、選挙権、生存権...等) 法人の権利行使が、法人の構成員個人の権利と衝突する場合も -南九州税理士会事件 1978年、南九州税理士会は、定期総会において、税理士にとって有利な税理士法改正を働きかけるための運動資金を集める目的で、 5000円の特別会費を徴収して、各県税理士政治連盟に収める決議を行った。 これに対し、会員である税理士から政治献金は税理士会の目的外の行為であることや会員の協力義務の限界を超えるものであることから、 当該決議が無効であると主張して訴えた事件。 →「税理士会が政党に政治資金を寄付する行為」は税理士法で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であるため、 「寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であると解すべき」(平成8年3月19日最高裁判決) >立憲主義と私的自治 近代国家においては国家のみが公共的決定を行い、国民に強制できるため、憲法上の権利は対国家性をもつ。 社会は自由で平等な個人によって構成されるため、互いに自由な合意に基いて社会関係を築く。 →国家権力の介在なしに個人が自由に活動できる(私的自治の原則) ⇒私的自治の原則があるため憲法上の権利は私人には主張できない? |>|私人間効力論|h |無効力説|憲法は基本的に私人間・社会に対して効力を持たない→あくまでも法律で解決するべき問題| |直接適用説|社会的権力に対抗する場合は、憲法の人権規定は私人間に直接適用できる。| |間接適用説|私人間の関係を規定するのはあくまでも私法であり、憲法ではないが、&br;私法の中の一般条項(民法 90 条、709 条)の解釈を通じて、私法の中に憲法的価値をもたらすことが可能| 間接適用説は立悲主義・私的自治の原則を維持しつつ、同時に社会的権力の問題に対処することが可能だが 憲法的価値がどの程度導入されるのかが明らかではないため、個々の裁判での判断に委ねられてしまう。 →表現の自由と理念としての人権が守ろうとしている人間の尊厳が問題となる場合、特に憲法的価値を重視して対立を調整すべきという主張もある。 「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」(民法90条) 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(民法709条) #br また、憲法上の権利は公権力以外に対しても使うことができるのだろうか。 公共の福祉(第13条) 「すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」 人権同士の矛盾・衝突を調整する実質的公平の原理 →人権に最高の価値を求める以上、それを制約できるのは他の人の人権だけという考え方 |内在的制約(自由国家的公共の福祉)|外在的制約(社会国家的公共の福祉)|h |人権にもともと備わっている制約|政策など、人権にもともと備わっていない理由による制約| >子どもの人権 飲酒、喫煙→大人はどれだけお酒を飲んでも、いくらたばこを吸っても法律で禁止されないし、罰を与えられない。 子どもは自分で楽しむ自由を認められていない。 子どもを大人の側で利益を守るべき保護の対象として扱うのか、自分のことは自分で決める自律した一人の人間として扱うのか -パターナリズム 国家が後見的に自由を制約する原理 子どもは未熟ゆえ保護しなければならないという考え方 ⇔ 子どもを一人前に扱っていないのではないか >''学校と子どもの権利'' 髪を染める行為の禁止、制服着用の義務など・・・ 憲法上、個人の自由が尊重されるはずなのに、問題ないのだろうか。 校長に校則制定に関する広範な権限を認め、教育目的のために子どもの権利の制約を認めている。 #br 学校や教師の誤った行動や、環境が適切に整備されていないことによる権利の侵害がある。 |行動による侵害|環境による侵害|h |体罰、セクハラ、パワハラ|外国籍の子どもへの対応、性的少数者への対応| -成績評価と懲戒 教師は授業を通じて子どもの授業内容に関する理解度や到達度についての成績評価を行う。 日常生活の態度について通知表により本人や保護者と共有する。 恣意的な評価や無制限の権利の行使は子どもの人権を侵害する。 学校教育法11条 「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、 児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」 参考:[[文部科学省Webページ>https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm)]] #endregion #region(外国人の人権に関する判例) ''外国人の人権に関する判例'' >マクリーン事件 日本で英語教師をしていたアメリカ人女性マクリーンが、 一年間の在留期間中にベトナム戦争反対運動をなどの政治活動をしたとして、在留期間の更新を拒否された事件 #hr 〈最高裁判所の判決要旨(昭和 53 年 10 月 4 日最高裁判決)〉 1)憲法上、外国人は日本への入国する自由は保障されておらず、在留の権利、引き続き在留することを要求する権利は保障されていない。 2)在留期間の更新を判断するのは法務大臣の裁量であり、政治活動を消極的理由とすることに問題はない。 3)憲法第 3 章の規定の保障は、日本国民のみを対象とするものを除いて、日本に在留する外国人にも等しく効果がおよぶ。 #br 政治活動は、日本の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、 外国人の地位を考えて、それを認める事ができないと思われるものを除いて保障されていると考えられる。 >森川キャサリン事件 1973年に来日し、日本人と結婚した定住外国人森川キャサリンが、韓国への旅行計画をたて再入国許可を申請した所、 過去に3度再入国許可を得ていたにもかかわらず、指紋押捺を拒否したことを理由に不許可とされたので、不許可処分の取消を求めて裁判を起こした事件。 #hr 〈最高裁判所の判決要旨(平成 4 年 11 月 6 日最高裁判決)〉 憲法上、外国人には外国へ一時旅行する自由は保障されていないため、再入国の自由も保障されていない 国際人権規約(自由権規約)12条4項(「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」)には「自国に戻る権利」(再入国の自由)が保障されており、 ここでいう自国とは「国籍国」を意味するのか、「定住国」を意味するのか、議論が存在するが、最高裁判決は国籍国と解釈した。 >管理職選考事件 保健婦として東京都に採用されていた在日韓国人2世が1994年から1995年にかけて、管理職への昇任試験を受験しようとしたところ、 受験資格の国籍条項を理由に東京都から受験を拒否され、損害賠償を求めた事件。 1997年、第2審の東京高裁では、違憲・違法とし、東京都に対し40万円の支払いを命じる判決を言い渡したが、 2005年最高裁は管理職への外国人登用の一律禁止は違憲ではないとし、請求を棄却した。 #hr 〈最高裁判所の判決要旨(平成 4 年 11 月 6 日最高裁判決)〉 地方公務員に外国人を任命することは禁止されていないものの、地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、 その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、 又はこれらに参画することを職務とするもの(公権力行使等地方公務員)には国民主権の原理から外国人が就任することは想定されていない。 →国家公務員への就任は当然想定されていない。 >塩見訴訟 1934年に日本で出生した韓国籍の塩見日出氏は幼少期に失明をした。1970年に帰化、 1972年に、国民年金法所定の障害福祉年金の受給資格を有するとして、請求をした。 しかし廃疾認定日(失明をした日)の時点で、日本国籍を有していなかったことを理由に、請求が却下され、 過去の国籍を理由に国民の権利を否定するのは、法の下の平等に反するとして、取消訴訟を提起した事件。 #hr 〈最高裁判所の判決要旨(平成元年 3 月 2 日最高裁判決)〉 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、 当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、 その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、 自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。 →現在、国籍要件は撤廃されている。 #endregion #region(私人に関する判例) ''私人に関する判例'' 「この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない」(民法2条) 「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」(民法90条) >三菱樹脂事件 東北大学法学部卒業後の1963年3月28日、三菱樹脂株式会社に管理職要員として3ヶ月間の試用期間を設けて雇用されたが、 前年の9月に会社から交付を受けた身上書の「学校又は自治会、運動文化部等、学内諸団体委員、部員の経験」欄等に 虚偽の申告、面接時に虚偽の回答を理由に、6月28日の試用期間終了とともに採用を拒否されたため、解雇の取り消しと賃金の支払いを求めた事件。 #hr 〈最高裁判所の判決要旨(昭和 48 年 12 月 12 日最高裁判決)〉 人権規定は私人相互間には原則として直接適用されることはないし、民法90条等の運用で適切な調整ができるとした >日産自動車事件 原告女性の勤務先会社は1966年に日産自動車に吸収合併された。合併前の会社は男女とも 55歳定年だったが、 新しい勤務先となった会社は就業規則で定年を男性55歳、女性50歳と定めており、 満50歳となった原告は 1969年1月末で退職を命じられたため、退職の無効を訴えた事件。 #hr 〈最高裁判所の判決要旨(昭和 56 年 3 月 24 日最高裁判決)〉 女性の定年年齢を男性より低く定めた部分は、もっぱら女性であることのみを理由として差別したということになり、 性別のみによる不合理な差別を定めたものとして公序良俗(現在の社会秩序)に反して無効である。 #endregion ***第五講目の内容 [#p0fc7443] #region(幸福追求) ''幸福追求'' >幸福追求権 個人尊重の原理に基づく幸福追求権は憲法に記されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利として 裁判上の救済を受けることができると認められてきている。 >日本国憲法13条の解釈 「すべて国民は、個人として尊重される」(個人の尊重) 「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(幸福追求権) #br 13条の国民の権利とは、14条以下にあげられている個別の人権の総称 「すべての個人が人間としての共通性をもつことを根拠として、政府が個人を人間にふさわしく取り扱うように要請」(個人の尊重) |人格的利益説|人間は自分の人生を自分で切り拓いてく意志と判断力をもった「理性的存在」&br;→個人としての人間の本質は人格にある。| |一般行為自由説|人間を理性や人格とは切り離されたもの、「ありのままの人間」として考える「ありのままの人間」=自己愛に満ち、自己愛を最大視する存在&br;→個人としての人間の本質は個性にある。| >幸福追求権の意義 「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(13条後半の法的意義)→14条以下の権利の総称であり、具体的な権利を保障するものではない。 社会変動によって個人の尊重に不可欠なさまざまな新しい権利が主張されるようになってきている生命、自由及び幸福追求→まとめて幸福追求権 #br 13条から導かれる新しい人権とは、具体的にどのような行為や状態が保護されるのか? |人格的利益説|「自律的な個人が人格的に生存するために不可欠と考えられる基本的な権利・自由」&br;幸福追求権と他の個別具体的な権利との関係は一般法と特別法の関係にあたる。| |一般行為自由説|あらゆる生活領域に関する行為の自由→一般的行為の自由&br;⇒個人の自由は広く保障されなければならない。(服装、飲酒...など)| >プライバシーの権利 日本国憲法にはプライバシーの権利が書かれていない→13条を根拠として主張される権利 -古典的プライバシー権 19世紀末、アメリカにおいてマスメディアの記事の対象にされた著名人が、メディアの責任を追求するために、私法上の権利として主張した権利 →「ひとりで放っておいてもらう権利」(a right to be let alone)| -日本国憲法におけるプライバシー権 「宴のあと事件」において、東京地裁はプライバシー権を「私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利」と定義(昭和39年9月28日 東京地裁判決) 1.自分の私生活を他人に覗き見られず、第三者に対して暴露されないことを保護内容とする権利 2.加害者の不法行為責任を追求する根拠となる私法上の権利 >プライバシー権の変化 前科照会事件(昭和56年4月14日 最高裁判決) 裁判を有利に進めようとした弁護士が相手方の前科を照会し、法廷で公表したため、相手方が照会に応じた京都市を訴えた事件 最高裁は「前科、犯罪経歴は人の名誉・信用にかかわり、これをみだりに公開されないのは法律上の保護に値する利益」と判断 >自己情報コントロール権 プライバシー権:個人の私的領域に他人や権力を介入させないという意味の消極的自由権 「自己に関する情報をコントロールする権利」(情報プライバシー権) 「個人が自分についての情報を誰にどう提供するかを自分でコントロールできる状態」 →プライバシー権は私法上の権利から憲法上の権利へ >プライバシー権と肖像権 ・京都府学連事件 京都市公安条例に違反してデモ行進を行っていた学生を警察官が犯罪証拠とするために写真撮影した際、学生が警察官に暴行を加え、公務執行妨害罪・傷害罪に問われた事件 【最高裁の判決(昭和44年12月24日)】 「承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由」(肖像権)を有しているため、正当な理由がないのに警察官が個人の容ぼう等を撮影することは憲法13条に違反するが、 次の条件を満たす場合は許される。 1、現に犯罪が行われ、または行われて間もないこと 2、証拠保全の必要性および緊急性があること 3、撮影方法が許容限度内の相当なものであること >自己決定権 |BGCOLOR(#FFFFD2):定義|一定の個人的事柄について、公権力から干渉されることなく、自ら決定することができる権利| |~|人格権や私生活上の自由と考えられる権利| 1 生命や身体のあり方の決定(治療拒否(安楽死、尊厳死)、臓器提供) 2 家族に関する決定(結婚・離婚) 3 リプロダクション(避妊、中絶) 4 その他のライフスタイル全般に関する決定(服装、髪型、喫煙...etc) #hr 自己決定権は公共の福祉の他にパターナリズムによる制約が認められている。 【判例(東京高裁平成4年10月30日)】 校則でパーマなどの髪型を禁止することは、非行防止といった教育上の目的から認められる。 >環境権 |BGCOLOR(#FFFFD2):定義|人が良好で快適な環境の中で暮らす権利、そうした環境の保全維持を求める権利| |自由権的側面|環境悪化の防止、環境破壊行為の排除、良好な環境に干渉されない⋯など| |社会権的側面|国などに環境の保全・維持・向上の請求など積極的施策を求める。| 環境権に基づいて損害賠償などを請求できるのか? →環境権といっても人それぞれであり、憲法上の権利として認めるには具体的ではないため、判例において環境権を正面から認めたものはない。 #endregion #region(法の下の平等) ''法の下の平等'' 1948年 世界人権宣言 (第1条) 「全ての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。 人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」 |BGCOLOR(#FFFFD2):形式的平等(機会の平等)|自由権的平等:国家は活動の機会に関して、各人を法的に平等に取り扱わなければならない。| |BGCOLOR(#FFFFD2):実質的平等(結果の平等)|社会権的平等:平等な機会の下での各人の自由な活動の結果、経済格差が広がった時には国家はその格差を是正しなければならない。| >日本国憲法下における平等 |形式的平等(機会の平等)|法律上、均一な扱いをすること→個人の事情を考慮せずに誰でも同じように扱うこと| |実質的平等(条件の平等)|事実上、劣位のものを有利に扱い、結果が平等になることを求めること→個人の事情を考慮して、人によって扱いを変えること| -14条1項が定める平等:相対的平等(⇔絶対的平等) いかなる場合も絶対的に等しく扱う絶対的平等ではなく、「等しい物は等しく、等しからざるものは等しからざるように」扱うという相対的平等であり、 合理的な理由によって異なる扱いをすることは許される |BGCOLOR(#FFFFD2):立法者非拘束説|14条第1項後段に挙げられているもの以外は法的に平等か&br;不平等かを問わず、法律が平等に適用されていれば良い。&br;→14条第1項後段のもの以外に関しては、平等の原則に従わなければならないのは、行政権と司法権のみ。| |BGCOLOR(#FFFFD2):立法者拘束説|14条第1項後段に挙げられているもの以外に関しても、法的に平等でなければならない。&br;→行政権と司法権だけでなく立法権も平等の原則に従わなければならない。| >平等の具体的内容 |BGCOLOR(#FFFFD2):平等原則|政府が個人を平等・平等の具体的内容に扱わなければならないという考え方| |BGCOLOR(#FFFFD2):平等権|個人が差別によって不利益を受けない(差別された場合に人権として主張する)主観的権利| |個別的事由|意味・内容|h |人種|本来は皮膚、毛髪、目、体型等の身体的特徴によって区分される人類学上の種類。現在では広く「人種、皮膚の色、民族的若しくは種族的出身」| |信条|歴史的には宗教や信仰を意味するが、現在ではさらに広く思想・世界観等を含むと理解される。| |性別|男女の別。歴史的に主に女性に対する不合理な差別の禁止を意味する。| |社会的身分|一般に人が社会において占めている地位のこと。差別の理由に当たる社会的身分とは、&br;1.出生によって決定され、自己の意思で駆られない地位(門地をのぞいたもの)。&br;2.社会において後天的に占める地位で一定の社会的評価を伴うもの。&br;3.広く社会においてある程度継続的に占めている地位。| |門地|家系、血統等の家柄。| >14条1項前段と後段の関係 合理的な理由によって異なる扱いをすることは許されるならば、14条1項後段が差別禁止な自由をなぜわざわざ列挙しているのかについての考え方 |学説|後段列挙事由の意味合い|h |限定列挙説|列挙事由に基づく差別は絶対に禁止&br;あまりにも厳密で、区別の基準が人種、信条など後段列挙事由のどれかに該当するとその法律はすぐに違憲となってしまう。| |原則禁止事由例示説|単なる例示以上の一定の意味が認められる例示&br;単純例示説よりは重要な意味があると考える説| |単純例示説|列挙事由はたんなる例示&br;最高裁判所の考え方| >判例で見る平等問題 旧刑法200条 尊属殺人罪 「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」 // (当時の)刑法199条 殺人罪 「人を殺した者は、死刑、終身刑、無期若しくは 3 年以上の懲役に処する」 ※現在は5年以上の拘禁刑 ※執行猶予がつくのは3年以下の懲役(当時)の場合 #br #hr 尊属殺を特別に扱うことが法の下の平等原則に反しないかどうか→社会的身分による差別にあたらないかどうか #br ◇従来の裁判所の見解 親子関係は「社会的身分」に当たらず、「夫婦、親子、兄弟等の関係を支配する道徳は、人倫の大本である」ため合憲→刑法 200 条は平等原則には違反しない。 #br ◇裁判所の見解に関する批判 刑法200条は封建的家族制度を表すもので、日本国憲法の平等観とは相容れない。 親への報恩という道徳的価値を法律で強制するのは不適当 死刑又は無期懲役というのは刑が重すぎるのではないか >''尊属殺人重罰規定違憲判決(日本で一番最初に出された違憲判決)'' -事件の概要 1968年栃木県矢板市で、当時29歳のA子が実の父親を絞殺した事件。 -事件の背景 A子は中学生時代から、父親に性的虐待を受け、5 度の出産と 6 度の中絶を経験(そのうち、4人目と5人目の子供は死産)。 その後、A子は、15年間にわたり夫婦同然の関係を強いられていた。 ある日、勤務先の工場の同僚と正常な結婚を望んだところ、父親はこれを認めず、10日あまりにわたって暴行、監禁などの脅迫虐待を受けたため 酩酊中の父親を思いあまって絞殺し、自首した事件。 #br -裁判の経過 --1969年5月29日 第1審 宇都宮地裁 尊属殺人罪を違憲として普通殺人罪を適用し、A子の心神耗弱を認定して刑を免除 --1970年5月12日 第2審 東京高裁 刑法 200 条を合憲とし、減刑をした上で懲役3年6ヶ月 --1973年4月4日 最高裁 200条を違憲とし、普通殺人罪を適用した上、懲役2年6ヶ月、執行猶予3年を決定。 刑法200条は1995年に刑法が改正されるまで存在した。 >尊属殺人重罰規定についての最高裁判所の判断 尊属殺人の重罰規定の立法目的は、尊属に対する尊重報恩という倫理の保護にある。 →尊属の殺害について尊属殺という特別の罪を設け、重く罰しても法の下の平等に反しない。 尊属殺重罰規定はどんなに減刑しても懲役3年6月を下回る事がなく、その結果として如何に酌量すべき情状があれども法律上刑の執行を猶予する事はできない。 普通殺人罪に関する刑法199条は、死刑、無期懲役刑のほか3年以上の有期懲役刑となっている。 →尊属殺は刑の重さが極端であることが法の下の平等に反するため違憲 ⇒立法目的達成手段が違憲 #br 最高裁判決文:https://www.courts.go.jp/hanrei/51807/detail2/index.html #endregion ***第六講目の内容 [#u70667f2] #region(思想・良心・信教の自由) ''思想・良心・信教の自由'' >思想・良心の自由 思想は論理にかかわるもの、良心は道徳にかかわるもの。 |内心説|精神活動は人間の根源的であるため、思想・良心の自由の保障を狭く限定すべきではなく、19条は広く内心活動一般を不可侵としている。| |信条説|心の動きすべてを無制限に保障すると、個人の人格形成にとって重要な「信条」の保障がかえっておろそかにされるため、&br;19条は人生観、世界観、思想体系といった信条のみを保障している。| →裁判所は信条説の立場(例:南九州税理士会事件...など) -特定の考えの強制や禁止 思想・良心が内面にとどまる限り、保障は絶対→考えることは禁止できない。 >学校教育の場での問題 民主主義や平和主義といった憲法上の価値は強制できるのか? 子どもどうしの喧嘩の際に、どちらかに謝らせるのは問題ないのか? 菜食主義者や宗教上の理由で、食べられないものを食べされられるのか? #hr 子どもがより良い教育を受けられるように、日常の生活態度から家庭環境に至るまで様々な情報を集め、 教育に役立てたり、情報を家庭や進学予定の学校と共有する。→子どもの信条などがわかってしまう場合がある。⇨沈黙の自由、信条に基づく不利益 #br -麹町中学校内申書事件(昭和63年7月15日 最高裁判決) 学校内外で政治活動を行っていた中学生が、政治活動の事実を内申書に記載されたため、受験した全ての高校を不合格にされたとして、損害賠償を求めた事件 「いずれの記載も、上告人の思想、信条をそのものを了知しうるものではないし、また、上告人の思想、信条自体高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底理解できない」 として、裁判所は訴えを却下 >信教の自由 |信仰の自由|宗教を信仰する、しない、どの宗教を信仰するか各人が自由に決定できる。| |宗教行為の自由|信仰や教義に基づいて、読経や礼拝などをする自由、宗教的行事を行う自由| |宗教的結社の自由|同じ信仰を共有する人々を組織し、維持していく自由| 「神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、6月以下の拘禁刑又拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する。」 「説教、礼拝又は葬式を妨害した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する。」(刑法188条1項) 「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。8号仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができなし物。」(民事執行法131条) >信教の自由の認められる範囲 「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。」(刑法103条) 「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期拘禁刑に処する。」(刑法205条) -加持祈祷事件(昭和38年5月15日最高裁判決) 精神障害のある女性の家族から平癒祈願を依頼され、線香護摩による加持祈祷を行い、女性の背中を殴るなどした結果、心臓麻痺で死に至らしめた事件 宗教的行為としてなされたものであっても、他人の生命、身体等に危害を及ぼす行為は、反社会的なものであり、 信教の自由の保障の限界を逸脱したものは認められない。 -牧会活動事件(昭和50年2月20日神戸簡裁判決) 教会の牧師が、高校生2名を、建造物侵入、凶器準備集合等の事件の犯人として警察が捜査中であることを知りながら、 約1週間にわたって教会内に宿泊させ、犯人蔵匿罪で起訴された事件 逃走中の犯人を匿う行為は、通常なら罪に問われるが、牧師が逃走中の犯人を教会に宿泊させ、説得した上で警察に出頭させた行為は、 牧会活動(個人の魂への配慮を通じて社会に奉仕する活動)という正当な業務活動であり、罪にはならないとした。 #endregion #region(政教分離) ''政教分離'' >政教分離 国家による信教の自由の侵害を防ぐため、国家と宗教の分離する客観的な制度を保障したもの 制度的保障。人権そのものではなく、個人の信教の自由を保障するための手段 政教分離は信教の自由という目的を達成するものであって分離が目的ではない。 #br 「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。」(教育基本法第15条第2項) 宗教系の私立学校への助成や、文化財としての神社仏閣の保存のための補助金の支出は問題ではないのか? 国家が宗教と関わりをもつことは避けられない面もある。→どの程度までなら国家と宗教の関わりが許されるのかが問題 >政教分離に対する裁判所の考え方 --目的・効果基準(津地鎮祭事件) 行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為 --世俗的行事・社会的儀礼(愛媛玉串料訴訟) 「特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀」にかかわり合いをもっており、 「宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼」とは言い難く、一般人もそう評価するような行為 #endregion #region(政教分離に関わる裁判の概要) ''政教分離に関わる裁判の概要'' >津地鎮祭事件(昭和52年7月13日最高裁判決) -概要 三重県津市が市立体育館建設に際して神式地鎮祭に公金を支出した行為が憲法に違反するかどうかが争われた事件 -裁判所の判断 地鎮祭の目的はもっぱら世俗的であり、その効果は神道を援助、助長、促進しまたは他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められないので、 政教分離原則には違反しないと判断 >愛媛玉串料訴訟(平成9年4月2日最高裁判決) -概要 愛媛県知事が靖国神社の例大祭に県の公金から玉串料を支出した行為が憲法に違反するかどうかが争われた事件 -裁判所の判断 靖国神社への玉串料の奉納は目的が宗教的意義をもつことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認められるため、 政教分離に違反すると判断 >日曜日授業参観事件(昭和61年3月20日東京地裁判決) 子どもたちが両親の主宰する教会学校に参加するため、公立小学校の日曜参観を欠席したところ、 指導要録に欠席と記載されたため、欠席の記載の取り消しと損害賠償を求めた事件 →公立学校においては、特定の宗教に配慮することは好ましくないと訴えを認めず。 >剣道実技拒否事件(平成8年3月8日最高裁判決) エホバの証人の教義に基づき、剣道の授業に参加しなかった公立の工業高等専門学校生が2年連続で留年処分を受け、 最終的に退学処分になったため、信教の自由の侵害を理由に処分の取り消しを求めた事件 →代替措置をとることが可能であるのにとらなかったため、違憲であると訴えを認める。 #endregion ***第七講目の内容 [#y891bdbd] #region(表現の自由) ''表現の自由'' >''表現の自由の意義'' 思想、良心の自由は外部に表現する行為の自由が保障されていないと意味がない。 →公権力が表現行為を妨げる行為を禁止 憲法学では憲法上の様々な自由(自由権)の中でも、表現の自由を最も重要と考える |自己実現の価値|自己の形成された人格を言論活動を通じて発展させる。(創作、発表活動...など)| |自己統治の価値|自らの意見や考えを自由に表明できなければ、民主主義は実現不可能→民主主義を支える権利| 北方ジャーナル事件(昭和61年6月11日 最高裁判決) 「主権が国民に属する民主制国家は、その構成員である国民がおよそ一切の主義主張等を表明するとともに これらの情報を相互に受領することができ、その中から自由な意思をもって自己が正当と信じる者を採用することにより多数意見が形成され、 かかる過程を通じて国政が決定されることをその存立の基礎としているのであるから、表現の自由、とりわけ、公共的事項に関する表現の自由は、 特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならないものであり、憲法21条1項の規定は、その核心においてかかる趣旨を含むものと解される」 >''精神的自由の優越的地位と二重の基準'' 表現の自由を含む精神的自由権=最も重要な権利 →表現の自由を規制する法律は基本的に違憲であり、裁判所は違憲を前提として判断しなければならない。 (⇔経済的自由権を制限する場合は、原則として合憲としてよい。) |制約される自由|精神的自由|経済的自由|h |推定|違憲|合憲| |審査基準|厳格な審査|緩やかな審査| |裁判所による介入の必要性|高い|低い| |裁判所の審査能力|高い|低い| >表現の自由の限界 重要な権利であれば、制限されることはないのか?→公共の福祉(他者との権利や法的利益)によって当然制限される。 表現には多様な形態があるため、個別に考えなければならない。 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、 専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。) に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、 本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。 (本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律第2条) >表現内容規制 表現に対してその伝達するメッセ―ジそのものを理由に行う制限 ⇨名誉(人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価)を侵害する表現 #br -性表現と表現の自由 チャタレイ事件(昭和32年2月13日最高裁判決) D.H.ロレンス原作の小説『チャタレイ夫人の恋人』の翻訳者と出版社社長が刑法175条に違反するとして起訴された事件。 #br 最高裁はわいせつとは、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」とし、 「裁判所が右の判断をなす場合の規準は、一般社会において行われている良識すなわち社会通念である。」としたうえで、 「性的秩序を守り、最少限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容をなすことについて疑問の余地がないので あるから、本件訳書を猥褻文書と認めその出版を公共の福祉に違反するものとなした原判決は正当」とした。 ※刑法第175条と刑法第230条の2を参照。 >表現内容中立規制 -表現が行われる時間・場所・方法に関する規制 (例:病院や学校など特定の施設の周辺での騒音の制限、選挙運動の時間制限) 表現内容に関係なく全ての表現に適用されるが、その他の場所・時間・方法で内容を表現できるため、 特定の内容を禁止される危険性が少ないため、表現内容規制に比べて容易に認められる傾向 →細かい条件付けによって、活動そのものを防止できるため、安易な制限は許されない -漠然・不明確な規制 表現の自由を規制する法律は明確でなければならないこと 例:「相手が嫌がることを言ってはいけない」という校則 →何を言ってはいけないのかはっきりしない→何も言えなくなる 漠然とした制限は萎縮効果があるため無効 規制の範囲があまりにも広い場合も無効 >検閲・事前抑制 表現により権利や利益が侵害されることを予防するためには、事前に予防するには、表現させないことが最も効果的 →規制の権限をもつ者の主観に影響されやすく、範囲も広く、影響が大きいため、禁止 #br -検閲の定義 主体(誰が)、対象(何を)、時期(いつ)、目的(何のために)、が重要 行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的とし、 対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるもの >集会・結社の自由 |集会|特定または不特定の多数人が政治・経済・学問・芸術等に関する共通の目的のために一定の場所に集まること。&br;屋内外の集会だけでなく、集団行動や集団示威運動(デモ)も含む。| |結社|特定の多数人が政治・経済・宗教・芸術等に関する共通の目的のために継続的に団体を形成すること。| -成田新法事件(平成4年7月1日 最高裁判決) 新東京国際空港の建設に反対する活動を行ってきた原告が、使用してきた活動拠点に対する、 「新東京国隠空港の安全確保に関する緊急措置法」(成田新法)に基づく工作物使用禁止命令に対して命令の取消と損害賠償を求めた事件。 最高裁は当該命令について憲法21条に違反しないと判断 #endregion #region(知る権利) ''知る権利'' >''知る権利'' 表現(情報)の「受け手」の自由としての「知る権利」が含まれる。 報道の自由は表現の自由に含まれている。 自由に情報を収集する自由権的性質だけでなく、政府の持っている情報の公開を請求することができる社会権的性質権利 社会権としての知る権利を行使するには、情報公開法などの法制度の整備が必要となる。 >''報道・取材の自由'' 国民の知る権利に奉仕するため、何をどのように報道するのかはメディアが自由に決められる。 報道は取材、編集、報道の3つの行為から成り立っている。 報道の自由と取材の自由は保障の程度に差がある(報道>取材)。取材の自由は(保障ではなく)尊重される対象 >・アクセス権 マス・メディアに対して自己の意見の発表の場を提供することを要求できる権利 具体的権利として認められるためには立法政策が必要と考えられている。 -博多駅テレビフイルム提出命令事件(昭和44年11月26日 最高裁判決) 米原子力空母の日本寄港に反対する活動に参加するために博多駅で下車した学生に対する警察機動隊による駅構内からの排除と持ち物検査の際に、 特別公務員暴行陵虐・職権濫用罪に当たる行為があったかどうかを判断するために、地元福岡のテレビ局に対して、 裁判所が行った事件当日の取材フィルムの提出命令と報道の自由、取材の自由の関係が問題となった事件。 最高裁は、取材の自由の重要性と本件裁判における取材フィルムの必要不可欠性等を比較した上で取材フィルムの提出命令を合憲と判断。 >学問の自由 |教授の自由|どのような内容で授業をするか、何を教材に使うかを自由に決められる。| |学問研究の自由|何を研究するか自由に決められる。| |研究発表の自由|研究成果を自由に発表できる。| 学問の自由は公共の福祉などによっても規制されるべきではない。 →クローン技術や生体実験など、先端技術分野においては必要最小限度の法的規制が許される。 #br -滝川事件 京都帝国大学(現京都大学)法学部教授の滝川幸辰の刑法の内乱罪や姦通罪に関する学説が自由主義的に過ぎるとして著書が発禁処分にされ、 さらに休職処分が下されたことに対して、法学部の全教官が辞職し抗議、抵抗した事件。 -天皇機関説事件 君主を国家という法人の最高機関と位置づける国家法人説に基づき、天皇を国家の最高機関と位置づける「天皇機関説」を「国体」に反する異脱と断じ、 その代表的論者であった美濃部達吉の著書を発禁処分に付し、全ての公職から追放した事件。 >大学の自治 -定義 大学の運営は、外部から干渉されることなく、自律的になされなければならない。 誰を教員にするのか、どのような授業を設置するのか、不正行為を行った学生をどう処分するのか...など -大学の自治と警察 大学の敷地内には警察といえでも許可がなければ入れないが、 大学外でも行われているものと同じような学生の集会は、大学の自治の範囲ではないと裁判所は判断 ⇨[[東大ポポロ事件(昭和38年5月22日 最高裁判決)>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E3%83%9D%E3%83%9D%E3%83%AD%E4%BA%8B%E4%BB%B6]] ⇨2014年11月4日の事件 #br #hr #br >東大ポポロ事件 東京大学の学生団体主催の演劇発表会が大学内で行われていた際、警備情報収集のために立ち入っていた私服警察官に学生が暴行を加えたとされた事件。 第1審、第2審では警察官が大学構内に立入る行為を職務権限を逸脱した違法な行為として、これを阻止した学生の行為を正当な行為として罪とならないと判断したが、 最高裁は「本件集会は、真に学問的な研究と発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じるものであつて、 大学の学問の自由と自治は、これを享有しないといわなければならない。 したがつて、本件の集会に警察官が立ち入つたことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない。」と判断。 #br -同判決文内の教授の自由に関する部分 「このように、大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づくから、 直接には教授その他の研究者の研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解される。 大学の施設と学生は、これらの自由と自治の効果として、施設が大学当局によつて自治的に管理され、学生も学問の自由と施設の利用を認められるのである。 もとより、憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享有する。しかし、大学の学生としてそれ以上に学問の自由を享有し、 また大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。」 →学生はあくまでも施設の利用者という認識 >2014年11月4日の事件 2014年11月4日、京都大学の敷地内に私服警察官が無断で立ち入っているところを学生に発見され、身柄を拘束された事件。 京都大学と京都府警の間には大学の敷地内に立入る場合は事前に連絡をする旨の協定が締結されていたため問題となった。 #endregion ***第八講目の内容 [#of00c32f] #region(経済的自由権) ''経済的自由権'' >職業選択の自由 自己の従事する職業を自由に決定できる権利で、職業選択の自由には職業遂行(営業)の自由が含まれている。 (狭義の)職業選択の自由は「職業の開始、継続、廃止」の自由 お金を稼ぐこと(営利)を目的とする活動の自由である営業の自由をも含む。→労働は単なる収入を得る手段ではなく、人の生き方そのものにも関わる為 >経済的自由権の規制 職業選択の自由があるのであれば、教員等には資格に関係なく自由になれるはずではないのか? →専門的な知識を必要とする職業に、十分な知識がない者が従事すると取り返しのつかない事態になる可能性が高いため、 公共の安全や秩序の維持の観点から制限される。 →職業のもつ社会的相互関連性から規制が認められる。 |消極目的規制|個人の自由な経済活動による弊害が公共の安全や秩序を脅かしたり、他者の生命や健康に危害を及ぼすことを防止するための規制| |積極目的規制|社会国家・福祉国家の理念を実現するための政策的規制(例:大規模店舗の出店地域の制限)| |''職業選択の自由の制限の例''|定義|例|h |届出制|行政庁(行政上の意思決定機関)に対する事実の一方的な通知のみで事足りるもの|理容・美容業,クリーニング業| |許可制|申請に応じた行政庁による禁止の解除が必要なもの|飲食業,薬局・医薬品販売| |資格制|一定の資格を取得する必要のあるもの|弁護士,医師,薬剤師| |特許制|行政庁の裁量の下、公益の観点から特権が付与される必要があるもの|電気,ガス,水道| #br 規制の基準(規制目的二分論)の考え方。下に行く程、チェックが緩い。 |>|規制|目的|手段|h |>|厳格な基準|やむにやまれず|目的の為に必要不可欠&br;必要最小限度| |>|厳格な合理性の基準|重要|目的との実質的な関連性あり&br;より制限的ではない他の選び得る手段がない等| |緩やかな基準|合理性の基準|正当|目的との合理的な関連性あり。著しく不合理ではない。| |~|明白性の基準|~|著しく不合理ではないと明らか。| >居住・移転の自由 自分で自由に住所や居所を決めたり、移動したりする自由 公衆衛生と患者の保護という観点から制限することは認められている。 「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」(民法22条) >海外渡航の自由 一時的な海外旅行は政府の保護が期待されているため、公共の福祉を理由に制限が可能 海外旅行は外国に移住する自由に含まれている。 >国籍離脱の自由 生来的に国籍を取得する制度であるため、国籍を自分の意思で離脱する自由を認めているが、無国籍の自由を認めるものではない。 #br -国籍法違憲訴訟(平成20年6月4日 最高裁判決) 国籍は「我が国の構成員としての資格であるとともに、 我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある」 >''財産権'' 「所有権は、不可侵かつ神聖な権利」(フランス人権宣言17条) 第29条はフランス人権宣言の趣旨を表していると解される。 近代的な経済的自由権から現代的な経済的自由権への価値の変容を含んでいる。 #br -◆財産権とは 所有権をはじめとした物件、債権、著作権、特許権などの知的財産権 鉱業権、漁業権などの特別法上の権利 水利権、河川利用権などのあらゆる公法上の権利 財産上の権利の保障と個人が財産を享有できる制度(私有財産制)を保障 →財産そのものではなく、財産権が保障されている。 >財産権の制限 「公共の福祉に適合するように法律でこれを定める」とはどのように解釈するのか。 →法律で制限できるのであれば、財産権は憲法上の権利とはいえない。 職業選択の自由と同様に公共の福祉を理由として財産権も制限される可能性がある。 >補償の要否 法律により財産権が制限される場合に正当な補償が必要可どうかはその制限の様態による。 奈良県ため池条例事件最高裁判決(昭和38年6月26日) 「災害を防止し公共の福祉をや保持する」ために「社会生活上已むを得ない」制限に対して憲法29条3項の損失補償は必要ない。 →財産権自体に内在する制約が存在する。 ⇒災害などを引き起こして公共の安全を害するおそれがある場合には自由に行使できるものではない。 #br 特定の個人に特別の犠牲を強いたとき、損失補償が必要となる(特別犠牲説) 損失補償が不要か必要かについての考慮する要素として、以下2つから総合的に判断する ①侵害行為の対象が、広く一般の人か、特定の個人や集団か ②侵害行為が社会通念上受忍すべき限度内か否か #br 一般的には、具体的な法令に基づいて損失補償請求が行われるが、 法令に補償規定がなかった場合でも憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求できる可能な場合もありえる。 >予防接種禍 予防接種の意義 接種した人や周囲の人の病気の予防という個人的利益+病気の流行を防ぐという社会(公共)的利益 副反応による被害者も一定数存在→被害を救済しなければならない。 #br 法令に基づく救済制度(例:予防接種法15条以下に基づく予防接種後健康被害救済制度)の他、国家賠償請求、損失補償の2つが想定される。 |国家賠償請|公務員の違法行為による損失に対する補償| |損失補償|適法な公権力の行使による財産上の特別の犠牲に対する補償| 29条3項を根拠とした損失補償は、生命や身体が犠牲となっているのに、私有財産が適法に「公共のために用ひ」られたと見立てる。 「予防接種を受けることが適当でない者」(予防接種実施規則6条)や「明らかな発熱を呈している者」(予防接種法施行規則2条2号) といった禁忌者に該当すると推測 #br 判例上、損失補償よりも国家賠償による救済の途が開かれている。 損失補償の典型例:道路や公園建設など公益事業のための土地収用 予防接種ワクチン禍事件(平成4年12月18日 東京高裁判決) 「厚生大臣には、禁忌該当者に予防接種を実施させないための充分な措置をとることを怠った過失があるものといわざるを得ず」 >保障の範囲 「正当な補償」とはどれくらいの補償なのか? |相当補償説|市場価格に基づいて合理的に算出された相当な額でよいという考え&br;→その時点の経済状態において成立する価格に基づくもので、必ずしもかかった価格と一致する必要はない。| |完全補償説|市場価格を基準として、財産価値に変動を生じさせないようにしなければならないという考え&br;公平性を考慮するのであれば、占領下という特殊な状況を除いて、完全な補償が望ましい。| 農地改革事件(昭和28年12月23日)→相当補償説 「自作農を急速且つ広汎に創設する」ため、 「各農地のそれぞれについて、常に変化する経済事情の下に自由な取引によってのみ成立し得べき価格を標準とすることは」許されない。 土地収用法事件(昭和48年10月18日)→完全補償説 「完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しく」する。 #endregion #region(裁判例) ''裁判例'' >薬局距離制限事件(昭和50年4月30日 最高裁判決) 「......職業は、人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、 これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し、各人が自己のもつ個性を全うすべき場として、 個人の人格的価値とも不可分の関連を有するものである。......もつとも、職業は、前述のように、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であつて、 その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、 公権力による規制の要請がつよく、憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、 特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。このように、職業は、それ自身のうちになんらかの制約の必要性が内在する社会的活動であるが、 その種類、性質、内容、社会的意義及び影響がきわめて多種多様であるため、その規制を要求する社会的理由ないし目的も、 国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、 社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで千差万別で、その重要性も区々にわたるのである。 そしてこれに対応して、現実に職業の自由に対して加えられる制限も、あるいは特定の職業につき私人による遂行を一切禁止してこれを国家又は公共団体の専業とし、 あるいは一定の条件をみたした者にのみこれを認め、更に、場合によつては、進んでそれらの者に職業の継続、遂行の義務を課し、 あるいは職業の開始、継続、廃止の自由を認めながらその遂行の方法又は態様について規制する等、それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるのである。 それ故、これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、 具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、 これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。」 >小売市場判決(昭和47年11月22日 最高裁判決) 「......憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、 個人の精神的自由等に関する場合と異なつて......憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、 個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、 これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当...... 個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、 裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合 に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当......」 >ハンセン病国賠訴訟熊本地裁判決(平成13年5月11日 熊本地裁) 「居住・移転の自由は、経済的自由の一環をなすものであるとともに、奴隷的拘束等の禁止を定めた18条よりも広い意味での人身の自由としての側面を持つ。 のみならず、自己の選択するところに従い社会の様々な事物に触れ、人と接しコミュニケートすることは、人が人として生存する上で 決定的重要性を有することであって、居住・移転の自由は、これに不可欠の前提というべきものである」 #br →当時の小泉純一郎首相の政治判断により、控訴はなされず、判決が確定。 しかし政府は、2001年5月25日の閣議決定に基づいて、同判決には、国家賠償法、民法の解釈の根幹にかかわる法律上の問題点があるという声明を出している。 >森林法共有分割制限事件最高裁判決(昭和62年4月22日) 「財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、右のとおり立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるものであるが、 この規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、 社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、 社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。 したがつて、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、 規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきもの」 >証券取引法 164 条合憲判決(平成14年2月13日 最高裁判決) 「財産権は、それ自体に内在する制約がある外、その性質上社会全体の利益を図るために立法府によって加えられる規制により制約を受けるものである。 財産権の種類、性質等は多種多様であり、また、財産権に対する規制を必要とする社会的理由ないし目的も、 社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策に基づくものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等を図るものまで 多岐にわたるため、財産権に対する規制は、種々の態様のものがあり得る。このことからすれば、財産権に対する規制が憲法29条2項にいう 公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、 規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきもの」 #endregion ***第九講目の内容 [#pefc3eff] #region(人身の自由) ''人身の自由'' >人身の自由 -手続的保障の意義 犯罪の防止、犯罪者の処罰など治安維持を通じた国民の安全確保は国家の重要な役割 権力の濫用により、国民の自由や安全が脅かされる可能性がある。 #br -憲法31条の意味 「法律の定める手続」さえあればよいのか... |手続の法定|刑事手続についてのルールは「法律」で定めなければならない。| |適正手続|法定された手続きが不公正・不十分であってはならない。| ⇒31条は双方を要求している 第三者所有物没収事件(昭和37年11月28日 最高裁判決) 密輸出を試みたとして有罪判決を受けた者から、犯罪に関わる貨物を没収したところ、没収された貨物のなかに本人以外の所有物も含まれていたため、 当該第三者に対して何の弁明の機会も与えずにその財産を没収することは憲法に違反するとされた事案 >罪刑法定主義 手続きの法定がなされており、適正な手続きが整備されていたとしても、刑罰が法律で定められているほか、刑罰の内容が適正である必要 →罪刑法定主義が重要 #br 罪刑法定主義とは、どのような行為を行ったら、どのような罰を受けるのか、あらかじめ法律で定めておかなければならないという考え。 近代刑事上の大原則といわれるが、日本国憲法には明文化されていない。 →31条を根拠とする考えが通説だが、13条や41条から導き出す考えもある #br 罪刑法定主義においては、構成要件の明確性が重要 最高裁は、「通常の判断能力を有する一般人の理解」に照らして、構成要件が暖味不明確である場合には、憲法31条に違反すると判断 構成要件:犯罪として法律上規定されている行為類型 まずは「〇〇した者は△△に処する」と書いてある場合の「〇〇した者」というイメージで理解 徳島市公安条例事件最高裁判決(昭和50年9月10日) 「およそ、刑罰法規の定める犯罪構成要件があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反し無効であるとされるのは、 その規定が通常の判断能力を有する一般人に対して、禁止される行為とそうでない行為とを識別するための基準を示すところがなく、 そのため、その適用を受ける国民に対して刑罰の対象となる行為をあらかじめ告知する機能を果たさず、 また、その運用がこれを適用する国又は地方公共団体の機関の主観的判断にゆだねられて恣意に流れる等、重大な弊害を生ずるからであると考えられる。 しかし、一般に法規は、規定の文言の表現力に限界があるばかりでなく、その性質上多かれ少なかれ抽象性を有し、刑罰法規もその例外をなすものではないから、 禁止される行為とそうでない行為との識別を可能ならしめる基準といつても、必ずしも常に絶対的なそれを要求することはできず、 合理的な判断を必要とする場合があることを免れない。それゆえ、ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するものと認めるべきかどうかは、 通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を 可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによつてこれを決定すべきである。」 >被疑者の権利,不当な捜査・逮捕からの自由 ◆令状主義 刑事手続では、自由を拘束するほか、所有物やプライバシーに関わるものを捜索、押収する。 公平な裁判の実現に必須の要素ではあるが、濫用されると危険 逮捕や家宅捜索などの強制処分は裁判官によって事前に発せられる令状がなければ行ってはならない。 →第三者の裁判官を関与させることで、濫用防止を図る(33条、35条) |>|令状主義の例外|h |現行犯逮捕の場合は、令状は必要ない|33条、刑事訴訟法法 212条| |準現行犯逮捕の場合は、令状は必要ない|刑事訴訟法法 212条| |緊急逮捕の場合は、逮捕後に令状を請求|刑事訴訟法 210条| >不当な抑留・拘禁からの自由 逮捕およびの身柄の拘束の場面に関して、34条後段は、被疑者が自らを守るための活動を適切に展開できるようにするために犯罪の嫌疑は何か、 抑留(刑訴法上の留世のこと)・拘禁(刑解法上の勾留のこと)がなぜ必要かについて告知を受ける権利を保障 #br -刑事訴訟法 203条 一時的に身柄を拘束する留置の必要があると判断したときは、 48時間以内に、逮捕した被疑者を書類・証拠物とともに検察官に送付する。 -刑事訴訟法 205条 検察官は、弁解の機会を与えて、留置の必要がないと判断すれば直ちに釈放を、 留置の必要があると判断したときは、24時間以内に裁判官に勾留を請求しなければならない。(最初の被疑者の身体拘束から、72時間以内) -刑事訴訟法 207条 検察官の勾留請求に基づき、裁判官が被疑者の身柄をさらに継続して拘束する必要があると認めるときは、勾留状を発して身柄拘束を行う。 起訴前の勾留期間は10日、やむを得ない場合に限り10日延長可能 #br -弁護人依頼権―弁護人の活動に関しては刑事訴訟法に規定 |弁護人依頼権|刑事訴訟法30条| |弁護人依頼権の告知を受けること|刑事訴訟法203条、204条| |弁護人選任を妨げられないこと|刑事訴訟法78条、209条| |接見交通権|刑事訴訟法39条1項| 「被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。」 (刑事訴訟法30条) 「司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、 直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと 思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に 書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。」 (刑事訴訟法203条1項) 「検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。) を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、 留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から 48時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。」 (刑事訴訟法204条1項) 「被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人 を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。 ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない」 (刑事訴訟法37条の21項) 「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、 公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。 但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」 (刑事訴訟法39条3項) >黙秘権と拷問の禁止 自分に罪が帰せられ刑罰を科せられる根拠となるような自己に不利益な供述を強要されない+黙秘したことによっていかなる不利益も受けない権利 「何人も」と規定されているので、被疑者、被告人、証人等にも保障されると考えられている。 被疑者および被告人の黙秘権については刑事訴訟法に規定されている。 「前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」(刑事訴訟法198条2項) 「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。」(刑事訴訟法311条1項) >被告人の権利 公訴提起(起訴)とは、検察官が被疑者の処罰を求めて裁判所に訴えること 公訴の権限は検察官のみが有している→起訴独占主義 「公訴は、検察官がこれを行う。」(刑事訴訟法247条) 2009年5月21日以降、検察審査会が起訴議決した場合には、検察官の判断にかかわらず起訴の手続が進められることになっている。 公訴されることによって、被疑者から被告人に変わる。 裁判所は職権で被告人を勾留することができる。(刑事訴訟法60条) 被告人には解放(保釈)を求める権利があるが、裁判所が認めない場合もある。 被告人にも、勾留理由開示を請求する権利が保障されている。(憲法34条、刑事訴訟法82-86条) #br -保釈を許す場合 保釈保証金(保釈金)の額を決めて納入させる。 保釈後、正当な理由なく公判に出席しないなどの事由がある場合には、保釈は取り消され、保釈金は没収される。 >裁判に関する権利 被告人には裁判を受ける権利が保障されている。(32条、37条1項、82条1項) -迅速な裁判を受ける権利 迅速な裁判は被告人にとって極めて重要 「裁判の遅滞は正義の否定に等しい(Justice delayed,justiced enied)」という法格言もある。 高田事件(昭和47年12月20日 最高裁判決) 事件関係者の多さ,事案の複雑性等から、約15年に亘って審理が中断していた為、弁護人が37条1項を理由に公訴棄却又は免訴により審理打切を申立てた事案 「......憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、 右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、 さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、 迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、 もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。」 -公開裁判を受ける権利 刑事裁判に限らず、裁判の対審および判決は原則として公開でなされなければならない。(82条1項) 裁判官の全員一致で、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決した場合、対審を非公開にすることが可能 ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法が保障する憲法上の権利が問題となっている事件の対審は常に公開しなければならない(82条2項) -被告人の国選弁護人依頼権 被告人が自分で弁護人を依頼できないときは、国が弁護人を依頼する。(37条3項、刑訴法36条) 刑事訴訟法は、一定の刑事事件では弁護人がいなければ開廷することができない。(刑事訴訟法289条1項、316条の29、350条の9) >証拠に関する権利 -証人に対する権利(37条2項) |証人審問権|被告人が証人を審問する権利| |証人喚問権|公費により強制的に証人の喚問を請求する権利| -自白を証拠とすることに対する制限 強要や強制的な方法を通じて得た自白の証拠能力を否定 (自白排除法則:38条2項、刑訴法319条1項) >適用される法律や刑罰に関する保障 -事後法(遡及処罰)の禁止 「犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。」(刑法6条) 実行の時に適法であった行為について、事後に法律で処罰することを禁止 実行の時に刑罰が法定されている場合でも、事後により重い刑罰を定めて付加することも禁止 岩手県教組同盟罷業事件(平成8年11月18日 最高裁判決) 被告人に不利な判例の変更について行為の時点で最高裁の判例に従えば無罪となる行為であっても、 その判例を変更したうえで処罰することは、憲法39条に違反しないとしている。 -一事不再理 「既に無罪とされた行為」については再度裁判にかけられないこと →事件が確定した後に再度被告人に不利となるような危険に晒すことを禁止するもの 再審制度は「既に有罪とされた行為」について再び審理し、確定した有罪判決を覆すものであるため、憲法には違反しない。 |近年再審により無罪判決が出された事件|h |足利事件(2010)、東電OL殺人事件(2012)、袴田事件(2024)| -疑わしきは被告人の利益に(推定無罪の原則) 合理的な疑いを入れる余地がない場合にのみ有罪であることを証明できた場合に有罪判決を下すという考え方 憲法には明記されていないが、手続的保障を定める憲法31条等に照らして導かれる憲法上の原則として理解される。 名倉事件(平成21年4月14日 最高裁判決)における那須弘平裁判官の補足意見 「冤罪で国民を処罰するのは国家による人権侵害の最たるものであり,これを防止することは刑事裁判における最重要課題の一つである。 刑事裁判の鉄則ともいわれる「疑わしきは被告人の利益に」の原則も,有罪判断に必要とされる「合理的な疑いを超えた証明」の基準の理論も, 突き詰めれば冤罪防止のためのものであると考えられる。」 >''残虐な刑罰の禁止'' 裁判において有罪が確定すると執行される刑は6種類(刑法9条) |死刑|刑事施設内において、絞首して執行(刑法11条)| |拘禁刑|無期及び有期とし、有期拘禁刑は、1月以上20年以下| |~|刑事施設に拘置して所定の作業を行わせたり、必要な指導が行われる(刑法12条)| |罰金|1万円以上(刑法15条)| |拘留|1日以上30日未満。刑事施設に拘置(刑法16条)| |科料|千円以上1万円未満(刑法17条)| |没収|犯罪行為に伴う物の没収(独立して言い渡されないため、「附加刑」という。)| ※過料という言葉も存在するが、「科料」とは別のもので、刑罰には践当しない金銭の制裁であり、科せられても前科等はつかない。 ※2025年6月1日より、懲役刑および禁固刑を統一した拘禁刑が導入されている。 #br 刑罰を科す場合に限り、「意に反する苦役」を課すことが許される。(18条) しかし、残虐な刑罰を科すことは「絶対に」禁止される。(36条) 残虐な刑罰とは、「不必要な糖神的、肉体的苦揃を内容とする人道上残酷と認められる刑罰」(昭和23年6月23日最高裁判決) #br 人の命を奪う死刑は残虐とはいえないのか? (昭和30年4月6日 最高裁判決) 「刑罰としての死刑は、その執行方法が人道上の見地から特に残虐性を有すると認められないかぎり、 死刑そのものをもつて直ちに一般に憲法36条にいわゆる残虐な刑罰に当るといえないという趣旨は,すでに当裁判所大法廷の判示するところである。 現在各国において採用している死刑執行方法は、絞殺、斬殺、銃殺、電気殺、瓦斯殺等であるが, これらの比較考量において一長一短の批判があるけれども,現在わが国の採用している絞首方法が他の方法に比して 特に人道上残虐であるとする理由は認められない。従つて絞首刑は憲法 36 条に違反するとの論旨は理由がない。」 >日本人の死刑観 令和6年10月調査(内閣府実施)における国民の死刑制度に対する国民の意識より抜粋 -死刑制度の存廃について 「死刑は廃止すべきである」16.5% 「死刑もやむを得ない」83.1%。 -死刑を廃止すべきと回答した人の廃止すべき理由 「裁判に誤りがあったとき、死刑にしてしまうと取り返しがつかない」71.0% 「生かしておいて罪の償いをさせた方がよい」53.3% 「国家であっても人を殺すことは許されない」35.0% 「死刑を廃止しても、そのために凶悪な犯罪が増加するとは思わない」26.3% 「凶悪な犯罪を犯した者でも、更生の可能性がある」24.7 「その他」8.7% -死刑もやむを得ないと回答した人の理由 「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」55.5% 「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」62.2% 「死刑を廃止すれば、凶悪な犯罪が増える」53.4% 「凶悪な犯罪を犯す人は生かしておくと、また同じような犯罪を犯す危険がある」48.6% 「その他」9.0% -死刑もやむを得ないと回答した人の将来的な考え 「将来も死刑を廃止しない」64.2% 「状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよい」34.4% -死刑がなくなった場合、凶悪な犯罪が増えると思うかどうか 「増える」71.2% 「増えない」27.7% -終身刑を導入した場合の死刑制度の存廃 「死刑を廃止する方がよい」37.5% 「死刑を廃止しない方がよい」61.8% #endregion ***第十講目の内容 [#rc48e0a4] #region(社会権) ''社会権'' >社会権登場の背景 19世紀末から20世紀初頭にかけて起きた労働運動が発端 社会主義的な国家・経済体制を前提に、労働者の権利として成立 1917年成立のメキシコ憲法が世界で初めて社会権を規定した憲法(ここでいう社会権は、労働者の権利、教育を受ける権利) →「社会権を規定した世界で初めての憲法はワイマール憲法である」は間違い。 #br 生存権を世界で初めて規定した憲法はワイマール憲法であればかろうじて正しい。 →生存権として言及されるワイマール憲法151条1項は直接的には経済的自由権を規定した条項 「人たるに値する生存」という価値が経済的自由権の制約原理となることを表明しているに過ぎない。 ワイマール憲法151条1項(Verfassungen des Deutschen Reichs:Artikel 151) 「経済生活の秩序は、すべての人に、人たるに値する生存を保障することを目指す正義の諸原則に適合するものでなければならない。 各人の経済的自由は、この限度内においてこれを確保するものとする」 (Die Ordnung des Wirtschaftslebens muß den Grundsätzen der Gerechtigkeit mit dem Ziele der Gewährleistung eines menschenwürdigen Daseins für alle entsprechen. In diesen Grenzen ist die wirtschaftliche Freiheit des einzelnen zu sichern.) >社会権の特質 |自由権(消極的権利)|国家が個人の領域に介入することを排除する権利| |社会権(積極的権利)|国に対して社会福祉の実現のため各方面で適切に対応するよう求める権利| →生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、勤労の権利(27条)、労働基本権(28条)として具体化 国に対して具体的な金銭や設備を要求できるのではなく、適切な措置や配慮を求める権利 >生存権とその保障 25条に基づいて「健康で文化的な最低限度の生活」の具体化に向けた積極的な制度設計や法の整備を国に求める権利(生存権)が根拠づけられている。 →国会による立法措置によって具体化される権利 ⇒25 条は国が生活の具体化に向けて取り組むことを保障している。 -関係法令 児童福祉法(1947年)、子ども・子育て支援法(2012年)、障害者総合支援法(2013年)、 生活保護法(1950年)、労働者災害補償保険法(1947年)、国民年金法(1959年)、介護保険法(1997年) >生存権の法的性格 法律上の権利が侵害されれば救済を求められると思いがちだが、 憲法上の権利は条文のみでは救済が受けられない(裁判規範性が認められない)可能性もある。 -プログラム規定説 25条1項は、国民一般が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる条件を整える責務を 国(政府)に課したもので、国政の綱領・指針(プログラム)を宣言したものにすぎない。 --①国民は、直接、生存権規定を根拠として裁判所に訴え出て、具体的給付(生活扶助費)を請求することはできない --②国の生存権配慮義務は、政治的義務に留まる→法的義務はない --③立法ないし国家行為が25条1項違反に違反し、違憲と判断されることはない -抽象的権利説 生存権は、その一般的実現には法律の制定を待たなければならない(個別的立法により具体化する)という意味で、抽象的権利にすぎない。 1~25条1項を根拠にして裁判所に訴え出ることはできない。 2~25条1項だけでは訴訟は起こせないが、個別の法律に基いて裁判で争うことになった場合は、25条1項は裁判規範として機能する。 -具体的権利説 --①個別の法律がなければ国民は具体的給付請求をすることができない。 --②国が 25 条 1 項を具体化する立法をしない場合、国会が生存権を実現する義務を果たさない場合には、 国民は立法の不作為(法律がない状態)が25条1項違反だと裁判所確認してもらう訴訟を提起することができる。→立法不作為の違憲確認訴訟が可能 ||法的権利性|裁判規範性|立法不作為&br;違憲確認訴訟|h |プログラム規定説|×|×|×| |抽象的権利説|○|○|-| |具体的権利説|○|○|○| |>|生存権|h |国の法的義務=国民の法的権利|①立法不作為の違憲確認訴訟が可能な(具体的な)権利| |~|②立法化により具体化する抽象的な権利| |国の政治的義務|①国の指針(プログラム)の対象となるもの| >教育を受ける権利 国に特別支援教育も含めて教育制度を維持し、教育条件を整備し、経済的事情にかかわらず、 現実に教育を受ける機会を持てるような措置(支援)を講ずるように要請 →国民が国等によって教育を受ける権利を侵害されない、国家に対して適切な教育の場を要求できる。 ⇒自由権的側面と社会的側面の両方をもつ権利 学習権:子どもが教育を受けることを通じて人格的に発展する権利 「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の 育成を期して行われなければならない。」(教育基本法1条) #br >義務教育 適切な教育機会を得られなかった場合、その不利益は子ども自身が背負わなくてはならず、 無教育のまま放置される子どもは可能なかぎり救済されなければならないため、 保護者に対して子どもに教育を受けさせる義務を負わせている。 -誰が子どもの教育について責任を負うのか かつては子どもは親の所有物という考えが一般的であったが、 親は子どもの成長を支援しなければならないという考え方へと変化 親ないし親権者には自分の方針に従って自分の子どもを教育する自由が認められる。 →家庭教育の自由、私立学校選択の自由などの親の教育権 とはいえ、家庭環境によって格差が存在することも事実 →(公)教育を受ける権利に関し、誰が責任を持つのかという面から教育内容について決定する権利(教育権)が議論に |国民教育説|親とその負託を受けた教師を中心として教育権を考えるべき| |国家教育権説|国が教育の外的条件整備のみならず、教育内容に関与・決定する権限を有しているべき| >世界人権宣言26条 -1項 「すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。 初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、 また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。」 -2項 「教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。 教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、 かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。」 -3項 「親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。」 >労働者の権利(勤労者の権利) 働きたいという思いと働く能力を持つ人が、働けない場合に、国家に対して労働の機会の提供を要求し、 不可能な場合は相当の生活費を請求する権利→抽象的権利説と同じ考え方 >労働基本権 28条に規定される勤労者とは労働者と同じ意味 |団結権|労働者が労働条件を適正に維持・改善を図るために、使用者と対等な立場で交渉する団体を結成したり、団体に参加したりする権利| |団体交渉権|労働者の団体が、賃金その他の労働条件について使用者と交渉する権利| |争議権|労働者の団体が使用との交渉で有利な労働条件の実現を図るために、争議行為を行う権利。ストライキ、怠業、職場占拠などが含まれる。| >公務員の労働基本権 一般企業の労働者に比べて、公務員の労働基本権は大幅に制限されている。 -自衛隊員、警察職員、消防職員、海上保安庁職員、刑事施設職員については団結権すら認められていない。 -一般職の非現業の職員は職員団体の団結権と団体交渉権の一部が認められている。(交渉はできるが団体協約は締結できない) |主体|団結権|団体交渉権|団体行動権|h |現業公務員|〇|〇|×| |非現業公務員(大臣、知事、議員等を除いた中央省庁と地方公共団体の職員)|〇|△|×| |警察官・自衛官・消防職員・海上保安庁職員・監獄職員|×|×|×| #endregion #region(裁判例) ''裁判例'' >食糧管理法事件(昭和23年9月29日 最高裁判決) 戦後の食糧難の時代に、ヤミ米を購入し自宅に運搬する途中で検挙され、食糧管理法違反で起訴されたものが、 不足食糧の購入・運搬は憲法 25 条によって保障された生活権の行使として主張した事件 食糧管理法は「国民全般の福祉のため、能う限りその生活条件を安定せしめるための法律であって、 まさに憲法第25条の趣旨に適合する立法であると言わなければならない」 →非正規ルートでの食糧の購入・運搬を禁止する同法を合憲とした。 >朝日訴訟(昭和42年5月24日 最高裁判決) 原告朝日茂は結核のため、単身、無収入であり、生活保護法によって医療扶助と生活扶助(月額600円の日用品費)を受けていた。 その後、朝日さんには兄がいたことがわかり、1500円の仕送りを受けることになった。 その結果、国は 1500 円から日用品費600円を引いた900円を医療費として自己負担をさせる決定をしたが、 これを不服とし、憲法25条に違反するのではないかと訴えた事件 原告の朝日茂は裁判途中で死去 #br -裁判所の見解の要旨(昭和42年5月24日最高裁判決) 憲法25条は個々の国民に具体的権利を付与したものではない。 何が「健康で文化的な最低限度の生活」であるかという判断は厚生大臣の裁量に委ねられる。 ただし、著しく低い基準を設定し、あるいは法律によって与えられた裁量権の限界を超えた場合は、 違法行為として司法審査の対象になると判断。 >堀木訴訟(昭和57年7月7日 最高裁判決) 内縁の夫と離別後独力で次男を養育していた全盲の障害者堀木フミ子は障害者福祉年金を受給していたが、 同時に寡婦として子を養育していたため、1970(昭和45)年に兵庫県知事に対して児童扶養手当の受給資格の認定を請求したところ、 児童扶養手当法(当時)の併給禁止規定に該当するとして却下された。異議申し立ても却下されたため、 併給禁止規定が憲法14、25、13条に違反して無効であると訴えた事件。 #br 「憲法25条の規定は、国権の作用に対し、一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものである。 しかも、右規定にいう『健康で文化的な最低限度の生活』なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、 その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において 判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たつては、国の財政事情を無視することができず、 また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。 したがつて、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、 それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。」 と判断し、訴えを棄却した。 >旭川学力テスト事件(昭和51年5月21日 最高裁判決) 「2つの見解はいずれも極端かつ一方的であり、そのいずれをも全面的に採用することはできない ......親の教育の自由は、主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられるし、 また、私学教育における自由や前述した教師の教授の自由も、それぞれ限られた一定の範囲においてこれを肯定するのが相当であるけれども、 それ以外の領域においては、一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定、実現すべき立場にある国は、 国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、あるいは 子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、 必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有するものと解さざるをえず、 これを否定すべき理由ないし根拠は、どこにもみいだせないのである。」 →折衷的な形で決着をつけている。 >全農林警職法事件(昭和48年4月25日 最高裁判決) 1958(昭和33)年に内閣が衆議院に提出した警察官職務執行法の一部を提出を改正する法律案に対し、労働運動抑圧の危険が大きいとして 労働団体の反対運動が起こり、農林省(当時)職員で構成される全農林労働組合もこの運動に参加することになったところ、 同組合の役員らが、勤務時間内の抗議行動をそそのかしたことが、国家公務員法98条5項(現2項)に違反するとして起訴された事件。 最高裁は以下のような判決を述べて、有罪とした。 -合憲の理由の要点 --公務員の地位の特殊性と職務の公共性 --財政民主主義 --勤務条件法定主義 --市場原理による抑制の欠如 --人事院等の代替措置の存在 #br 「公務員は、私企業の労働者と異なり、国民の信託に基づいて国政を担当する政府により任命されるものであるが、 憲法15条の示すとおり、実質的には、その使用者は国民全体であり、公務員の労務提供義務は国民全体に対して負うものである。 もとよりこのことだけの理由から公務員に対して団結権をはじめその他一切の労働基本権を否定することは許されないのであるが、 公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、 十分合理的な理由があるというべきである。...... 公務員の場合は、その給与の財源は国の財政とも関連して主として税収によつて賄われ、私企業における労働者の利潤の分配要求のごときものとは全く異なり、 その勤務条件はすべて政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮により適当に決定されなければならず、しかもその決定は民主国家のルールに従い、 立法府において論議のうえなされるべきもので、同盟罷業等争議行為の圧力による強制を容認する余地は全く存しないのである。」 「公務員が政府に対し争議行為を行なうことは、的はずれであつて正常なものとはいいがたく、 もしこのような制度上の制約にもかかわらず公務員による争議行為が行なわれるならば、 使用者としての政府によつては解決できない立法問題に逢着せざるをえないこととなり、 ひいては民主的に行なわれるべき公務員の勤務条件決定の手続過程を歪曲することともなつて、 憲法の基本原則である議会制民主主義(憲法41条、83条等参照)に背馳し、国会の議決権を侵す虞れすらなしとしないのである。」 「私企業においては、極めて公益性の強い特殊のものを除き、一般に使用者にはいわゆる作業所閉鎖(ロツクアウト)をもつて争議行為に 対抗する手段があるばかりでなく、労働者の過大な要求を容れることは、企業の経営を悪化させ、企業そのものの存立を危殆ならしめ、 ひいては労働者自身の失業を招くという重大な結果をもたらすことともなるのであるから、労働者の要求はおのずからその面よりの制約を免れず、 ここにも私企業の労働者の争議行為と公務員のそれとを一律同様に考えることのできない理由の一が存するのである。 また、一般の私企業においては、その提供する製品または役務に対する需給につき、市場からの圧力を受けざるをえない関係上、 争議行為に対しても、いわゆる市場の抑制力が働くことを必然とするのに反し、 公務員の場合には、そのような市場の機能が作用する余地がないため、公務員の争議行為は場合によつては一方的に強力な圧力となり、 この面からも公務員の勤務条件決定の手続をゆがめることとなるのである。」 「その争議行為等が......制約を受ける公務員に対しても、......法は、これらの制約に見合う代償措置として 身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、 さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。」 「公務員の行なう争議行為のうち、同法によつて違法とされるものとそうでないものとの区別を認め、 さらに違法とされる争議行為にも違法性の強いものと弱いものとの区別を立て、 あおり行為等の罪として刑事制裁を科されるのはそのうち違法性の強い争議行為に対するものに限るとし、 あるいはまた、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして、 国公法上不処罰とされる争議行為自体と同一視し、かかるあおり等の行為自体の違法性の強弱または社会的許容性の有無を論ずることは、 いずれも、とうてい是認することができない。......このように不明確な限定解釈は、かえつて犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり、 その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存するものといわなければならない。」 #endregion ***第十一講目の内容 [#dedbe494] #region(選挙と参政権) ''選挙と参政権'' -国民主権: 国家権力が正統である事の根拠は、神や国王ではなく国民にあるという事と、政治のあり方を決める最高の権威は国民にあるという事 -間接民主制(代表民主制) 国民の中から代表者を選び、その代表者が国民に代わり国政を担当するという仕組み >国民の代表としての国会 43条では議員は国民の代表とされるが、代表とはどのような意味か |国民代表(独立代表)|議員は国民の代表として国民全体の利益のために活動し、誰の意思にも拘束されないという考え| |地域代表(委任代表)|選ばれた地域の代表として、地域の利益のために活動し地域の意思に拘束されるという考え| |>|>|近代選挙の原則|h |原則|説明|条文|h |普通選挙|国籍と年齢以外に有権者資格に制限を設けないことを要請|15条3項| |平等選挙|1人1票の原則と、1票の価値の平等を要請|14条、44条| |秘密選挙|誰がどの候補者・政党に投票したのかわからないようにすることで自由意思に基づいた投票を可能とさせることを要請|15条4項前段| |直接選挙|有権者が直接代表を選ぶことを要請|15条1項| |自由選挙|外部からの干渉を受けることなく投票権を行使する、しないを決定できるよう要請|15条後段| >参政権と選挙権 参政権とは、公権力の行使のあり方を決定する過程に参加する権利 ※広い意味での参政権には公務員就任権、被選挙権、請願権(16条)なども含まれる。 国民主権の原理からして最も重要なものが選挙権(15条1項) →選挙権の制限は例外的にしか認められない。 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件(平成17年9月14日 最高裁判決) 1998年の公職選挙法の改正まで外国に居住している日本人(在外邦人)は国政選挙で投票することが 一切できず改正後も衆議院と参議院の比例代表選挙のみしか投票が認められなかったことの合憲性が争われた事案 「自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として、 国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を 制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。 そして、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが 事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、上記のやむを得ない事由があるとはいえず、 このような事由なしに国民の選挙権の行使を制限することは、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書に違反するといわざるを得ない。」 最高裁は上記の判断基準を用いて、 -19%年の衆議院議員総選挙時に在外邦人に投票をまったく認めていなかったことが違憲であり、 -遅くとも本判決以降に行われる選挙時点で在外邦人に一部しか投票を認めないことは違憲であると判断した。 →この判決後、国会は法改正を行い、現在は国政選挙全体について在外投票が可能となっている。 >衆議院議員の選挙制度 小選挙区比例代表並立制 |衆議院議員の定数(合計)|465|h |小選挙区|289| |比例代表|176| -小選挙区選挙 1つの選挙区から1人の議員を選出する。 有権者は投票したい候補者の名前を投票用紙に記載して投票する。 選挙区ごとに相対的多数を獲得した候補者1名が当選する。 -比例代表選挙 全国を11のブロックに分け、ブロックごとに各党が獲得した得票率に応じて議席を配分する。 予め政党が当選させたい候補者の順番を決めて名簿に載せておく(拘束名簿式) 有権者は投票したい政党の名前を投票用紙に記載して投票する。 ブロックごとの得票率に応じて各政党に議席を配分し、名簿の順位が上位の者から当選する。 政党に所属している候補者に限って、小選挙区と比例区の両方に立候補が可能(重複立候補) 重複立候補者は比例名簿に同一順位で並べることができ、惜敗率の高い者から当選する。 ※惜敗率⋯最多投票者の得票数に対する当該落選者の得票数の割合 >参議院議員の選挙制度 選挙区選挙と比例代表選挙 |参議院議員の定数(合計)|248|h |選挙区|148| |比例代表|100| -選挙区選挙 原則、都道府県を単位とした選挙区から複数の議員(2~12)を選ぶ。 3年ごとの半数改選なので、実際には 1 回の選挙では上記の半数の議員を選ぶ。 有権者は投票したい候補者の名前を投票用紙に記載して投票するが、選挙区の定数によって小選挙区制になる場合と大選挙区制になる。 -比例代表選挙 全国を1つの選挙区として各党が獲得した得票率に応じて議席を配分する。 政党が用意する候補者の名簿には順番がない(非拘束名簿式) 有権者は投票したい政党の名前か候補者個人の名前のどちらかを投票用紙に記載して投票する。 政党名での得票と個人名での得票を合計した得票数に応じて各政党に議席を配分し、個人名での得票数が多かった順に当選が決まる。 #br 【特定枠】 2019年の選挙より参議院比例代表選挙に導入された制度 政党内の当選者を決める際に、予め特定枠として順位をつけられた候補がいれば、個人名での得票に関わらずその候補から当選する仕組み ||衆議院|参議院|h |選挙権|>|満18歳以上の日本国民| |被選挙権|満25歳以上の日本国民|満30歳以上の日本国民| |定数|465|248| |選挙方法|【小選挙区】&br;全国289選挙区から289人を選出 選挙区 原則都道府県を単位とした選挙区から148人を選出|【選挙区】&br;原則都道府県を単位とした選挙区から148人を選出| |~|【比例代表区】&br;全国11ブロックから175人を選出&br;拘束名簿式、重複立候補可能|【比例代表区】&br;全国から100人を選出&br;非拘束名簿式(特定枠あり)、重複立候補不可能| |投票方法|1人2票のうち、1票を小選挙区で候補者名で投票&br;1票は比例代表区で政党名で投票(どちらの場合も自書)|1人2票のうち、1票を選挙区で候補者名で投票&br;1票は比例代表区で候補者名または政党名で投票(どちらの場合も自書)| |任期|4年、ただし解散あり|6年、解散なし、3年ごとの半数改選| >ドント式 ドント式とは、各政党が獲得した票を1から順に割っていき、その商の大きい順に定数を満たすまで配分する方式 衆議院、参議院ともに比例代表区の議席配分にはドント式を用いる。 -例 |定数:6|÷1|÷2|÷3|÷4|÷5|h |あ党:8000票|&color(Red){8000};|&color(Red){4000};|&color(Red){2667};|1600|1600| |い党:6000票|&color(Red){6000};|&color(Red){3000};|2000|1500|1200| |う党:4000票|&color(Red){4000};|2000|1333|1000|800| >1票の較差をめぐる問題 1票の較差とは、選挙において有権者の持つ1票の重み(価値)の不平等のこと 較差の計算には最大最小比を用いる。 -平等選挙と議員定数不均衡問題 1票の価値に関して最高裁判所は投票価値の平等は憲法上の要請ではないという立場 →「選挙権の内容、すなわち、各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである」と変化 選挙区ごとに選出される議員の数が人口に比例していない場合に、1票の較差が起きるため、1票の較差の問題は議員定数不均衡ともいわれる。 >定数訴訟と裁判所の考え方 最高裁は1票の較差問題に対し、「投票価値の平等は憲法上の要請」としつつも、「選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準」ではなく、 「原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきもの、と述べている。 →人口比例以外の政策的・技術的要素を考慮することを容認 技術的要素として、都道府県、従来の選挙の実績、選挙区としてのまとまり具合、 市町村その他の行政区画、面積の大小人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などがあげられている。 衆議院については 3.18倍を違憲状態と判断し、2.82倍を合憲と判断→3倍を目安にしていると考えられている。 参議院については 6.59倍を違憲とし、5.85倍を合憲と判断→6倍を目安にしていると考えられている ⇒直近では衆議院では 2.13倍、参議院では 4.77倍を違憲状態と厳しい判断をしている。 #br -違憲判決と選挙の効力 1票の較差が違憲状態、違憲と選挙が判断された場合、選挙を無効とすると大きな混乱が発生する。→違憲(状態)だが選挙は無効ではないという判断をする。 1票の較差をめぐる問題は国会で十分に議論されず、対応も不十分であることが多かったため、国会による自浄作用は期待できないという立場から、 意見無効判決を出すべきという最高裁判所裁判官もいる。 #endregion #region(多数決は正しいのか?) ''多数決は正しいのか?'' -例 Aさん、Bさん、Cさんの3人から代表を選ぶ。 1人1票、1~3位の順番をつけて投票する。 ||9票|8票|7票|h |1位|Aさん|Cさん|Bさん| |2位|Bさん|Aさん|Cさん| |3位|Cさん|Bさん|Aさん| 多数決ではAが9票で代表に選ばれるが、よく考えると、Aさん<Cさん:8+7=15、 Cさん<Aさん:9となり実は、AさんよりCさんの方が良いと思っている人の方が多い。 #hr -コンドルセのパラドクス 2人づつの組み合わせで投票をするとどうなるのか。 #br A<C 9:15 C<B 8:16 B<A 7:17 #br A<C<B<A<C<B⋯⋯ #br ・・・・結局誰が一番か決められないため決定ができない。 強制的に選択肢を 2 つにしてしまうと・・・?→細かくルールを決めておかなければ混乱が起きる。 個人の選好を集団の意思に集計する手続きの前に、何らかの形で選択肢を2つに制限しておかなければ、多数決の結果は安定しない可能性が高い。 ⇒これが正しい、完璧な制度というものは存在しない。 #hr -オストロゴスキーのパラドクス 選挙の投票先を支持する政党で選ぶのか、政策で選ぶのか。 |有権者|消費税|憲法改正|子育て支援|支持政党|h |A|自民|自民|立民|自民| |B|自民|立民|自民|自民| |C|立民|自民|自民|自民| |D|立民|立民|立民|立民| |E|立民|立民|立民|立民| |多数決の結果|立民|立民|立民|自民| #endregion ***第十二講目の内容 [#q7aee0bb] #region(国会) ''国会'' >国会の地位・憲法上の国会の位置づけ 国会は「国権の最高機関」(41条)と位置づけられている。 →立法、司法、行政のうち、唯一国民から選ばれているため、国会が中心的存在であることを意味するもの。 |政治的美称説|「国権の最高機関」とは政治的な意味であって、法的な意味はなく、&br;主権者である国民の代表で国会が構成されていることを強調している表現に過ぎないという考え |統括機関説|国会が国政の統括機関に位置づけられており、&br;国権の発動については、他の二権は国会の意思に従わなければならないという法的効果があるという考え&br;→明治憲法下における天皇の地位に国会が取って代わったというイメージ| |総合調整機関説|三権の中心機関として、円滑な国政運営ができるように法的意味を持つが、&br;他の二権に上位しているわけではなく、調整機能を果たしていると考える。| ※国権=国家権力あるいは国家の統治権=立法、司法、行政といった国家がもっている権力をすべて合わせたもの #br -唯一の立法機関とは 実質的意味の立法:法律の形式をとる法規範 |国会中心立法の原則|国会による立法以外の実質的意味の立法は、憲法上の例外を除き、許されない。| |国会単独立法の原則|国会による立法は、国会以外の機関の関与を必要としないで成立する。&br;→衆議院、参議院、両議院の議決のみで法律が成立する(59条1項)| -憲法上の例外 政令(73条)、条例(94条)、衆議院規則・参議院規則(58条)、最高裁判所規則(77条) 特定の地方自治体のみに効果を及ぼす法律の制定には、当該自治体の住民投票により過半数の賛成を得なければ成立しない☞地方自治特別法 |>|権能|h |国会の権能|法律案の議決権(59条)| |~|内閣総理大臣の指名権(67条)| |~|予算の議決権(73条5号)などの財政監督権(83条)| |~|条約承認権(73条3号但書・61条)| |~|弾劾裁判所の設置権(64条)| |~|憲法改正の発議権(96条)| |~|内閣の報告を受ける権能(72条・91条)| |~|皇室財産授受の議決権(8条)| |議院(ハウス)の権能|会期前に逮捕された議員の釈放要求権(50条)| |~|議員の資格争訟の裁判権(55条)| |~|議長などの役員選任権(58条1項)| |~|議員の懲罰権(58条2項本文後段)| |~|国政調査権(62条)| |議員(メンバー)の権能|議案の発議権| |~|動議の提出権| |~|質問権| |~|質疑権| |~|表決権| 議案:議院の審議・議決の対象となるもの 動議:一定の事項を議題とすることを求めること |>|国会議員の待遇|h |歳費を受ける権利(49条)|「議員は一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く)より少なくない歳費を受ける」(国会法35条)&br;月額129万4千円(「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」)| |不逮捕特権(50条)|会期中であれば所属する議院の許諾なしに逮捕されない。院外での現行犯逮捕は除く。| |免責特権(51条)|議院における自由な言動を保障するため、演説、表決などに対する刑事事件や民事責任を院外で問われないこと| |>|>|議案の種類|h ||内閣提出|議員提出| |両議院で送付関係|予算,法律案,条約|法律案| |両議院で別々に議決|決算|両議院の議決を要する規程案| |一議院だけで議決|議員逮捕の許諾権|決議案、議院規則案| 議案とは、憲法や国会法、議院規則等に出てくる用語だが実は明確な定義がない。 両議院または一つの議院で議決されるもので案をそなえているもの、と考えられている。 |項目|衆議院|参議院|h |定数|465|248| |任期|4年&br;解散すれば地位を失う。|6年&br;3年ごとに半数改選| |選挙権|>|18歳以上の日本国民である男女| |被選挙権|25歳以上の日本国民である男女|30歳以上の日本国民である男女| |選挙区|小選挙区289名&br;比例代表176名|選挙区148名&br;比例代表100名| |解散|あり|なし| |>|法律案の審議方式|h |本会議中心主義|法律案の審議の中心が、全議員が集まる本会議で行われる方式&br;三読会制と呼ばれる方式をとり、第一読会で法案の趣旨説明を行い、第二読会では逐条審議、第三読会では法案の採決が行われる。| |委員会中心主義|法律案の審議の中心が、少数の議員からなる委員会で行われる方式&br;法律案の審査だけでなく、委員会にも法律案の提出権があるなど委員会の権限が強い。| |>|法律案の種類|h |内閣提出法案|内閣が提出する法律案&br;省庁の官僚が原案を作成する。| |議員提出法案|国会議員が国会へ提出する法律案&br;衆議院議員が提出する衆議院議員提出法案と参議院議員が提出する参議院議員提出法案とにわかれる。| ※衆議院では20名以上、参議院では10名以上の賛成がないと提案することができない。予算を伴う場合はそれぞれ50名、20名以上の賛成が必要(国会法56条) ※衆議院には機関承認も必要 ※最初に議案が提出された議院を先議院と呼ぶ。 |>|常任委員会と特別委員会|h |常任委員会|国会法によって国会に常設されている委員会。定例日(開催される日)が決まっている。| |特別委員会|各議院の議決によって設置される委員会。定例日(開催される日)は決まっていない。| ※特別委員会の例:北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会(25人) >二院制 二院制:上院と下院という2つの議院によって構成されている議会構造 |貴族院型|門地、身分、財産などを基礎として、世襲、互選又は任命によって上院議員を選任するもの。ただし、下院の優越を認めている。| |連邦型|連邦を構成する各州または各民族を代表する議員によって構成されるもの。| |参議院型|複雑で多様な国民の意見を反映させるため、下院と同様に国民によって直接又は間接に選挙された議員で構成されるもの。| -二院制の意義 --民意の正確な反映 選挙制度の欠陥から、一院制の議会だけでは民意が正しく反映できないため、第二院に多様な民意を反映させる役割をもたせる。 --慎重な審議 1つの問題について2度審議をすることでより慎重な審議が可能 #br -二院制の採用状況(IPU(列国議会同盟)加盟国193ヶ国中の割合) 一院制⋯114ヶ国(約59%) 二院制⋯79ヶ国(約40%) >衆議院の優越 予算の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名の際に衆議院と参議院の議決が異なった場合は、衆議院の議決が国会の議決となる。 条約案は参議院先議の場合、60条2項の30日ルールは適用されない。 内閣不信任決議案は衆議院にのみ認められている。 参議院の問責決議案には法的効果はない。 -法律案の場合 衆議院で可決された法案が参議院で否決された場合、衆議院において3分の2以上の議員が賛成して可決されれば法律案は成立する。 →ねじれ国会の原因 >両院協議会 衆議院と参議院の議決が異なった場合に、両院の意思を調整するための制度 ◆憲法上必ず開催しなくてはいけない場合(60条第2項、67条第2項)⇨予算案の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名で、衆参両院の議決が異なった場合 ◆憲法上必ずしも開催しなくてよい場合(59条第3項)⇨法律案で衆参両院の議決が異なった場合 -両院協議会の構成と議決方法 衆参の代表者10名で構成され、出席議員の3分の2以上の多数で議決された場合、成案となる。 |>|国会の種類|延長(国会法12条)|h |常会(52条)|毎年1回1月に召集される定例の会期。開会日数は150日|延長は1回まで| |臨時会(53条)|内閣の決定、またはいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合に召集される会期。&br;衆議院の任期満了による総選挙または参議院通常選挙が行われたのち、新議員の任期の始まる日から30日以内に召集される会期。|延長は2回まで可| |特別会(54条1項)|衆議院の解散による総選挙が実施された場合に、総選挙の日から30日以内に召集される会期|延長は2回まで可| |一事不再議の原則|会期不継続の原則|h |会議で一度否決された議案は同じ会期中は原則として提出できない。|国会の意思は会期ごとに独立しているという考え方に基づく原則。&br;会期末までに本会議で議決されなかった法律案は全て審議未了として廃案になる。| >国会審議と時間 投票が始まって、0時までに終わらなければ投票が無効になる。 会期不継続の原則があるため、会期末までに法案が成立しなければ、次の会期に法案を再提出しなければならない。 →国会には時間の余裕があまりない⇒可処分時間が少ない -牛歩戦術 議員が投票を行う際に、時間をかけて投票し、法案の成立を妨害する手段 ある法案の成立を防止したい、遅らせたい場合に、委員会委員長の解任決議案等を連発して、その都度牛歩を行って、時間を浪費させる。 投票が始まると、議場(本会議場)は閉鎖され、投票が終わるまでは議員は外に出ることが出来ないし、入ることも出来ない。 #endregion ***第十三講目の内容 [#ce7a1658] #region(内閣) ''内閣'' 内閣とは、総理大臣と国務大臣によって構成される合議体である。 -内閣の成立までの流れ 国会による内閣総理大臣の指名(67条)→指名された者による国務大臣の任命(68条1項)→天皇陛下による首相の任命(6条) 「内閣は、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣をもつて、これを組織する。」(内閣法2条) 「前項の国務大臣の数は、十四人以内とする。ただし、特別に必要がある場合においては、 三人を限度にその数を増加し、十七人以内とすることができる。」(内閣法2条2項) 「国際博覧会推進本部が置かれている間における第二条第二項の規定の適用については、前項の規定にかかわらず、 同条第二項中「十四人」とあるのは「十六人」と、同項ただし書中「十七人」とあるのは「十九人」とする。」(内閣法付則3) -内閣が終了する場合(総辞職) --内閣が総辞職すべきと考えたとき --衆議院による内閣不信任案の可決、内閣信任案の否決(69条)→10日以内に衆議院が開催されない場合 --首相の死亡など、首相が欠けたとき(70条) --衆議院総選挙の後に初めて国会が招集されたとき(70条) >内閣総理大臣の地位 明治憲法では、国務大臣と対等の地位⇨同輩中の首席 →軍部が主務大臣を通じて、政策決定に影響力を行使していた。 |>|権限|根拠条文|h |国務大臣の任免権|国務大臣を任免し、任意に罷免できる。|68条| |内閣の代表権|内閣を代表して、議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告し、行政各部を指揮監督する。|72条| |法律・政令の署名および連署|主任の国務大臣として署名することがあるほか、主任の国務大事の署名とともに連署する。|74条| |国務大臣の訴追に対する同意権|国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追(検察官の公訴提起)されない。&br;但し訴追の権利は害されない。同意を与えるか否かは内閣総理大臣の裁量による。|75条| |議院出席権|議案については発言するために議院に出席することができる。その他の国務大臣も同様。|63条| |>|内閣の意思決定の種類|h |閣議決定|憲法及び法律により内閣の意思決定が必要とされる事項や、法令上規定がない場合でも特に重要な事項について決定| |閣議了解|各府省所管に属する事項で他府省にも関係するなどその及ぼす影響に鑑み、閣議において意思決定しておく必要のある事項ついて決定| |閣議口頭了解|関係閣僚会議の設置や特殊法人などの人事に関することなどで、閣議書を作成せず口頭で了解する事項ついて決定| >閣議が開催される場所 通常国会(常会)が開会中は国会内の閣議室で開催し、その他は総理官邸の閣議室で開催する。 閣議で扱われる内容は事前に全て決まっており、予定に沿って粛々と進む。 -閣僚懇談会 閣議後に行われる各大臣がその所管に拘らず、国務大臣としての立場から自由で忌憚のない意見交換を行う場 ※閣議、閣僚懇談会は原則非公開 |>|内閣の権限|h |法律の誠実な執行と国務の総理|内閣は、自らが違憲と判断する法律をも誠実に執行する義務がある。内閣には違憲審査権がないため。| |外交関係の処理|条約締結以外の外交事務も内閣が処理する。| |条約の締結|内閣が条約を締結する。但し国会の承認が必要。| |官吏に関する事務の掌理|国の行政権の活動に従事する公務員の人事行政事務を行う。| |予算の作成と国会への提出|内閣が予算を作成・提出するが、国会の審議・議決が必要である。| |政令の制定|行政機関が制定する命令のうち、政令は内閣が制定する。但し、政令には、特に法律の委任がある場合を除いて、罰則を設けることはできない。| |恩赦の決定|恩赦には天皇の認証も必要| 内閣は行政権の主体ではあるが、行政権とは何を指すのだろうか。 行政権とは立法権(41条)、司法権(76条)と同様に「実質的意味の行政権」を指す。 「実質的意味の行政権」とは、「行政権とは全ての国家作用のうちから立法作用と司法作用を除いた残り全ての作用」とされる。→控除説 国家権力-(司法権+立法権)=行政権 >独立行政委員会 内閣からある程度独立して職務を行う機関 |特徴|担当する分野が非政治性や専門性が要求されるもの| |~|委員の身分保障が手厚いこと| |~|委員会の権限に準立法権や準司法権が含まれること| 例:人事院、公正取引委員会、原子力規制委員会...など ☞行政に民意を反映させるとともに、政治的中立の立場から公正に行うことが目的とされる。 #br 独立行政委員会の存在が違憲であるかどうかが議論されているが、通説は合憲 「いくら独立しているとはいえ、内閣による一定の統制を受けること」「憲法上、内閣に行政権が専属するとは規定されていないから」...が主な理由 →65条には「唯一」、「すべて」と書かれていないため >議院内閣制と大統領制の特徴 執政制度とは「民主主義の政治体制において行政部門のトップリーダー(執政長官)をどのように選出し、 立法部門である議会や国民とどのような関係の下におくのかについてのルール」 #br -執政の選出と解任 議院内閣制では、首相は議会によって選ばれる。 議会の解散や不信任決議案の可能性があり、首相が頻繁に変わる可能性がある為、議会を無視して首相が強いリーダシップを発揮することは難しい。 #br 大統領制では、大統領と議会は国民から直接選ばれる。 大統領の任期は固定であり、あらゆる権力が大統領に集中しており、大統領が一人で様々な決定ができる。 議院内閣制の方が政治責任の所在が明確になっていて、政治責任を簡単に追求することができる仕組み 大統領は辞めさせられる可能性がないため、自分の考えに従って強いリーダシップを発揮し、効率的に政策を実現できる。 #br -議会(立法権)との関係 --議院内閣制 法律案は内閣、議員が提出できる。法律案の審議は政府と議員で進める。 --大統領制(アメリカの場合) 法律案は議員のみが提出できる。→立法権は議会にしかない。 法律案の審議は議員だけで進める。 大統領は議会に教書を送ることができる。 大統領は拒否権を持っており、議会で可決された法案の施行を拒否することができる。 【アメリカの立法過程概観】 ①上院と下院で可決される ②可決された法律案は大統領に送付される ③大統領は法案の送付を受けてから日曜日を除き10日以内に署名した場合、その法案は法律となる。 もし大統領が法案を承認しないときは、その理由を付して発議した議院に還付する。(大統領は拒否権を持っている) ④還付された法案は、両議院で席議員の3分の2の多数をもって、その法案の通過を可決したときは法律となる。 >責任本質説と均衡本質説 議院内閣制の本質がどこにあるのか、どのように解釈すべきかという議論 |責任本質説|議院内閣制の本質は、内閣が議会に対して政治的責任を負うと考える考え方&br;内閣に議会の解散権があるかどうかは議院内閣制とは関係ないと考える。| |均衡本質説|議会の不信任決議に対抗して内閣に解散権があることで、議会と内閣が均衡することこそ議院内閣制の本質であるという考え方| #endregion ***第十四講目の内容 [#g185fb0e] #region(司法権と裁判制度) ''司法権と裁判制度'' >''司法権の概念と範囲'' 当事者間に具体的事件に関する紛争が存在する時、当事者からの争訟の提起を前提として、 独立の裁判所が統治権に基づき、一定の争訟手続きによって、紛争解決のために何が法であるのかを判断し、正しい法の適用を保障する作用 →具体的な争訟について法を適用し、宣言することによってこれを裁定する国家作用 民事事件、刑事事件の裁判権の他に行政事件の裁判権までを含む。 >裁判の対象になるためには 「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。」(裁判所法3条) 法律上の争訟とは「①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②法律の適用によって終局的に解決できるもの」 →①権利義務関係や法律関係のあるなしの争いがあって、②しかもその争いが法律を適用することで解決するもの |司法権の限界(司法権が対象としないもの)|例|h |憲法が認めた例外|国会議員の資格訴訟の裁判、裁判官の弾劾裁判| |国際法上の例外|外交官等に対する治外法権や条約による裁判権の制限| |国会や内閣の自由裁量行為についての例外|国会内部での議事手続や議員の懲罰| |統治行為論による例外|衆議院の解散の効力、安保条約の合憲性| |団体の内部事項に関する行為についての例外|政党の除名処分の違法性| >裁判 「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」(憲法32条) 自らの実力を用いて権利の回復を図る「自力救済」は認められないため、裁判によって紛争を解決する必要がある。 裁判とは国家機関である裁判所が公正・中立的な立場で、社会で生じる個々具体的な事件や紛争を法に基づいて強制的に解決すること →裁判所は公平かつ適正な裁判を通して、不法な侵害から国民の権利と自由を守り、社会の正義を実現している。 -民事裁判 私人間の生活関係に関して生じる法的争いを裁判所が私法を適用して解決するための裁判 原告(訴える人)も被告(訴えられる人)どちらも私人 裁判は民事訴訟法に定められている手続に沿って進む。 -刑事裁判 犯罪を行ったと疑われる人が有罪か無罪かどうかを審理し、有罪であればその人にどのような刑罰を科するのかを決定するための裁判 裁判は刑事訴訟法に定められている手続に沿って進む。 被疑者:警察や検察などの捜査機関から犯罪の疑いをかけられ捜査の対象となっている者で、まだ起訴されていない者 被告人:捜査機関によって犯罪の疑いをかけられ、検察官から起訴された者 >三審制とは 当事者が望めば1つの事件につき原則として3回までの反復審理が受けられる という制度 慎重に審理を重ねることによって、裁判の誤りを防止し、人権を保護することができる。 上級の裁判所による法令解釈の統一を図ることが目的 第一審:事件の内容によって、簡易裁判所、地方裁判所あるいは家庭裁判所で行われる。 第二審:第一審の裁判所の判決に不服がある場合、第二審の裁判所に不服申立てが可能→控訴 第三審:最高裁判所 //制度 &uploader(edb5cca0b14c3cdc94b1ca14c114892695f3ca83_nichidaibunrigojokai_4,nolink); //配置 &uploader(5ce121587e6dbe6744a2c3946c2ecc1546e16b97_nichidaibunrigojokai_5,nolink); |上告|民事訴訟法上は原判決に対し憲法その他の法令違反だけを理由として許される不服申立て&br;刑事訴訟法上は、一般に高等裁判所が下した第一審または第二審の判決に対する上訴のこと| |特別抗告|特別上訴の1つで、民事訴訟法上では、憲法違反を理由とする抗告のこと| |控訴|判決に対する第二審への上訴| >組織 -最高裁判所 東京都に設置されている。 最高裁判所長官と14人の最高裁判事によって構成 裁判は3人以上の裁判官で構成する小法廷か、15人全員で構成する大法廷において行われる。 【大法廷と小法廷の違い】 ①当事者の主張について、法律・命令・規則などが憲法に適合するかしないかを判断するとき ②憲法その他の法令の解釈適用について、意見が以前に最高裁の下した裁判に反するときなど →大法廷で審理、裁判をすることが必要とされる。大法廷で開催される場合、判例が変更される可能性があるため注目される。 #br -高等裁判所 下級審の中の最上位の裁判所であり、全国に8ヶ所設置されている。 高等裁判所長官および判事によって構成されている。 高等裁判所における裁判は原則として3人の裁判官で構成された合議体で行う。 ただし、内乱に関する事件の裁判については5人の裁判官で構成された合議体で行う。 #br -地方裁判所 全国に本庁が50ヶ所、支部が203ヶ所あり、各都道府県に1つずつ、北海道に4ヶ所設置されている最も原則的な第一審裁判所 他の裁判所が第一審専属管轄を有する特別なものを除いて、第一審事件のすべてを裁判することができる。 地方裁判所では、原則1人の裁判官が事件を取り扱う。 簡易裁判所の判決および命令に対する抗告事件および重要な案件や他の法律において定められた案件については3人の裁判官の合議体で行う。 #br -家庭裁判所 全国で本庁が50ヶ所、支部が203ヶ所あり、それぞれ地方裁判所とその支部の所在地と同じ場所にあり、 その他、特に必要性の高いところに家庭裁判所出張所が設けられている。 原則、1人の裁判官が事件を取り扱う。 簡易裁判所:全国の主要・中小都市を中心に全国に438ヶ所設置。 1人の裁判官が事件を取り扱う >権限 -最高裁判所 「最高裁判所は一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかどうかを判断、決定する違憲立法審査権を有する」(憲法81条) 高等裁判所の第二審判決に対する上告、訴訟法において特に定める抗告(特別抗告)などについての裁判権を有する。 #br -高等裁判所 民事事件に関して地方裁判所が第一審である事件および家庭裁判所の判決の控訴審、地方裁判所が第二審である事件の上告審の裁判権を有する。 刑事事件に関しては簡易裁判所、地方裁判所の第一審判決に対する控訴審であり、例外的に、 内乱に関する罪や、特に他の法律で高等裁判所に出訴すべきものと定められている事件の第一審事件を扱う。 東京高等裁判所は公正取引委員会や特許庁のような準司法機関の審決に対する取消訴訟については第一審裁判権を有している。 #br -地方最高裁判所 |民事事件|訴訟の目的の価額が140万円を超える場合| |刑事事件|簡易裁判所が第一審裁判権を有しない事件| 簡易裁判所の民事の判決に対する控訴事件および簡易裁判所の判決および命令に対する抗告事件について裁判権を有している。 #br -家庭裁判所 一般の民事・刑事事件を審判する裁判所ではなく、主として家庭事件(家族・相続)に関する事件や少年法で定める少年保護事件の審判を取り扱う。 原則、民事・刑事の訴訟事件を審理する権限を有さず、民事事件では家事審判と家事調停のみ権限とし、その裁判手続によらず非公開の審判又は調停の形で行われる。 家庭裁判所の下した決定・命令に対しては高等裁判所に抗告することができる。 地方裁判所と同格の下級裁判所 #br -簡易裁判所 民事事件については訴訟の目的となる価額が140万円を超えない請求事件について、 刑事事件については罰金以下の刑に当たる罪および窃盗、横領などの比較的軽い罪の訴訟事件などについて、第一審の裁判権を有している。 簡易裁判所は管轄とする事件について罰金以下の刑または 3 年以下の懲役刑しか科すことができない。 逮捕状などの令状は簡易裁判所が発布する。 >裁判公開の原則 「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」(憲法82条1項) 裁判の公正さを確保するためには、裁判を公開することが不可欠 →国民に裁判の傍聴を許し、報道する自由を認めている。 「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。 但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、 常にこれを公開しなければならない」(憲法82条2項) 公開されている以上、裁判は誰でも傍聴ができる。 ただし、プライバシーの保護や法廷の秩序維持のためであれば制限される場合がある。(メモは自由にとってよい) >裁判員制度 一般国民が刑事裁判に参加して、被告人が有罪がどうか、有罪の場合はどのような刑にするのか裁判官と一緒に決める制度(2009年から導入) 裁判員6人と裁判官3人とが合議によって判決を下す。 |裁判員の資格|18歳以上で選挙権のある者の中から無作為に抽選によって選ばれる。| |対象となる事件|刑事事件の中でも、殺人、強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死、&br;現住建造物放火、身代金目的誘拐、保護責任者遺棄致死、覚醒剤取締法違反など| |職務内容|裁判に参加して、評議・評決を行う。裁判では証拠書類の取り調べや、証人や被告人に対して質問も可能| 裁判員が参加する裁判は、地方裁判所で行われる第一審に限られている。 >''司法権の独立'' ①司法権が立法権や行政権から独立しているという対外的な独立という意味 ②裁判を行う裁判官がその職務を独立して行使するという司法権内部における独立という意味 例:大津事件(対外的独立)、浦和充子事件(対外的独立)、長沼基地事件(対内的独立) >裁判官の任命と罷免 -任命 |最高裁判所長官|定員1名|内閣の指名に基づいて天皇陛下が任命。任命後初めての衆議院総選挙の際、国民審査が行われる。|定年70歳| |最高裁判所判事|定員14名|内閣が任命し、天皇陛下が認証。任命後初めての衆議院総選挙の際、国民審査が行われる。|定年70歳| |下級裁判所の裁判官|CENTER:-|最高裁判所の指名した者の名簿に基づいて内閣が任命(※高等裁判所長官の任免は天皇陛下が認証)&br;下級裁判所の裁判官は任期が10年、ただし再任可能|下級裁判所裁判官は定年65歳&br;簡易裁判所裁判官は定年70歳| 原則、司法試験合格後、司法修習を終えた人から任命されるが 最高裁判所判事は、検察官出身者、行政官や外交官であった者、弁護士、学者、学識経験者などから任命されることもある。 #br -罷免 裁判官には身分保障が与えられており、憲法上一定の手続によって罷免される場合を除いて、 意思に反して免官,転官,転所,停職,俸給の減額を受けることはない。(憲法78条,裁判所法48条) 憲法上の手続き→最高裁判所裁判官の国民審査(憲法79条) >違憲審査権 人々の基本的人権が法律によって侵害されないようにするために、 憲法にその法律が違反していないかどうかを判断する必要があることから、司法権に与えられている。 #br -付随的違憲審査制(アメリカ型) 裁判所が特定の法律や処分等が憲法に適合しているかどうかを審査するためには、人権侵害を理由とした具体的な訴訟の存在が必要 →具体的な事件を解決するために、憲法判断を必要としなければ判断をしない。 -抽象的違憲審査制(大陸型) 通常の裁判所とは異なる特別に設置された憲法裁判所が、具体的な事件と関係なく抽象的に法律の憲法の適合性を審査する制度 例:ドイツ #endregion ***第十五講目の内容 [#geea51b4] #region(財政) ''財政'' 「代表なくして課税なし」といわれるように、議会政治の起源は国王の課税に対する国民の承認に由来 →課税に対する臣民の統制が立憲主義のはじまり |財政民主主義(83条)|国民の負担が前提であり、国民生活に影響を及ぼす国家財政が国民の代表である国会によって統制されているという考え方| |租税法律主義(84条)|租税の賦課徴収には、国民の同意が必要であり、国民の代表である議会の制定する法律に基づかなければならないという考え方&br;→どんな人も法律の根拠がなければ税を課されたり、徴収されたりすることはない。⇒法という形式を要求することで税制への国民の民意の反映を確保できる。| 租税:国または地方公共団体が特別の役務に対する反対給付だけではなく、収入を得る目的のため国民から無償で強制的に徴収する金銭 公権力は個人に直接・間接に租税を課し、個人は国民の義務として租税を納めなければならない(30条) >予算 予算とは国や都道府県、市区町村などの一会計年度の歳入歳出の見積 予算は内閣のみが国会へ提出できる。予算は毎会計年度ごとに作成しなければならない。(86条) 予算の最終的な決定権は国会にある。ただし、国会が予算を修正できるかどうかについては議論がある。 -予算の法的性質をめぐる議論 明治憲法下においては、予算は歳入歳出の見積もりに過ぎず、法的拘束力がないとする予算行政説が有力 日本国憲法下では、法的拘束力があるというのは前提に、法律の一種と考えるか、独自の法形式と考えるかで対立 #br 予算の特徴を考えると、国民を拘束しない、効力が限定的、内閣のみに提出権がある、衆議院の先議(優越) といった憲法上に特別の規定があるので、法律とは違うと考えられる。→予算法形式説が有力 ☞予算と法律の不一致の問題は法的問題ではなく、政治的問題として捉える方が自然 #br 予算の一会計年度とは4月~3月 1月に開催される通常国会で予算が審議されるため、予算案は前年の 12 月までに作成しておかなければならない。 |>|予算の種類|h |本予算|一会計年度の財政計画に基づいて算出された予算| |暫定予算|本予算が年度開始前までに成立しない場合に、編成される予算| |補正予算|当初予算成立後に予算が不足した場合に編成される予算| その他予見し難い予算の不足に充てるための予備費がある。 3月までに予算が議決されない場合、事務的な経常経費に限って暫定予算を作成する。 >決算 決算とは国や都道府県、市区町村などの一会計年度の歳入歳出の結果 -予算の循環過程(budget cycle) 各省庁内部での予算編成→国会での予算審議、議決→予算の執行→決算の承認という流れを経る。 -決算審議 国会での決算審議を通じて予算の執行が適正であったかどうかを検査する。 →国会議員の関心は予算にあるので、熱心に審査されない。 会計検査院の会計検査は、予算の執行が適法、正当であったかという点から行う。 国会審議で決算が否決されたとしても、予算は無効にならない。 ※2017年4月には、2012年から2015年までの4年分の決算が、衆議院で議決されていなかった。 #endregion #region(地方自治) ''地方自治'' |>|地方自治の根拠(由来)|h |固有説|地方自治の自治権は、人権と同じように、地方団体は固有の権利として自治権を有しており、国家権力はそれを承認し得るのみという考え方| |伝来説|地方自治の自治権は、地方団体に固有のものではなく、地方団体の法人格も、その支配権、その他の能力も、&br;国家の法秩序によってはじめて発生するものであり、国家から与えられているに過ぎないという考え方| |制度的保障説|地方自治の保障は地方自治という制度を保障したものであり、本質的内容、核心は法律によっても侵すことはできないとされる考え方| >地方自治の本旨 第92条「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」 →明確な定義はないが、住民自治と団体自治の2つの原理とされている。 |住民自治(自由主義的要素)|地方における行政を行う場合にその地方の住民の意思と責任に基いて処理するとする原則| |団体自治(民主主義的要素)|一定の地域を基礎とする国から独立した団体を設け、この団体の権限と責任において地域の行政を処理する原則| ⇒日本国憲法では憲法上の制度として地方自治を保障している。 |>|>|構成要素|h |国家の構成要素|>|領土| |~|>|国民| |~|>|主権| |地方公共団体の構成要素|区域|地域的・空間的構成要素としての一定区域| |~|住民|地方公共団体内の区域に住所を有する全ての者を構成員としている。| |~|自治権|自治立法権:条例、規則等の法を制定できる。| |~|~|自治行政権:財産の管理や事務の処理を行える。| |~|~|自治財政権:行政を行う経費の調達や、支出を管理できる。| |~|~|自治組織権:自らの組織を自主的に定められる。| |>|>|地方公共団体の種類|h |普通地方公共団体|包括自治体(都道府県)|都道府県と市町村は対等な存在| |~|基礎自治体(市区町村)|~| |特別地方公共団体|特別区(東京23区)|行政区は地方公共団体ではない。| |~|地方公共団体の組合|複数の地方公共団体が一定の事務の共同処理等を目的として設立する特別地方公共団体。&br;・一部事務組合:複数の地方公共団体が事務の一部を共同で処理するために設立したもの&br;・広域連合:一部事務組合よりも広い範囲で活動するために設立| >地方公共団体の権能(94条)「条令制定権」 「法律の範囲内」とは -条例制定の手続きが法律で定められること -条例の所管事項が法律に制約されること -条例の形式的効力が法律および命令に劣ること #br 横だし条例:法律による規律よりも更に規律の範囲が広い。 上乗せ条例:法律による規律よりも更に規律が厳しい。 >受動喫煙防止対策をめぐる政治過程(地方自治の例) 国の健康増進法(2018年第196回国会で成立) もともと、第193回国会に提出される予定であったが、自民党内からの反発によって提出できず。 規制内容を大幅に緩和して、提出され、第196国会で成立 例:厚生労働省が2024年3月に公表した当初案は、厨房を含め30平方メートル以下のバーやスナックに限って喫煙専用室がなくても喫煙を許可 →客席面積100m2以下で資本金 5000 万円以下の店は喫煙可へと修正 2018年6月15日、衆議院厚生労働委員会での委員会審査中、参考人の意見陳述中に「いいかげんにしろ」と議員が野次をとばして注目された。 #br 東京都受動喫煙防止条例(2018年6月27日、都議会で成立) 2020年4月、全面施行 >地方公共団体の執政制度(93条) 地方自治体は議会の議員と執政である首長を直接公選する首長制を採用している。 首長制⇒大統領制と議院内閣制の混合型 首長が議案提出権を持っているし、議会を解散できる。また、議会が首長を解任できる。 >首長の権限 -拒否権 地方自治法第176条 「普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、 その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から10日以内に理由を示して これを再議に付することができる。」 大統領制と同じように三分の二の再議決でその決定が確定 -専決処分 本来、議会の議決、決定を受けなければいけない事柄を首長の判断で決定すること |地方自治法179条に基づく場合|議会が機能しない事態への対処を目的として首長が独自の判断で処理する為にあるが、次の議会で承認を求める必要がある。&br;→承認されなくとも、処分の効力は失われない| |地方自治法180条に基づく場合|あらかじめ議決で決められた事項に関しては首長が自由に処分できる。&br;→議会には報告をすれば良い| #hr 地方自治法第179条 「普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第 113 条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、 普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、 又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。 ただし、第162条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意及び第252条の20の2第4項の規定による 第252条の19第1項に規定する指定都市の総合区長の選任の同意については、この限りでない。」 #br 地方自治法第180条 「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、 普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。」 「前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。」 |>|議会の権限|h |条例提案権|条例の制定、改廃| |予算審議権|議会に提出された予算の審議&br;減額修正に制限はないが、増額修正には制限がある。| |調査権|国会の国政調査権を参考に作られた制度&br;ただし、国政調査権は委員会も行使できるが、地方自治上の調査権は議会だけの権限&br;地方自治法の100条に規定があるため、100条委員会と呼ばれる。| >住民投票(95条) 特定の地域だけに適用される法律を制定する場合、当該地方公共団体に不利益を与える場合や、過度の国からの干渉を防ぐために行う。 例:広島平和記念都市建設法(1949年施行)、首都建設法(1950年施行→1956年廃止) |直接請求|法定署名数|請求先|請求後の流れ|h |監査請求|有権者の50分の1以上|監査委員|請求事項を監査結果を公表・報告| |条例の制定・改廃の請求|~|首長|首長が地方議会に付議⇨結果を公表| |首長・議員以外の役職員の解職請求|有権者の3分の1以上|~|首長が地方議会に付議⇨3分の2以上出席⇨4分の3以上の同意で職を失う。| |首長・議員の解職請求|~|選挙管理委員会|住民投票⇨過半数の同意があれば職を失う。| |解散請求|~|~|住民投票⇨過半数の同意があれば解散| >町村総会 地方自治法 第89条「普通地方公共団体に議会を置く。 」 第94条「町村は、条例で、第89条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。」 第95条「前条の規定による町村総会に関しては、町村の議会に関する規定を準用する。」 議会を置く代わりに、有権者全員で話合いを行って決定する直接民主制的役割(地方自治法下では1例しかない。) #endregion #region(憲法改正) ''憲法改正'' >''憲法改正(96条)'' 憲法改正とは、憲法典に定める改正手続きに従って、憲法典の一部を修正・削除・追加すること、または全面的に書き改めること 八月革命説でみたように日本の憲法学では憲法改正限界説が通説だが、ヨーロッパでは無限界説が有力と考えられている。 憲法改正限界説→憲法改正手続によって憲法改正手続を変更することも許されないと考えられている。 >憲法改正の手続(96条) -国会 国会議員が憲法改正案の原案を発議するためには衆議院で100人以上、参議院で50人以上の賛成が必要 憲法改正原案の発議は、内容が関連している事項ごとに分けて行う。 憲法改正原案について修正の動議を議院の会議で議題にする場合は、衆議院で100人以上、参議院で50人以上の賛成が必要 その他、衆参両院の憲法審査会が改正原案を発案可能 ☞内閣に発議権は認められないというのが通説 憲法改正原案の発議・提案には各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要 ☞憲法改正原案の「発議」は国会が憲法改正案を決定し、国民投票を求めて国民に提案すること ※通常の法律案の原案の提出を意味する「発議」とは意味が異なる。 憲法改正原案について国会で最後の可決があった場合、その可決によって国会が憲法改正の発議を行い、国民に提案したものとされる。 #br -国民投票 国会により発議された憲法改正原案は国民投票によって承認される必要がある。 →国民投票の対象になるのは憲法改正の承認のみ 国会の発議の後、国民投票による過半数の賛成が必要 →96条には「過半数」としか書かれていないため、有権者の過半数、投票総数の過半数、有効投票数の過半数なのかが明らかではないが、 2007年制定の「憲法改正手続法」によって有効投票数の過半数と定められた。 ☞憲法改正には国民投票が必要であったにもかかわらず、国民投票の手続きが法律で定められていないという状態が、60年以上続いていたという事実 憲法改正の発議後60日以後180日以内に国会の議決した期日で国民投票を行う。 投票権は日本国民で満18歳以上の男女 改正案ごとに1人1票で投票する。 国民の承認があった場合、天皇陛下が改正を公布する。 #endregion }} #style(class=submenuheader){{ **後期 }} #style(class=submenu){{ |BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c |BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業| |日程/教室|月曜日 二限目/3505教室(三号館五階五番教室)&br;月曜日 五限目/3505教室(三号館五階五番教室)&br;火曜日 二限目/3505教室(三号館五階五番教室)| ***第一講目の内容 }} *コメント [#comment] #pcomment(,reply,20,)