日本大学学生互助会(文理学部) Wiki
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漢文学2(袴田光康)
をテンプレートにして作成
開始行:
#include(漢文学項目,notitle)
#contents
|BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c
|BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):''分類''|''国文学科選択必修(A...
|区分|[[国文学科]]科目/一般(人数過多の場合は抽選)|
|履修条件||
|単位数|2|
|講師|[[袴田光康]]|
|学位等|文理学部(学士(文学))|
*概要 [#q1f88e6e]
全15回の授業の内、前半の第7回までの授業では律令国家にお...
東アジアの漢字文化圏における日本の漢詩の独自性について講...
第9回以降の後半の授業では昔話の「浦島太郎」で知られる浦...
その変遷を辿りながら、具体的な漢文訓読の技術を学修してい...
長文の作品の場合には授業内で全文を読むことをできないこと...
#br
グループワークや質問されることはない。
評価は2回のレポート課題によってする。
&color(Red){2024年から敗者復活課題といったものを出さなく...
#br
この科目は文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP2...
*講師の印象 [#ucc03ead]
宿題や予習復習を重視している。
*令和七年度(2025年度) [#a2becd30]
漢文学1と同じく後期のみ開講。漢文学1と一緒に取るのがお...
試験期間中は授業資料の配信が停止されて見られなくなるので...
試験範囲は基礎文法(使役とか比較とかも含む)とこれまで出さ...
#style(class=submenuheader){{
**後期
}}
#style(class=submenu){{
|BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c
|BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業(稀に課題研...
|日程/教室|水曜日 二限目/3405(三号館四階五番教室)|
***第一講目の内容
授業の説明。フィードバックは一回目の課題のみとのこと。他...
***第二講目の内容
#region(授業内容)
''授業内容''
-''漢字の概要''
漢字は古代中国に発祥した表語文字である。表語文字とは、一...
その起源は紀元前1300年頃に遡と言われ、10万字以上にのぼる...
漢字は中国・台湾・モンゴル・朝鮮半島・日本・ベトナム・マ...
現在は中国語・日本語以外は殆ど用いられなくなった。それで...
-''漢字の起源''
漢字の起源については、『淮南子』や『説文解字』などには黄...
蒼頡は鳥の足跡を見て、足跡の形から鳥の種類がわかるように...
実際に確認される最古の漢字の起源は、殷王朝(BC17世紀頃~BC...
甲骨文字とは、占いに用いられた亀の甲羅や牛の骨にその占い...
甲骨文字は絵に近い形の象形文字で、これが漢字の源流となっ...
-''漢字の造字法による種類''
甲骨文字は絵文字のような象形文字を基本としたが、一部には...
象形文字...「日」や「山」のように事物の形を象った文字
指事文字...「上」や「下」のように抽象的概念を表した文字
会意文字...「休」や「男」のように象形文字や指事文字を組み...
形声文字...「花」や「江」のように意味を表す部分と発音を表...
こうした造字法により、多くの文字が作り出されたが、漢字の...
-''字体の変遷''
|王朝|年代|文字|h
|殷|BC1600~BC1028年頃|甲骨文字|
|周|BC1100~BC256年頃|金石文|
|秦|BC221~BC206年頃|小篆|
|漢|BC206~220年頃|隷書|
|六朝|222~589年頃|楷書|
甲骨文字の次に登場するのが、殷・周(BC11世紀~BC8世紀...
特に周代以降の金文においては、形声文字が増えるという特徴...
周王朝が滅びると、群雄割拠の春秋戦国時代に入り、地方ご...
統一した書体は&color(Red){小篆(篆書)};と呼ばれている。...
篆書は曲線等の装飾的な要素があった為、漢王朝(BC202~220...
これが&color(Red){隷書};と呼ばれる書体である。隷書を走り...
また漢代の末期から六朝時代(222~589年)かけて隷書をより直...
殷の甲骨文字→周の金石文→秦の篆書→漢の隷書→六朝の楷書と...
隋(581~618年)や唐の時代(618~978年)に入ると、楷書が一般...
宋朝以降は印刷とも結びついて楷書が漢字の書体として標準化...
-''日本への伝来''
漢字の伝来については『古事記』や『日本書紀』の中に応神天...
これらの書物とともに漢字が伝わったということになる。考古...
471年のものと推定されている。文献的にも考古学的にも漢字が...
※王仁は「わに」と読む。
※稲荷山古墳出土の鉄剣には「辛亥年七月中記/乎獲居(ヲワケ...
#endregion
#region(課題と答え(返り点のみ))
''課題と答え(返り点のみ)''
・次の白文に返り点と送り仮名を付しなさい。
①我読書(ワレショヲヨム)
→我&size(10){レ};読&size(10){レ};書
②我好読書(ワレショヲヨムヲコノム)
→我好&size(10){レ};読&size(10){レ};書
③我与彼書(ワレカレニショヲアタフ)
→我与&size(10){二};彼書&size(10){一};
④我与書於彼(ワレショヲカレニアタフ)
→我与&size(10){二};書於彼&size(10){一};
⑤平-定天下(テンカヲヘイテイス)
→平-定&size(10){二};天下&size(10){一};
⑥不遠千里之道(センリノミチヲトオシトセズ)
→不&size(10){レ};遠&size(10){二};千里之道&size(10){一};
⑦不入虎穴、不得虎子(コケツニイラズンバ、コシヲエズ)
→不&size(10){レ};入&size(10){二};虎穴&size(10){一};、不&s...
#endregion
***第三講目の内容
#region(授業内容)
''授業内容''
-''『古事記』について''
漢字文化を吸収する中で、中国に倣って『古事記』や『日本書...
『古事記』は現存する日本最古の歴史書で、その成立は元明天...
内容は天地の開闢から始まり、神々の神話を記した神代から、...
その序によると、稗田阿礼が誦習した「帝皇日継(帝紀)」や...
「誦習」とは、単なる暗誦ではなく、書物を口に出して繰返し...
漢字の伝来については『古事記』中巻の&color(Red){応神天皇...
漢文には返点や送仮名が、また欄外には頭注の見出しが付され...
-''『日本書紀』について''
『日本書紀』は勅令で編纂された最初の国史である。編年体で...
その成立は養老4年(720)で、『古事記』の成立から僅か8年後...
5世紀から6世紀にかけて朝鮮半島の百済などから日本に移り住...
中国に倣って国史が編纂された際には、そうした漢文に習熟し...
-''漢字伝来記事の比較''
訓読の方法を身に付ければ、1300年前の史料でも、あるいは中...
漢字の文献史料を読む際には大変便利であり、中国文化と密接...
古事記』と『日本書紀』の両方に漢字伝来の記事があるが、違...
『古事記』では百済の和邇吉師が『論語』と『千字文』を齎し...
『千字文』の成立は6世紀前半であり、応神朝(4世紀後半~5世...
これらの記事は史書編纂にも関与したらしい渡来系氏族の阿直...
-''漢文の読み方''
まず文の構造に注目し、主語(省略されていることもある)・述...
この時、固有名詞(人名や地名)がわかると文の構造が把握し...
ただし、訓の読み方や読み添えは、一つだけの正解があるとい...
訓読はあくまでも漢文の内容を理解するための手段であり、解...
#endregion
#region(課題と答え(返り点のみ))
''課題と答え(返り点のみ)''
「一」「ニ」「三」点で足りない場合には、「上」「中」「下...
①汝知我欲読古人書。(ナンジハワレノコジンノショヲヨマント...
→汝知&size(10){三};我欲&size(10){レ};読&size(10){二};古人...
②不聞人従日辺来。(ヒトノジツペンヨリキタルヲキカズ) ※...
→不&size(10){レ};聞&size(10){下};人従&size(10){二};日辺&s...
③悪称人之悪者。(ヒトノアクヲショウスルモノヲニクム) ※...
→悪&size(10){三};称&size(10){二};人之悪&size(10){一};者
④我不以其所-以養人者害人。(ワレハソノヒトヲヤシナフユエ...
→我不&size(10){乙};以&size(10){下};其所-&size(10){二};以...
#endregion
***第四講目の内容
#region(基礎漢文法(再読文字))
''基礎漢文法(再読文字)''
「未」のように「いまだ~ず」と二度訓読する字を再読文字と...
|字|書き下し|現代語訳|h
|未|いまだ~ず|まだ~ない|
|将|まさニ~セんとす|今にも~しようとする|
|当(當)|まさニ~べシ|当然~すべきだ|
|応(應)|まさニ~べシ|きっと~に違いない|
|宜|よろシク~べシ|ぜひ~した方がいい|
|須|すべかラク~べシ|必ず~しなければならない|
|猶|なホ~ノ(ガ)ごとシ|ちょうど~のようだ|
|蓋|なんゾ~ざル|どうして~しないのか|
#endregion
#region(授業内容)
''授業内容''
>補足
〈訓点〉照古王、&color(Navy){以};&size(10){&color(Red){二...
〈訓読文〉照古王、牡馬壱疋・牝馬壱疋ヲ以テ阿知吉師ニ付シ...
※初めの「以」は訓読が必要(手段方法の意)。二つ目の「以」...
>補足
〈訓点〉十六年春二月、王仁来&color(Navy){之};。則太子菟道...
〈訓読〉十六年ノ春二月ニ、王仁来タリ。則チ太子菟道稚郎子...
※注意したいのは「之」の訓じ方。「王仁来之」の「之」は不読...
※「師之」の「之」は不読として単に「師トス」と訓じてもいい...
※文末の「之」は置字として不読とするのが原則。ただし、文脈...
-''『懐風藻』について''
『懐風藻』は日本最古の漢詩集。その成立は、序文によると奈...
編者については不明だが、近江朝から奈良時代にかけての64名...
その詩の殆どが行幸や宴会などの公的な場で作られた五言詩で...
-''『懐風藻』成立の背景''
『古事記』や『日本書紀』の編纂には漢字文化に精通した渡来...
公文書も全て漢字で表記するようになったので、政治に携わる...
隋や唐の諸文化を模倣して律令国家を形成していく中で、中国...
漢詩を詠むことは、単に唐風趣味とか文学的教養の問題ではな...
|>|『懐風藻』の時代区分と代表的詩人|h
|第一期 近江朝時代(662~672年)|大友皇子|
|第二期 天武・持統朝時代(672~697年)|大津皇子・持統天皇...
|第三期 文武朝時代(697~707年)|文武天皇|
|第四期 奈良時代前期(707~729年)|長屋王とその文学サロン|
|第五期 奈良時代後期(729~751年)|藤原総前・藤原宇合|
-''『懐風藻』の序''
>''序文冒頭''
対句表現に着目して改行すると分かりやすい。
逖聴&color(Red){&size(10){ニ};};前修&color(Red){&size(10)...
襲山降蹕之世、橿原建邦之時、
天造草創、人文未&color(Red){&size(10){レ};};作。
至&color(Red){&size(10){ニ};};於神后征坎品帝乗乾&color(Re...
百済入朝啓&color(Red){&size(10){ニ};};龍編於馬厩&color(Re...
高麗上表図&color(Red){&size(10){ニ};};烏冊於烏文&color(Re...
王仁始導&color(Red){&size(10){ニ};};蒙於軽嶋&color(Red){&...
辰爾終敷&color(Red){&size(10){ニ};};教於訳田&color(Red){&...
遂使&color(Red){&size(10){下};};俗漸&color(Red){&size(10)...
人趨&color(Red){&size(10){中};};斉魯之学&color(Red){&size...
逮&color(Red){&size(10){ニ};};乎聖徳太子&color(Red){&size...
設&color(Red){&size(10){レ};};爵分&color(Red){&size(10){...
肇制&color(Red){&size(10){ニ};};礼儀&color(Red){&size(10)...
然而専崇&color(Red){&size(10){ニ};};釈教&color(Red){&size...
未&color(Red){&size(10){レ};};遑&color(Red){&size(10){ニ}...
>''訓読の一例''
逖ク前修ヲ聴キ、
遐ニ載籍ヲ観ルニ、
襲山降蹕ノ世、橿原建邦ノ時、
天造草創ニシテ、人文未ダ作ラズ。
神后征坎シ品帝乗乾ニ至リテ、
百済入朝シ龍編ヲ馬厩ニ啓キ、
高麗上表シ烏冊ヲ烏文ニ図ク。
王仁始メテ蒙ヲ軽嶋ニ導キ、
辰爾終ヒニ教ヲ訳田ニ敷ク。
遂ニ俗ヲシテ洙泗ノ風ニ漸メ、
人ヲシテ斉魯ノ学ニ趨カシム。
聖徳太子ニ逮ビテ、
爵ヲ設ケ官ヲ分ケ、
肇メテ礼儀ヲ制ス。
然レドモ専ラ釈教ヲ崇ビ、
未ダ篇章ニ遑アラズ。
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|逖(テキ)|遠い、遥かの意。|
|遐(カ)|遠い、遥かの意。|
|前修|先人の教え。|
|載籍|昔から伝わる書籍。|
|襲山降蹕(ヒツ)之世|天孫ニニギノミコトが高千穂に降臨し...
|橿原建邦之時|初代神武天皇が橿原(かしはら)に初めて宮を...
|神后征坎(カン)|神功皇后の朝鮮出兵。|
|品帝乗乾|応神天皇(品陀和気命)の即位。|
|龍編|儒教の書物。|
|高麗|朝鮮半島北部の高句麗。|
|上表|君主に文を奉ること。|
|烏(ウ)冊|烏(カラス)の羽に書いた文書。|
|烏文|文字のこと。|
|軽嶋(かるしま)|「軽の坂」があった軽の地。|
|辰爾(シンジ)|王辰爾。朝鮮半島から来た学者。高句麗の烏...
|訳田(おさだ)|奈良の巻向の地。通訳などがいた外国文化の...
|洙泗之風・斉魯之学|孔子の教え。|
|釈教|仏教。|
|篇章|文学的な文章。|
>''現代語訳''
遠く昔の先人の教えを聴き、遥かに昔の書籍を観ると、天孫降...
神功皇后が朝鮮に出兵し、その息子の応神天皇が即位するに至...
王仁は初めて漢籍の啓蒙を軽嶋で広め、王辰爾は終にその教え...
こうして遂に日本に孔子の教えを勧め、人々を儒教に向かわせ...
聖徳太子に及んで、爵位を設け官位を分け初めて礼儀を制度と...
#endregion
#region(課題と答え)
''課題と答え''
今回の課題は『懐風藻』の序の一部(下記のもの)を書き下すこ...
>''課題''
及&size(10){&color(Red){レ};};至&color(Red){&size(10){ニ}...
恢&color(Red){-};&color(Red){&size(10){ニ};};開帝業&color...
道格&color(Red){&size(10){ニ};};乾坤&color(Red){&size(10)...
既而以為、
調&size(10){&color(Red){レ};};風化&size(10){&color(Red){...
莫&size(10){&color(Red){レ};};尚&color(Red){&size(10){ニ}...
潤&size(10){&color(Red){レ};};徳光&size(10){&color(Red){...
爰則建&color(Red){&size(10){ニ};};庠序&color(Red){&size(1...
定&color(Red){&size(10){ニ};};五礼&color(Red){&size(10){...
憲章法則、規模弘遠。
夐古以来、未&color(Red){&size(10){ニ};};之有&color(Red){&...
於&size(10){&color(Red){レ};};是三階平煥、四海殷昌。
旒纊無為、巌廊多&color(Red){&size(10){レ};};暇。
旋招&color(Red){&size(10){ニ};};文学之士&color(Red){&size...
当&color(Red){&size(10){ニ};};此之際&color(Red){&size(10)...
宸翰垂&size(10){&color(Red){レ};};文、賢臣献&color(Red){&...
雕章麗筆、非&color(Red){&size(10){ニ};};唯百篇&color(Red)...
但時経&color(Red){&size(10){ニ};};乱離&color(Red){&size(1...
言念&color(Red){&size(10){ニ};};湮滅&color(Red){&size(10)...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|淡海先帝|天智天皇のこと。|
|受命|天命を受けて即位すること。|
|恢開(カイカイ)|大きく広げること。|
|弘闡(コウセン)|広く明らかにすること。|
|皇猷(コウユウ)|天皇のはかりごと、政治上の計画。|
|乾坤(ケンコン)|天地のこと。|
|以為|思う(オモヘラク、オモフニなどと訓ずる)。|
|庠序(ショウジョ)|学校。|
|茂才|優れた才能を持つ者。|
|五礼|祭祀・葬祭・賓客・軍事・冠婚の五つの礼。|
|憲章法則|憲法と法律。|
|弘遠|広く深遠なこと。|
|夐古(ケイコ)|昔のこと。|
|三階平煥|宮中が平安なこと。|
|四海殷昌|天下(日本全国)が賑やかで栄えること。|
|旒纊(リュウコウ)|帝の冠りの飾り。転じて天皇そのものを...
|巌廊(ガンロウ)|朝廷。|
|旋|しばしば。|
|置醴(チレイ)之遊|酒を交えて詩を作る宴会。|
|宸翰(シンカン)|天皇の筆(天皇が書いた文書や筆跡)。|
|雕章(チョウショウ)麗筆|美しい文章。|
|乱離|争乱。ここでは壬申の乱を指す。|
|煨燼(カイジン)|焼けて灰になること。|
|言|ここに。|
|湮滅(インメツ)|消滅。|
|輙(チョウ)|すなわち。|
>''書き下し文''
淡海ノ先帝ノ受命ニ至ルニ及ビ 、
帝業ヲ恢開(かいかい)シ、皇猷(こうゆう)ヲ弘闡(こうせん...
道ハ乾坤ニ格(いた)リ、功ハ宇宙ニ光ル 。
既ニシテ以為(おもへ)ラク 、
風ヲ調(ととの)へ俗ヲ化スニ、文ニ尚(たっと)キハ莫ク 、
徳ヲ潤シ身ヲ光(て)ラスニ、孰(いず)レカ学ニ先ナラント 。
爰ニ則チ庠序(しょうじょ)ヲ建テ、茂才(もさい)ヲ徴(め...
五礼ヲ定メ、百度ヲ興ス 。
憲章法則、規模弘遠ニシテ 、
夐古(けいこ)以来、未ダ之レ有ラザルナリ 。
是ニ於イテ三階平煥(へいかん)ニシテ、四海殷昌(いんしょ...
旒纊(りゅうこう)無為ニシテ、巌廊(げんろう)暇多シ 。
旋(しばしば)文学ノ士ヲ招キ 、
時ニ置醴(ちれい)ノ遊ヲ開ク 。
此ノ際ニ当リ 、
宸翰(しんかん)文ヲ垂レ、賢臣頌(しょう)ヲ献ズ 。
雕章麗筆(ちょうしょうれいひつ)、唯ダ百篇ニ非ラズ 。
但シ時ニ乱離ヲ経テ、悉(ことごと)ク煨燼(かいじん)ニ従...
言(ここ)ニ湮滅(いんめつ)ヲ念ヒ、輙(すなわ)チ傷懐(...
#endregion
***第五講目の内容
大友皇子の伝記の訓読が今回の課題。
#region(授業内容と課題の答え)
''授業内容と課題の答え''
『懐風藻』の巻頭には、大友皇子の伝記と詩二首が載せられて...
>''大友皇子(648~672年)''
天智天皇(626~672年)の第一皇子で、671年に太政大臣となっ...
天智天皇は大友皇子を後継者とすることを密かに重臣たちに誓...
天智天皇が崩御すると、東宮であり叔父であった大海人皇子(...
これに敗れた大友皇子は首を括って自害した。
>''大友皇子の伝記の訓読文''
皇太子ハ、淡海ノ帝ノ長子ナリ。魁岸奇偉、風範弘深、眼中精...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|魁岸奇偉|逞しく立派なさま。|
|風範弘深|風采が深遠で立派なこと。|
|眼中精耀|眼が鮮やかに光るさま。|
|顧盼煒燁|瞳を巡らすと輝くさま。|
|劉徳高|天智四年に来朝した唐の使者。|
|風骨|風采と骨格。|
|天中洞啓|天の門が大きく開くこと。|
|擎(ケイ)|かかげる。|
|腋底|掖庭に同じ。宮門の脇の小門。|
|便|訓「すなわち」。|
|藤原内大臣|藤原鎌足。|
|聖朝万歳之後|天智天皇の御代の後。|
|巨猾|とても悪賢い者。|
|間釁(カンキン)|隙間を狙うこと。|
|惟|訓「ただ」。|
|箕帚(キシュウ)之妾|掃除などのお世話をする人。すなわち...
|年甫|はじめて。やっと~したばかり。|
|百揆|全ての役人。百官。|
|試|官吏登用の試験。|
|材幹|物事をやりこなす能力。|
|群下|群臣たち。|
|学士沙宅紹明(サタクショウメイ)&br;塔本春初(トウホンシ...
|雅|いつも。|
|博古|古い文物について学ぶこと。|
|洪学|広い学識。|
|天命|寿命。|
#br
《《返点についての補足》》
-1.同一の文の中で「一」「ニ」点を繰り返して用いることは...
-2.一二点は「一」から「三」までで、「四」は使えないので...
#endregion
***第六講目の内容
#region(使役)
''使役''
|使役の文の型|訓読|意味|h
|A主語+〔使・令・教・遣〕+B使役の対象+C動作(未然)+D...
|字|>|例文|備考|h
|~|原文|訓読文|~|h
|使|王怒使人殺其父。|王は怒りて人をして其の父を殺さしむ。||
|令|令将軍攻城門。|将軍をして城門を攻めしむ。||
|教|天帝使我長百獣。|天帝我をして百獣の長たらしむ。|「長...
|遣|天教人相愛。|天は人をして相ひ愛せしむ。|「愛す」は他...
#endregion
#region(授業内容)
''授業内容''
>''大友皇子の漢詩''
-【原文】
五言。侍宴。一絶
皇&color(Red){-};明&color(Red){&size(10){二};};光日&color...
帝&color(Red){-};徳&color(Red){&size(10){二};};載天&color...
三&color(Red){-};才&color(Red){&size(10){二};};並泰&color...
万&color(Red){-};国&color(Red){&size(10){二};};表臣&color...
-【訓読】
五言。宴ニ侍ル。一絶。
皇明ハ日月ト光リ、
帝徳ハ天地ト載ス。
三才並ビニ泰昌ニシテ、
万国ハ臣義ヲ表ス。
-【通釈】
我が天子の威光は太陽や月のように光り輝き、
我が天子の仁徳は天や地のように全てを載せ覆う。
天地人の三才は、(その天子の威光と仁徳によって)安らかで...
(それゆえ)万国が朝貢して我が天子に臣下の礼を表すのであ...
-【解説】
天智天皇を褒め称えた一首。「侍宴」と題することから、天皇...
あるいは「万国」とあることからすると、外国の使節を迎えた...
詩中の語句には『文選』に使われた言葉が用いられている。そ...
中国をモデルとして天皇を中心とする律令国家を目指した近江...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|皇明|次句の「帝徳」と対になる。「皇」は帝と同じく天子の...
|日月|太陽と月。訓読の「ト」は「~の如く」の意。次句と対...
|帝徳|帝は天帝の命を受けた皇帝の意で、徳はその仁徳。「皇...
|載天地|天は全てを覆い、地は全てを載せる。「覆載」(ふう...
|三才|天・地・人。宇宙の万物を指す。『文選』「西征賦」に...
|泰昌|安定し、繁栄していること。|
|万国|すべての国。『文選』「西都賦」に「観万国也」とある。|
|臣義|臣下としての礼儀。ここでは、国々の使者が天智天皇の...
#endregion
***第七講目の内容
#region(受身)
''受身''
見・被・為・所の字には下の動詞を受身にする用法がある。
於・乎・于の下に動作主が示されている場合は受身として読む...
|>|>|CENTER:''文法''|h
|型|訓読|訳|h
|〔見・被・為・所〕+ A 動詞|A らル|A される|
|動詞+〔於・乎・于〕+ B 動作の主|B に A らル|B に A さ...
|体言+為+ B 体言+所+C動作|A ハ B ノCスル所ト為ル|A は...
|>|>|例文|h
|原文|訓読文|訳文|
|信而見疑、忠而被謗。|信にして疑はれ、忠にして謗らる。|信...
|義経為頼朝所追。|義経は頼朝の追ふ所と為る。|義経は頼朝に...
|唯辱於奴隷之手。|唯だ奴隷の手に辱めらる。|ただ奴隷の手で...
#endregion
#region(授業内容)
''授業内容''
>''大津皇子(663~686年)''
壬申の乱で大友皇子に勝利した天武天皇の皇子。
『日本書紀』では第三子とされているが、『懐風藻』では長子...
母は天智天皇の皇女である大田皇女(持統天皇の姉)であった...
母方の後見が無くなったため、持統天皇を母とする草壁皇子が6...
686年に天武天皇が崩御すると、大津皇子は謀反の疑いをかけら...
>''大津皇子の「伝記」''
-【本文】
皇子者浄御原帝之長子也。
状貌魁梧、器宇峻遠。幼年好学、博覧而能属文。
及壮愛武、多力而能撃剣。
性頗放蕩、不拘法度。
降節禮士、由是人多附託。
時有新羅僧行心。解天文卜筮。
詔皇子曰、太子骨法、不是人臣之相。
以此久在下位、恐不全身。
因進逆謀。迷此詿誤、遂図不軌。
嗚呼惜哉。蘊彼良才、不以忠孝保身。
近此姧豎、卒以戮辱自終。
-【書き下し文】
皇子ハ、浄御原帝ノ長子ナリ。
状貌魁梧、器宇峻遠ナリ。幼年ニシテ学ヲ好ミ、博覧ニシテ能...
壮ニ及ビテ武ヲ愛シ、多力ニシテ能ク剣ヲ撃ツ。
性頗ル放蕩ニシテ、法度ニ拘ワラズ。
節ヲ降シ士ヲ禮シ、是ニ由リテ人多ク附託ス。
時ニ新羅僧行心有リ。天文卜筮ヲ解ス。
皇子ニ詔ゲテ曰ク、太子ノ骨法、是レ人臣ノ相ニアラズ。此レ...
因リテ逆謀ヲ進ム。此ノ詿誤ニ迷ヒ、遂ニ不軌ヲ図ル。
嗚呼(ああ)惜シキ哉。彼ノ良才ヲ蘊(つつ)ミ、忠孝ヲ以テ...
此ノ姧豎ニ近ヅキ、卒(つひ)ニ戮辱ヲ以テ自ラ終フ。
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|浄御原帝|天武天皇。|
|状貌魁梧(じょうぼうかいご)|状貌は身体容貌のことで、魁...
|器宇峻遠(きうしゅんえん)|人としての器量が高く優れてい...
|能|訓は「よく」。「~ができる」の意味。|
|属文|「属」は文章を綴(つづ)ること。|
|壮|壮年。|
|頗|とても。非常に。|
|法度|規則、きまりごと。|
|降節禮士|自分の身分(節)をへりくだり、有能な者(士)を...
|行心|新羅僧の名。|
|卜筮(ぼくぜい)|占い。|
|詔|ここでは「告げる」の意。|
|骨法|骨ぐみ、骨の相。|
|相|人相。|
|逆謀|謀反(むほん)。|
|詿誤(かいご)|欺き騙すこと。|
|不軌|規則を守らぬこと。謀反。|
|嗚呼|訓「ああ」、感嘆の語。|
|蘊|包む。|
|姧豎(かんじゅ)|悪賢い者。|
|戮辱(りくじょく)|屈辱。|
|終|命を絶つこと。|
>''大津皇子の漢詩''
※無韻の詩
-【本文】
五言。臨終。一絶。
金烏臨西舎
鼓声催短命
泉路無賓主
此夕誰家向
-【書き下し文】
五言。臨終。一絶。
金烏は西舎を臨み、
鼓声は短命を催す
泉路に賓主は無し
此の夕に誰の家に向ふ
-【訳文】
傾いた太陽は西の建物を照らし
時を告げる太鼓の音は私の短い命をせきたてる
黄泉の道には客人も主人もいないという
この夕べに私は一体誰の家に向かうのであろうか
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|臨終|死を迎えること。|
|一絶|「絶」は絶句体を指す。一首の絶句の意味。ただし、こ...
|金烏(きんう)|太陽。中国では太陽に三本足の烏が居るとい...
|西舎(せいしゃ)|西側にある建物。日が沈む西の空を指す比...
|鼓声(こせい)|時刻を知らせる太鼓の音。当時は中国風に太...
|催(うながす)|催促する。促す。|
|泉路(せんろ)|ここでの「泉」は黄泉(よみ)(死後の世界...
|賓主(ひんしゅ)|「賓(ひん)」は客、「主(しゅ)」はそ...
#endregion
***第八講目の内容
課題研究。各解答の最初に必ず①~⑱の問題番号を明記せねばな...
提出の期限は11月19日(水)午前10:30まで。
#region(課題の答え)
''課題の答え''
-(1)
--①『古事記』
天武天皇が稗田阿礼に帝紀や旧辞を読み習わせ、元明天皇が...
--②王仁(和邇)
應神天皇の御代に百済から呼び寄せたとされる渡来人で古事...
--③『文選』
中国の南北朝時代の南朝梁の蕭統によって編纂された詩集・...
--④『懐風藻』
天平勝宝三年に成立した、日本最古の漢詩集。収録された詩...
--⑤大友皇子
天智天皇の第一皇子で後継者であったが、壬申の乱において...
#br
-(2)
⑥我は書を彼に与ふ。
⑦虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
⑧汝は我の古人の書を読まんと欲するを知る。
⑨我は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
⑩未だ之有らずや。
⑪須らく病苦之時を思うべし。
⑫将軍をして城門を攻めしむ。
⑬天帝は我をして百獣の長たらしむ。
⑭信にして疑はれ、忠にして謗らる。
⑮唯だ奴隷之手に辱めらるのみ。
#br
-(3)
--⑯
金烏は西舎を臨み、
鼓声は短命を催す
泉路に賓主は無し
此の夕に誰の家に向ふ
--⑰
傾いた太陽は西の建物を照らし
時を告げる太鼓の音は私の短い命をせきたてる
黄泉の道には客人も主人もいないという
この夕べに私は一体誰の家に向かうのであろうか
--⑱
// 文章から考えれば、普段から見聞きしていた筈の斜陽も時...
この詩は大津皇子の臨終に際して詠まれた辞世の詩である。...
#endregion
***第九講目の内容
前回の課題研究のフィードバックと授業。
#region(比較)
''比較''
|文の型|書き下し|現代語訳|h
|[形容詞・形容動詞]ニ+[於・乎・于]+[比較対象]一|[比較対...
|不(未)レ〔如・若〕~|~にしカず|(~に及ばない、~の方...
|莫(無)レ〔如・若〕~|~ニしクハなシ|(~にこしたことは...
>''例文''
①霜葉紅於二月花。
→霜葉は二月花よりも紅なり。(霜にうたれた葉は二月の花より...
②百聞不如一見。
→百聞は一見に如かず。(百回聞くことは一回見ることに及ばな...
③未若文章之無窮。
→未だ文章の無窮なるに若かず。(文章が永遠であることには及...
④莫如寒夜読書。
→寒夜に書を読むに如くは莫し。(寒い夜に書を読むのにこした...
#endregion
#region(浦島子)
''浦島子''
>''『日本書紀』雄略天皇二十二年七月条''
秋七月、丹波国余社郡管川人水江浦嶋子、乗舟而釣、遂得大亀...
於是浦嶋子感以為婦、相逐入海、到蓬莱山、歴覩仙衆。語在別...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|丹波国余社郡管川|現在の京都府与謝郡伊根町のあたりを指す...
|便|訓は「すなわち」。|
|女|訓は「をとめ」。「便化為女」は「便(たちま)ち化(ば)け...
|感|古訓は「めで(愛で)」。ここでは「気に入る」「恋する...
|婦|古訓は「め(女)」。妻の意。|
|相逐|古訓は「あひしたがひ」。逐は「後を追う」「順に従う...
|蓬莱山|道教で東の海上にあるとされる神仙境の島。不老長寿...
|仙衆|古訓は「ひじりたち」。|
|歴覩|訓は「めぐりみる」。覩(ト)は「見る」の意。|
|語|古訓は「こと」。ここでの「こと」言葉の意ではなく、物...
|別巻|古訓は「ことまき」。『日本書紀』は別な書物を指す。...
『日本書紀』の記事は、地方から報告された「浦島子」の体験...
この記事の元ネタとなるような「浦嶋子の物語」があったらし...
この「別巻」が『丹後国風土記』かは定かでないが、『丹後国...
#endregion
***第十講目の内容 [#zd2f1689]
#region(『丹後国風土記』の浦島子)
''『丹後国風土記』の浦島子''
風土記の撰進の命は和銅6年(713年)に出され、その数年の後に...
正確な成立年代は不明であるが、『日本書紀』とほぼ同時代の...
ただし、『丹後国風土記』は諸書に引用された逸文のみが残さ...
浦島子の記事も『釋日本紀』(13世紀後半の成立)という書物...
>''本文と書き下し文①''
丹後国風土記曰、與謝郡日置里、此里有筒川村。此人夫日下部...
爲人姿容秀美、風流無類。斯所謂水江浦嶼子者也。是舊宰伊預...
#br
丹後国風土記曰く、與謝の郡日置の里、此の里に筒川の村有り...
人と爲り姿容秀美にして、風流(みやび)類(たぐい)無し。斯(こ...
是は舊宰(もとのみこともち)伊預部馬養連(いよべのうまかいの...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|丹後国|京都府東北部、丹後半島あたりの国。『続日本紀』和...
|日置(ひおき)|丹後半島東南の宮津市日置該当地。雄略紀に...
|筒川(つつかわ)|現在の伊根町に属する。紀では「管川」と...
|人夫|古訓「たみ」|
|日下部首|日下部(くさかべ)の伴造(ともみやつこ)たちの...
|嶼|音は「ショ」、訓は「シマ」。嶼子は嶋子と同じ。|
|風流|古訓「みやび」|
|舊宰|訓「もとのみこともち」。「舊」は「旧」の旧字体に同...
|伊預部馬養連|持統・文武朝の文人。丹波国守。大宝律令の撰...
|所由|古訓「こと」。|
この冒頭部には、いくつか重要な情報が記されている。
①舞台を「丹後国」とするこの記事は和銅6年(713)以降に書...
→雄略紀は「丹後国」設置(713年)以前の古い国名に依拠して...
②浦嶋子は、この地方では地元の豪族と見られる日下部氏の始祖...
③『丹後国風土記』とは別に、伊預部馬養連(702年没)という...
→伊預部馬養連の「浦嶋子伝」は702年以前の成立だから、雄略...
>''本文と書き下し文②''
長谷朝倉宮御宇天皇御世
(省略)
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|長谷朝倉御宇天皇|雄略天皇を指す。「御宇」の古訓は「あめ...
|五色亀|五色(青・白・赤・黒・黄の中国の説に対応)の亀は...
|人宅|古訓「ひとざと」。|
|海庭|古訓「うなばら」。|
|女娘|古訓「をとめ」。|
|微咲|古訓「ほほえみ」。|
|勝|「かつ」ではなく、「たえる」意。|
|就|「就」は「つく」の意。風雲についてとは、風雲に乗って...
|天上仙家|天空に住む天仙。古訓は「あめのひじりのいへ」。|
|愛|古訓「うつくしみ」。|
|賤妾|古訓「やつこ」。女が自分を卑下した言い方。|
|畢(ヒツ)|「おえる」の意。|
|許不|「許可」か「不許可」かという諾否。古訓「いなせ(否...
|触|物事に触れて心が動くことで、ここでは心変わりの意。|
|蓬山|神仙境の蓬莱山の略。古訓「とこよのくに」。|
|闕臺|古訓「うてな」。宮城の門。|
|晻(アン)|「くらい」の意。|
|楼堂|古訓「たかどの」。二階建ての建物|
|玲瓏(レイロウ)|美しく照り輝くさま。|
>''要点整理''
①時代は雄略天皇の時代のこと→『日本書紀』と同じ。
②嶋子の釣った五色の亀が乙女となる→『日本書紀』では大亀
③乙女の方が風流な嶋子を見そめて近づいた→独自の記述
④乙女は「仙家の人」であり、「神女」と認識されている。
⑤二人が向かうのは蓬山→『日本書紀』の蓬莱山に同じ。
『日本書紀』雄略紀と類似しているが、内容は『丹後国風土記...
#endregion
***第十一講目の内容 [#ib872ca7]
#region(否定)
''否定''
>''否定を示す漢字''
①不・弗(~ず)※条件文の場合(~ずンバ)・(~ざレバ)
②無・莫・勿・毋(~なシ)※命令文・禁止文の場合(~なカレ)
③非・匪(~ニあらズ)
>''練習問題''
①其人弗能応也。
※能...あたふ(~できる)
→其の人応ふる能はざるなり。
②我心匪石。
→我が心は石に匪ず。
③非疾痛害事也。
※疾痛...痛み
※害...支障がある
→疾痛事を害するに非ざるなり。
④過則勿憚改。
※則...すなわチ。意味としては特に訳さない助辞
→過ちては則ち改むるを憚る勿かれ。
|CENTER:全部否定|CENTER:部分否定|h
|常不~&br;(つねニ~ず)&br;「いつも~ない」|不常~&br;...
|必不~&br;(かならズ~ず)&br;「必ず~ない」|不必~&br;...
|盡不~&br;(ことごとク~ず)&br;「すべて~ない」|不盡~&...
|復不~&br;(まタ~ず)&br;「今回もまた~ない」|不復~&br...
|構文|書き下し文|現代語訳|h
|未嘗~|いまダかつテ~ず|今まで一度も~ない|
|不敢~|あへテ~ず|決して~ない|
|例文|書き下し文|現代語訳|h
|必不&color(Red){&size(10){レ};};有&color(Red){&size(10){...
|不&color(Red){&size(10){ニ};};必有&color(Red){&size(10){...
|我復不&color(Red){&size(10){ニ};};努力&color(Red){&size(...
|我不&color(Red){&size(10){ニ};};復努力&color(Red){&size(...
|未&color(Red){&size(10){ニ};};嘗見&color(Red){&size(10){...
#endregion
#region(蓬莱山(とこよ)の浦嶋子)
>''記述''
-''本文''
即立前引導、進入于内。
女娘父母共相迎、揖而定坐。
于斯称説人間仙都之別、談義人神偶會之嘉。
乃薦百品芳味。兄弟姉妹等挙杯献酬。隣里幼女等紅顔戯接。
仙哥寥亮、神儛透迤。其爲歓宴、萬倍人間。
於茲不知日暮。但黄昏之時、群仙侶等漸々退散。
即女娘獨留。雙肩接袖、成夫婦之理。
-''書き下し文''
即ち立ちて前に引導(みちび)き、内に入り進む。
女娘の父母、共に相ひ迎へ、揖(をろが)みて定めて坐す。
斯(ここ)に人間(ひとのよ)・仙都(とこよ)の別(わかち...
乃ち百品の芳しき味(あぢはひ)を薦(すす)む。兄弟姉妹等 ...
仙哥(とこよのうた)は寥亮(まさやか)にして、神の儛は透...
茲(ここ)に日の暮るるを知らず。但し黄昏(たそがれ)の時...
即ち女娘は獨り留まれり。肩を雙べ袖を接(まじ)へて、夫婦...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|引導|古訓(二字で)「みちびき」|
|揖(ユウ)|胸の前に両手を組み合わせて行う挨拶の礼法。古...
|斯|訓「ここ」|
|称説|申し述べる。古訓(二字で)「とく」。|
|人間|古訓「ひとのよ」。|
|仙都|古訓「とこよ」。|
|談義|古訓「かたる」。|
|偶|たまたまの意。古訓「たまさか」。|
|献酬|杯をやり取りすること。古訓「とりかわす」。|
|戯接|古訓「たはぶれまじる」。|
|仙哥|古訓「とこよのうた」。|
|寥亮(リョウリョウ)|声や音が澄んで通るさま。古訓「まさ...
|透迤(トウイ)|道や川が曲がりくねるさま。ここでは身を緩...
|歓宴|古訓「うたげ」。|
|萬倍|古訓「よろづまされり」。|
|茲|訓「ここ」。|
|群仙侶等|古訓「とこよびとたち」。「群」は「おおく」「も...
|漸々|次第々々に。古訓「やうやく」。|
|雙|ふたつ並ぶこと。|
|接|まじわる。まじえる。|
|成夫婦之理|「理」は「ことわり」。古訓は「まぐはひ」。|
>''まとめ''
浦嶋子が訪れた蓬山(常世)は、中国的な仙界のイメージ。
そこでは女娘だけでなく、その父母や兄弟姉妹、近隣の幼女ま...
浦嶋子と女娘は結婚し、肉体的にも結ばれる。その場面も具体...
しかし、浦嶋子は望郷の思いに耐えられず、故郷に帰ることに...
つまり、子ども向けの昔話や童話ではなく、大人の読み物であ...
#endregion
***第十二講目の内容 [#i1913488]
#region(疑問)
''疑問''
文脈判断が重要。機械的な判断は危険。
|用法|書き下し|現代語訳|備考|h
|誰~|たれカ~|誰が~か|「誰~者」で「たれカ~ものゾ」(訳...
|~|たれヲカ~|誰を~か||
|孰~|たれカ~|誰が〔どれが〕~か|多数から選ぶ|
|~|いづレカ~|どちらが~か|二者択一|
|何~|なにヲカ~|何を~か||
|何・奚・胡~|なんゾ~|どうして~か||
|何為・奚為・胡為~|なんすれゾ~|どうして~か|「何為者」...
|安・悪・焉|いづくニカ~|どこに~か|場所を聞く|
|~|いづクンゾ~|どうして~か|理由を聞く|
|奈何・如何・若何|いかん・いかんセン|どうしよう|「奈A何」...
|何如|いかん|〔状態〕どうだろうか/〔理由〕どうしてだろう||
|幾何|いくばくゾ|〔数量〕どれくらいだろうか||
|何以|なにヲもっテカ|〔理由〕どうして~か/〔手段〕何によ...
>''練習問題''
①誰為&color(Red){&size(10){ニ};};此計&color(Red){&size(10...
→
②弟子孰為&color(Red){&size(10){レ};};好&color(Red){&size(...
→
③何謂&color(Red){&size(10){ニ};};浩然之気&color(Red){&siz...
→
④何能爾。
※爾...「しかる」(そのように)
→
⑤何為不&color(Red){&size(10){レ};};去也。
※也...疑問文の場合の訓は「や」
→
⑥子将&color(Red){&size(10){ニ};};安之&color(Red){&size(10...
※之...「ゆく」
→
⑦天下悪乎定。
※乎...置き字
→
⑧奈&color(Red){&size(10){レ};};若何。
※若...「なんぢ」(あなた)
→
⑨以&color(Red){&size(10){ニ};};子之矛&color(Red){&size(10...
※子...あなた
※陥...「とほす」(突くこと)
→
⑩其賢幾何
#endregion
#region(帰還後の浦嶋子)
''帰還後の浦嶋子''
『丹後国風土記』の浦嶋子の記事(嶋子が蓬莱を訪れて、帰郷す...
多くの人物が登場し、一般的な「浦島太郎」とは違いがある。...
二人は別れ別れになり、悲恋に終わるが、明らかにこのお話は...
つまり、子どもための童話などではなく、大人のための読み物...
>''記述(抜粋)''
-''本文''
忽到本土筒川郷。即瞻眺村邑、人物遷易、更無所由。
爰問郷人曰、水江浦嶼子之家人今在何處。
郷人答曰、君何處人、問旧遠人乎。吾聞古老等相伝、先世有水...
今経三百歳餘者、何忽問此乎。即銜棄心、
-''書き下し文''
忽ちに本土(もとつくに)の筒川の郷(さと)に到る。即ち村...
爰(ここ)に郷人に問ひて曰く、水江の浦嶼子の家人は今 何處...
吾 古老等の相ひ伝ふるを聞くに、先の世に水江の浦嶼子あり、...
何ぞ忽ち此を問ふや。即ち棄てし心を銜(いだ)きて、
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|本土|古訓「もとつくに」|
|郷|むら。行政区画の「郷(きょう)」ではない。|
|瞻眺(センチョウ)|瞻は「見る」、眺は「ながめる」。古訓...
|村邑|村も邑も「むら」の意。古訓は「むらざと」。|
|遷易|易は「かえる」「かわる」の意。|
|爰|訓「ここ」。|
|旧遠|古訓は二字で「むかし」。|
|者|古訓「てへり」。「...と言った」の意。ここでは「者なり...
|忽|ここでの「タチマチ」は「すぐ」ではなく「おもいがけな...
|銜(カン)|「口に含む」が本来の意だがここでは「胸に含む...
|棄心|古訓「すてしこころ」。「心ヲ棄テ」とは訓じない。放...
|親|古訓「したしきもの」。ここは「おや」の意ではない。|
|旬日|十日のこと。|
|感思|古訓は二字で「したひ」。|
|神女|古訓「かむおとめ」。|
>''歌''
-''本文''
即未瞻之間、芳蘭之體率于風雲、翻飛蒼天。嶼子即乖違期要。
還知復難會。廻首踟蹰、咽涙徘徊、于斯拭涙。哥曰
〽[※万葉仮名]
等許餘弊尓(とこよへに)
久母多智和多留(くもたちわたる)
美頭能睿能(みづのえの)
宇良志麻能古賀(うらしまのこが)
許等母知和多留(こともちわたる)
#br
-''書き下し文''
即ち未だ瞻(みえ)ざる間、芳蘭(かぐわしき)體(すがた)...
還(ま)た復び會ひ難きことを知る。首(かしら)廻らして踟...
〽
常世べに雲立ち渡る水江の浦嶼の子が言持ち渡る
#br
(この後も「神女」の返歌やそれに対する嶋子の返歌、そして...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|未瞻之間|瞻は「見る」。「見えざる間」とは一瞬のこと。|
|芳蘭|蘭の花のような良い香のこと。古訓は二字で「かぐわし...
|體|「体」に同じ。古訓は「すがた」。|
|乖(カイ)|そむくこと。|
|還|訓「また」。|
|踟蹰(チチュウ)|ためらうこと。古訓は二字で「たたずみ」。|
>''まとめ''
★浦嶋子のお話は、ラブ・ストーリーの要素が強い。(伊予部連...
★「蓬山」など神仙思想が見られ、中国文化の影響を受けている...
★『丹後国風土記』の浦嶋子伝では、老人になったのではなく、...
#endregion
***第十三講目の内容 [#w8fd3513]
***第十四講目の内容 [#qe0c8cbc]
***第十五講目の内容 [#yd139e2f]
}}
*コメント [#comment]
#pcomment(,reply,20,)
終了行:
#include(漢文学項目,notitle)
#contents
|BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c
|BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):''分類''|''国文学科選択必修(A...
|区分|[[国文学科]]科目/一般(人数過多の場合は抽選)|
|履修条件||
|単位数|2|
|講師|[[袴田光康]]|
|学位等|文理学部(学士(文学))|
*概要 [#q1f88e6e]
全15回の授業の内、前半の第7回までの授業では律令国家にお...
東アジアの漢字文化圏における日本の漢詩の独自性について講...
第9回以降の後半の授業では昔話の「浦島太郎」で知られる浦...
その変遷を辿りながら、具体的な漢文訓読の技術を学修してい...
長文の作品の場合には授業内で全文を読むことをできないこと...
#br
グループワークや質問されることはない。
評価は2回のレポート課題によってする。
&color(Red){2024年から敗者復活課題といったものを出さなく...
#br
この科目は文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP2...
*講師の印象 [#ucc03ead]
宿題や予習復習を重視している。
*令和七年度(2025年度) [#a2becd30]
漢文学1と同じく後期のみ開講。漢文学1と一緒に取るのがお...
試験期間中は授業資料の配信が停止されて見られなくなるので...
試験範囲は基礎文法(使役とか比較とかも含む)とこれまで出さ...
#style(class=submenuheader){{
**後期
}}
#style(class=submenu){{
|BGCOLOR(#555):COLOR(White):200|520|c
|BGCOLOR(#fc2):COLOR(Black):授業形態|対面授業(稀に課題研...
|日程/教室|水曜日 二限目/3405(三号館四階五番教室)|
***第一講目の内容
授業の説明。フィードバックは一回目の課題のみとのこと。他...
***第二講目の内容
#region(授業内容)
''授業内容''
-''漢字の概要''
漢字は古代中国に発祥した表語文字である。表語文字とは、一...
その起源は紀元前1300年頃に遡と言われ、10万字以上にのぼる...
漢字は中国・台湾・モンゴル・朝鮮半島・日本・ベトナム・マ...
現在は中国語・日本語以外は殆ど用いられなくなった。それで...
-''漢字の起源''
漢字の起源については、『淮南子』や『説文解字』などには黄...
蒼頡は鳥の足跡を見て、足跡の形から鳥の種類がわかるように...
実際に確認される最古の漢字の起源は、殷王朝(BC17世紀頃~BC...
甲骨文字とは、占いに用いられた亀の甲羅や牛の骨にその占い...
甲骨文字は絵に近い形の象形文字で、これが漢字の源流となっ...
-''漢字の造字法による種類''
甲骨文字は絵文字のような象形文字を基本としたが、一部には...
象形文字...「日」や「山」のように事物の形を象った文字
指事文字...「上」や「下」のように抽象的概念を表した文字
会意文字...「休」や「男」のように象形文字や指事文字を組み...
形声文字...「花」や「江」のように意味を表す部分と発音を表...
こうした造字法により、多くの文字が作り出されたが、漢字の...
-''字体の変遷''
|王朝|年代|文字|h
|殷|BC1600~BC1028年頃|甲骨文字|
|周|BC1100~BC256年頃|金石文|
|秦|BC221~BC206年頃|小篆|
|漢|BC206~220年頃|隷書|
|六朝|222~589年頃|楷書|
甲骨文字の次に登場するのが、殷・周(BC11世紀~BC8世紀...
特に周代以降の金文においては、形声文字が増えるという特徴...
周王朝が滅びると、群雄割拠の春秋戦国時代に入り、地方ご...
統一した書体は&color(Red){小篆(篆書)};と呼ばれている。...
篆書は曲線等の装飾的な要素があった為、漢王朝(BC202~220...
これが&color(Red){隷書};と呼ばれる書体である。隷書を走り...
また漢代の末期から六朝時代(222~589年)かけて隷書をより直...
殷の甲骨文字→周の金石文→秦の篆書→漢の隷書→六朝の楷書と...
隋(581~618年)や唐の時代(618~978年)に入ると、楷書が一般...
宋朝以降は印刷とも結びついて楷書が漢字の書体として標準化...
-''日本への伝来''
漢字の伝来については『古事記』や『日本書紀』の中に応神天...
これらの書物とともに漢字が伝わったということになる。考古...
471年のものと推定されている。文献的にも考古学的にも漢字が...
※王仁は「わに」と読む。
※稲荷山古墳出土の鉄剣には「辛亥年七月中記/乎獲居(ヲワケ...
#endregion
#region(課題と答え(返り点のみ))
''課題と答え(返り点のみ)''
・次の白文に返り点と送り仮名を付しなさい。
①我読書(ワレショヲヨム)
→我&size(10){レ};読&size(10){レ};書
②我好読書(ワレショヲヨムヲコノム)
→我好&size(10){レ};読&size(10){レ};書
③我与彼書(ワレカレニショヲアタフ)
→我与&size(10){二};彼書&size(10){一};
④我与書於彼(ワレショヲカレニアタフ)
→我与&size(10){二};書於彼&size(10){一};
⑤平-定天下(テンカヲヘイテイス)
→平-定&size(10){二};天下&size(10){一};
⑥不遠千里之道(センリノミチヲトオシトセズ)
→不&size(10){レ};遠&size(10){二};千里之道&size(10){一};
⑦不入虎穴、不得虎子(コケツニイラズンバ、コシヲエズ)
→不&size(10){レ};入&size(10){二};虎穴&size(10){一};、不&s...
#endregion
***第三講目の内容
#region(授業内容)
''授業内容''
-''『古事記』について''
漢字文化を吸収する中で、中国に倣って『古事記』や『日本書...
『古事記』は現存する日本最古の歴史書で、その成立は元明天...
内容は天地の開闢から始まり、神々の神話を記した神代から、...
その序によると、稗田阿礼が誦習した「帝皇日継(帝紀)」や...
「誦習」とは、単なる暗誦ではなく、書物を口に出して繰返し...
漢字の伝来については『古事記』中巻の&color(Red){応神天皇...
漢文には返点や送仮名が、また欄外には頭注の見出しが付され...
-''『日本書紀』について''
『日本書紀』は勅令で編纂された最初の国史である。編年体で...
その成立は養老4年(720)で、『古事記』の成立から僅か8年後...
5世紀から6世紀にかけて朝鮮半島の百済などから日本に移り住...
中国に倣って国史が編纂された際には、そうした漢文に習熟し...
-''漢字伝来記事の比較''
訓読の方法を身に付ければ、1300年前の史料でも、あるいは中...
漢字の文献史料を読む際には大変便利であり、中国文化と密接...
古事記』と『日本書紀』の両方に漢字伝来の記事があるが、違...
『古事記』では百済の和邇吉師が『論語』と『千字文』を齎し...
『千字文』の成立は6世紀前半であり、応神朝(4世紀後半~5世...
これらの記事は史書編纂にも関与したらしい渡来系氏族の阿直...
-''漢文の読み方''
まず文の構造に注目し、主語(省略されていることもある)・述...
この時、固有名詞(人名や地名)がわかると文の構造が把握し...
ただし、訓の読み方や読み添えは、一つだけの正解があるとい...
訓読はあくまでも漢文の内容を理解するための手段であり、解...
#endregion
#region(課題と答え(返り点のみ))
''課題と答え(返り点のみ)''
「一」「ニ」「三」点で足りない場合には、「上」「中」「下...
①汝知我欲読古人書。(ナンジハワレノコジンノショヲヨマント...
→汝知&size(10){三};我欲&size(10){レ};読&size(10){二};古人...
②不聞人従日辺来。(ヒトノジツペンヨリキタルヲキカズ) ※...
→不&size(10){レ};聞&size(10){下};人従&size(10){二};日辺&s...
③悪称人之悪者。(ヒトノアクヲショウスルモノヲニクム) ※...
→悪&size(10){三};称&size(10){二};人之悪&size(10){一};者
④我不以其所-以養人者害人。(ワレハソノヒトヲヤシナフユエ...
→我不&size(10){乙};以&size(10){下};其所-&size(10){二};以...
#endregion
***第四講目の内容
#region(基礎漢文法(再読文字))
''基礎漢文法(再読文字)''
「未」のように「いまだ~ず」と二度訓読する字を再読文字と...
|字|書き下し|現代語訳|h
|未|いまだ~ず|まだ~ない|
|将|まさニ~セんとす|今にも~しようとする|
|当(當)|まさニ~べシ|当然~すべきだ|
|応(應)|まさニ~べシ|きっと~に違いない|
|宜|よろシク~べシ|ぜひ~した方がいい|
|須|すべかラク~べシ|必ず~しなければならない|
|猶|なホ~ノ(ガ)ごとシ|ちょうど~のようだ|
|蓋|なんゾ~ざル|どうして~しないのか|
#endregion
#region(授業内容)
''授業内容''
>補足
〈訓点〉照古王、&color(Navy){以};&size(10){&color(Red){二...
〈訓読文〉照古王、牡馬壱疋・牝馬壱疋ヲ以テ阿知吉師ニ付シ...
※初めの「以」は訓読が必要(手段方法の意)。二つ目の「以」...
>補足
〈訓点〉十六年春二月、王仁来&color(Navy){之};。則太子菟道...
〈訓読〉十六年ノ春二月ニ、王仁来タリ。則チ太子菟道稚郎子...
※注意したいのは「之」の訓じ方。「王仁来之」の「之」は不読...
※「師之」の「之」は不読として単に「師トス」と訓じてもいい...
※文末の「之」は置字として不読とするのが原則。ただし、文脈...
-''『懐風藻』について''
『懐風藻』は日本最古の漢詩集。その成立は、序文によると奈...
編者については不明だが、近江朝から奈良時代にかけての64名...
その詩の殆どが行幸や宴会などの公的な場で作られた五言詩で...
-''『懐風藻』成立の背景''
『古事記』や『日本書紀』の編纂には漢字文化に精通した渡来...
公文書も全て漢字で表記するようになったので、政治に携わる...
隋や唐の諸文化を模倣して律令国家を形成していく中で、中国...
漢詩を詠むことは、単に唐風趣味とか文学的教養の問題ではな...
|>|『懐風藻』の時代区分と代表的詩人|h
|第一期 近江朝時代(662~672年)|大友皇子|
|第二期 天武・持統朝時代(672~697年)|大津皇子・持統天皇...
|第三期 文武朝時代(697~707年)|文武天皇|
|第四期 奈良時代前期(707~729年)|長屋王とその文学サロン|
|第五期 奈良時代後期(729~751年)|藤原総前・藤原宇合|
-''『懐風藻』の序''
>''序文冒頭''
対句表現に着目して改行すると分かりやすい。
逖聴&color(Red){&size(10){ニ};};前修&color(Red){&size(10)...
襲山降蹕之世、橿原建邦之時、
天造草創、人文未&color(Red){&size(10){レ};};作。
至&color(Red){&size(10){ニ};};於神后征坎品帝乗乾&color(Re...
百済入朝啓&color(Red){&size(10){ニ};};龍編於馬厩&color(Re...
高麗上表図&color(Red){&size(10){ニ};};烏冊於烏文&color(Re...
王仁始導&color(Red){&size(10){ニ};};蒙於軽嶋&color(Red){&...
辰爾終敷&color(Red){&size(10){ニ};};教於訳田&color(Red){&...
遂使&color(Red){&size(10){下};};俗漸&color(Red){&size(10)...
人趨&color(Red){&size(10){中};};斉魯之学&color(Red){&size...
逮&color(Red){&size(10){ニ};};乎聖徳太子&color(Red){&size...
設&color(Red){&size(10){レ};};爵分&color(Red){&size(10){...
肇制&color(Red){&size(10){ニ};};礼儀&color(Red){&size(10)...
然而専崇&color(Red){&size(10){ニ};};釈教&color(Red){&size...
未&color(Red){&size(10){レ};};遑&color(Red){&size(10){ニ}...
>''訓読の一例''
逖ク前修ヲ聴キ、
遐ニ載籍ヲ観ルニ、
襲山降蹕ノ世、橿原建邦ノ時、
天造草創ニシテ、人文未ダ作ラズ。
神后征坎シ品帝乗乾ニ至リテ、
百済入朝シ龍編ヲ馬厩ニ啓キ、
高麗上表シ烏冊ヲ烏文ニ図ク。
王仁始メテ蒙ヲ軽嶋ニ導キ、
辰爾終ヒニ教ヲ訳田ニ敷ク。
遂ニ俗ヲシテ洙泗ノ風ニ漸メ、
人ヲシテ斉魯ノ学ニ趨カシム。
聖徳太子ニ逮ビテ、
爵ヲ設ケ官ヲ分ケ、
肇メテ礼儀ヲ制ス。
然レドモ専ラ釈教ヲ崇ビ、
未ダ篇章ニ遑アラズ。
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|逖(テキ)|遠い、遥かの意。|
|遐(カ)|遠い、遥かの意。|
|前修|先人の教え。|
|載籍|昔から伝わる書籍。|
|襲山降蹕(ヒツ)之世|天孫ニニギノミコトが高千穂に降臨し...
|橿原建邦之時|初代神武天皇が橿原(かしはら)に初めて宮を...
|神后征坎(カン)|神功皇后の朝鮮出兵。|
|品帝乗乾|応神天皇(品陀和気命)の即位。|
|龍編|儒教の書物。|
|高麗|朝鮮半島北部の高句麗。|
|上表|君主に文を奉ること。|
|烏(ウ)冊|烏(カラス)の羽に書いた文書。|
|烏文|文字のこと。|
|軽嶋(かるしま)|「軽の坂」があった軽の地。|
|辰爾(シンジ)|王辰爾。朝鮮半島から来た学者。高句麗の烏...
|訳田(おさだ)|奈良の巻向の地。通訳などがいた外国文化の...
|洙泗之風・斉魯之学|孔子の教え。|
|釈教|仏教。|
|篇章|文学的な文章。|
>''現代語訳''
遠く昔の先人の教えを聴き、遥かに昔の書籍を観ると、天孫降...
神功皇后が朝鮮に出兵し、その息子の応神天皇が即位するに至...
王仁は初めて漢籍の啓蒙を軽嶋で広め、王辰爾は終にその教え...
こうして遂に日本に孔子の教えを勧め、人々を儒教に向かわせ...
聖徳太子に及んで、爵位を設け官位を分け初めて礼儀を制度と...
#endregion
#region(課題と答え)
''課題と答え''
今回の課題は『懐風藻』の序の一部(下記のもの)を書き下すこ...
>''課題''
及&size(10){&color(Red){レ};};至&color(Red){&size(10){ニ}...
恢&color(Red){-};&color(Red){&size(10){ニ};};開帝業&color...
道格&color(Red){&size(10){ニ};};乾坤&color(Red){&size(10)...
既而以為、
調&size(10){&color(Red){レ};};風化&size(10){&color(Red){...
莫&size(10){&color(Red){レ};};尚&color(Red){&size(10){ニ}...
潤&size(10){&color(Red){レ};};徳光&size(10){&color(Red){...
爰則建&color(Red){&size(10){ニ};};庠序&color(Red){&size(1...
定&color(Red){&size(10){ニ};};五礼&color(Red){&size(10){...
憲章法則、規模弘遠。
夐古以来、未&color(Red){&size(10){ニ};};之有&color(Red){&...
於&size(10){&color(Red){レ};};是三階平煥、四海殷昌。
旒纊無為、巌廊多&color(Red){&size(10){レ};};暇。
旋招&color(Red){&size(10){ニ};};文学之士&color(Red){&size...
当&color(Red){&size(10){ニ};};此之際&color(Red){&size(10)...
宸翰垂&size(10){&color(Red){レ};};文、賢臣献&color(Red){&...
雕章麗筆、非&color(Red){&size(10){ニ};};唯百篇&color(Red)...
但時経&color(Red){&size(10){ニ};};乱離&color(Red){&size(1...
言念&color(Red){&size(10){ニ};};湮滅&color(Red){&size(10)...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|淡海先帝|天智天皇のこと。|
|受命|天命を受けて即位すること。|
|恢開(カイカイ)|大きく広げること。|
|弘闡(コウセン)|広く明らかにすること。|
|皇猷(コウユウ)|天皇のはかりごと、政治上の計画。|
|乾坤(ケンコン)|天地のこと。|
|以為|思う(オモヘラク、オモフニなどと訓ずる)。|
|庠序(ショウジョ)|学校。|
|茂才|優れた才能を持つ者。|
|五礼|祭祀・葬祭・賓客・軍事・冠婚の五つの礼。|
|憲章法則|憲法と法律。|
|弘遠|広く深遠なこと。|
|夐古(ケイコ)|昔のこと。|
|三階平煥|宮中が平安なこと。|
|四海殷昌|天下(日本全国)が賑やかで栄えること。|
|旒纊(リュウコウ)|帝の冠りの飾り。転じて天皇そのものを...
|巌廊(ガンロウ)|朝廷。|
|旋|しばしば。|
|置醴(チレイ)之遊|酒を交えて詩を作る宴会。|
|宸翰(シンカン)|天皇の筆(天皇が書いた文書や筆跡)。|
|雕章(チョウショウ)麗筆|美しい文章。|
|乱離|争乱。ここでは壬申の乱を指す。|
|煨燼(カイジン)|焼けて灰になること。|
|言|ここに。|
|湮滅(インメツ)|消滅。|
|輙(チョウ)|すなわち。|
>''書き下し文''
淡海ノ先帝ノ受命ニ至ルニ及ビ 、
帝業ヲ恢開(かいかい)シ、皇猷(こうゆう)ヲ弘闡(こうせん...
道ハ乾坤ニ格(いた)リ、功ハ宇宙ニ光ル 。
既ニシテ以為(おもへ)ラク 、
風ヲ調(ととの)へ俗ヲ化スニ、文ニ尚(たっと)キハ莫ク 、
徳ヲ潤シ身ヲ光(て)ラスニ、孰(いず)レカ学ニ先ナラント 。
爰ニ則チ庠序(しょうじょ)ヲ建テ、茂才(もさい)ヲ徴(め...
五礼ヲ定メ、百度ヲ興ス 。
憲章法則、規模弘遠ニシテ 、
夐古(けいこ)以来、未ダ之レ有ラザルナリ 。
是ニ於イテ三階平煥(へいかん)ニシテ、四海殷昌(いんしょ...
旒纊(りゅうこう)無為ニシテ、巌廊(げんろう)暇多シ 。
旋(しばしば)文学ノ士ヲ招キ 、
時ニ置醴(ちれい)ノ遊ヲ開ク 。
此ノ際ニ当リ 、
宸翰(しんかん)文ヲ垂レ、賢臣頌(しょう)ヲ献ズ 。
雕章麗筆(ちょうしょうれいひつ)、唯ダ百篇ニ非ラズ 。
但シ時ニ乱離ヲ経テ、悉(ことごと)ク煨燼(かいじん)ニ従...
言(ここ)ニ湮滅(いんめつ)ヲ念ヒ、輙(すなわ)チ傷懐(...
#endregion
***第五講目の内容
大友皇子の伝記の訓読が今回の課題。
#region(授業内容と課題の答え)
''授業内容と課題の答え''
『懐風藻』の巻頭には、大友皇子の伝記と詩二首が載せられて...
>''大友皇子(648~672年)''
天智天皇(626~672年)の第一皇子で、671年に太政大臣となっ...
天智天皇は大友皇子を後継者とすることを密かに重臣たちに誓...
天智天皇が崩御すると、東宮であり叔父であった大海人皇子(...
これに敗れた大友皇子は首を括って自害した。
>''大友皇子の伝記の訓読文''
皇太子ハ、淡海ノ帝ノ長子ナリ。魁岸奇偉、風範弘深、眼中精...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|魁岸奇偉|逞しく立派なさま。|
|風範弘深|風采が深遠で立派なこと。|
|眼中精耀|眼が鮮やかに光るさま。|
|顧盼煒燁|瞳を巡らすと輝くさま。|
|劉徳高|天智四年に来朝した唐の使者。|
|風骨|風采と骨格。|
|天中洞啓|天の門が大きく開くこと。|
|擎(ケイ)|かかげる。|
|腋底|掖庭に同じ。宮門の脇の小門。|
|便|訓「すなわち」。|
|藤原内大臣|藤原鎌足。|
|聖朝万歳之後|天智天皇の御代の後。|
|巨猾|とても悪賢い者。|
|間釁(カンキン)|隙間を狙うこと。|
|惟|訓「ただ」。|
|箕帚(キシュウ)之妾|掃除などのお世話をする人。すなわち...
|年甫|はじめて。やっと~したばかり。|
|百揆|全ての役人。百官。|
|試|官吏登用の試験。|
|材幹|物事をやりこなす能力。|
|群下|群臣たち。|
|学士沙宅紹明(サタクショウメイ)&br;塔本春初(トウホンシ...
|雅|いつも。|
|博古|古い文物について学ぶこと。|
|洪学|広い学識。|
|天命|寿命。|
#br
《《返点についての補足》》
-1.同一の文の中で「一」「ニ」点を繰り返して用いることは...
-2.一二点は「一」から「三」までで、「四」は使えないので...
#endregion
***第六講目の内容
#region(使役)
''使役''
|使役の文の型|訓読|意味|h
|A主語+〔使・令・教・遣〕+B使役の対象+C動作(未然)+D...
|字|>|例文|備考|h
|~|原文|訓読文|~|h
|使|王怒使人殺其父。|王は怒りて人をして其の父を殺さしむ。||
|令|令将軍攻城門。|将軍をして城門を攻めしむ。||
|教|天帝使我長百獣。|天帝我をして百獣の長たらしむ。|「長...
|遣|天教人相愛。|天は人をして相ひ愛せしむ。|「愛す」は他...
#endregion
#region(授業内容)
''授業内容''
>''大友皇子の漢詩''
-【原文】
五言。侍宴。一絶
皇&color(Red){-};明&color(Red){&size(10){二};};光日&color...
帝&color(Red){-};徳&color(Red){&size(10){二};};載天&color...
三&color(Red){-};才&color(Red){&size(10){二};};並泰&color...
万&color(Red){-};国&color(Red){&size(10){二};};表臣&color...
-【訓読】
五言。宴ニ侍ル。一絶。
皇明ハ日月ト光リ、
帝徳ハ天地ト載ス。
三才並ビニ泰昌ニシテ、
万国ハ臣義ヲ表ス。
-【通釈】
我が天子の威光は太陽や月のように光り輝き、
我が天子の仁徳は天や地のように全てを載せ覆う。
天地人の三才は、(その天子の威光と仁徳によって)安らかで...
(それゆえ)万国が朝貢して我が天子に臣下の礼を表すのであ...
-【解説】
天智天皇を褒め称えた一首。「侍宴」と題することから、天皇...
あるいは「万国」とあることからすると、外国の使節を迎えた...
詩中の語句には『文選』に使われた言葉が用いられている。そ...
中国をモデルとして天皇を中心とする律令国家を目指した近江...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|皇明|次句の「帝徳」と対になる。「皇」は帝と同じく天子の...
|日月|太陽と月。訓読の「ト」は「~の如く」の意。次句と対...
|帝徳|帝は天帝の命を受けた皇帝の意で、徳はその仁徳。「皇...
|載天地|天は全てを覆い、地は全てを載せる。「覆載」(ふう...
|三才|天・地・人。宇宙の万物を指す。『文選』「西征賦」に...
|泰昌|安定し、繁栄していること。|
|万国|すべての国。『文選』「西都賦」に「観万国也」とある。|
|臣義|臣下としての礼儀。ここでは、国々の使者が天智天皇の...
#endregion
***第七講目の内容
#region(受身)
''受身''
見・被・為・所の字には下の動詞を受身にする用法がある。
於・乎・于の下に動作主が示されている場合は受身として読む...
|>|>|CENTER:''文法''|h
|型|訓読|訳|h
|〔見・被・為・所〕+ A 動詞|A らル|A される|
|動詞+〔於・乎・于〕+ B 動作の主|B に A らル|B に A さ...
|体言+為+ B 体言+所+C動作|A ハ B ノCスル所ト為ル|A は...
|>|>|例文|h
|原文|訓読文|訳文|
|信而見疑、忠而被謗。|信にして疑はれ、忠にして謗らる。|信...
|義経為頼朝所追。|義経は頼朝の追ふ所と為る。|義経は頼朝に...
|唯辱於奴隷之手。|唯だ奴隷の手に辱めらる。|ただ奴隷の手で...
#endregion
#region(授業内容)
''授業内容''
>''大津皇子(663~686年)''
壬申の乱で大友皇子に勝利した天武天皇の皇子。
『日本書紀』では第三子とされているが、『懐風藻』では長子...
母は天智天皇の皇女である大田皇女(持統天皇の姉)であった...
母方の後見が無くなったため、持統天皇を母とする草壁皇子が6...
686年に天武天皇が崩御すると、大津皇子は謀反の疑いをかけら...
>''大津皇子の「伝記」''
-【本文】
皇子者浄御原帝之長子也。
状貌魁梧、器宇峻遠。幼年好学、博覧而能属文。
及壮愛武、多力而能撃剣。
性頗放蕩、不拘法度。
降節禮士、由是人多附託。
時有新羅僧行心。解天文卜筮。
詔皇子曰、太子骨法、不是人臣之相。
以此久在下位、恐不全身。
因進逆謀。迷此詿誤、遂図不軌。
嗚呼惜哉。蘊彼良才、不以忠孝保身。
近此姧豎、卒以戮辱自終。
-【書き下し文】
皇子ハ、浄御原帝ノ長子ナリ。
状貌魁梧、器宇峻遠ナリ。幼年ニシテ学ヲ好ミ、博覧ニシテ能...
壮ニ及ビテ武ヲ愛シ、多力ニシテ能ク剣ヲ撃ツ。
性頗ル放蕩ニシテ、法度ニ拘ワラズ。
節ヲ降シ士ヲ禮シ、是ニ由リテ人多ク附託ス。
時ニ新羅僧行心有リ。天文卜筮ヲ解ス。
皇子ニ詔ゲテ曰ク、太子ノ骨法、是レ人臣ノ相ニアラズ。此レ...
因リテ逆謀ヲ進ム。此ノ詿誤ニ迷ヒ、遂ニ不軌ヲ図ル。
嗚呼(ああ)惜シキ哉。彼ノ良才ヲ蘊(つつ)ミ、忠孝ヲ以テ...
此ノ姧豎ニ近ヅキ、卒(つひ)ニ戮辱ヲ以テ自ラ終フ。
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|浄御原帝|天武天皇。|
|状貌魁梧(じょうぼうかいご)|状貌は身体容貌のことで、魁...
|器宇峻遠(きうしゅんえん)|人としての器量が高く優れてい...
|能|訓は「よく」。「~ができる」の意味。|
|属文|「属」は文章を綴(つづ)ること。|
|壮|壮年。|
|頗|とても。非常に。|
|法度|規則、きまりごと。|
|降節禮士|自分の身分(節)をへりくだり、有能な者(士)を...
|行心|新羅僧の名。|
|卜筮(ぼくぜい)|占い。|
|詔|ここでは「告げる」の意。|
|骨法|骨ぐみ、骨の相。|
|相|人相。|
|逆謀|謀反(むほん)。|
|詿誤(かいご)|欺き騙すこと。|
|不軌|規則を守らぬこと。謀反。|
|嗚呼|訓「ああ」、感嘆の語。|
|蘊|包む。|
|姧豎(かんじゅ)|悪賢い者。|
|戮辱(りくじょく)|屈辱。|
|終|命を絶つこと。|
>''大津皇子の漢詩''
※無韻の詩
-【本文】
五言。臨終。一絶。
金烏臨西舎
鼓声催短命
泉路無賓主
此夕誰家向
-【書き下し文】
五言。臨終。一絶。
金烏は西舎を臨み、
鼓声は短命を催す
泉路に賓主は無し
此の夕に誰の家に向ふ
-【訳文】
傾いた太陽は西の建物を照らし
時を告げる太鼓の音は私の短い命をせきたてる
黄泉の道には客人も主人もいないという
この夕べに私は一体誰の家に向かうのであろうか
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|臨終|死を迎えること。|
|一絶|「絶」は絶句体を指す。一首の絶句の意味。ただし、こ...
|金烏(きんう)|太陽。中国では太陽に三本足の烏が居るとい...
|西舎(せいしゃ)|西側にある建物。日が沈む西の空を指す比...
|鼓声(こせい)|時刻を知らせる太鼓の音。当時は中国風に太...
|催(うながす)|催促する。促す。|
|泉路(せんろ)|ここでの「泉」は黄泉(よみ)(死後の世界...
|賓主(ひんしゅ)|「賓(ひん)」は客、「主(しゅ)」はそ...
#endregion
***第八講目の内容
課題研究。各解答の最初に必ず①~⑱の問題番号を明記せねばな...
提出の期限は11月19日(水)午前10:30まで。
#region(課題の答え)
''課題の答え''
-(1)
--①『古事記』
天武天皇が稗田阿礼に帝紀や旧辞を読み習わせ、元明天皇が...
--②王仁(和邇)
應神天皇の御代に百済から呼び寄せたとされる渡来人で古事...
--③『文選』
中国の南北朝時代の南朝梁の蕭統によって編纂された詩集・...
--④『懐風藻』
天平勝宝三年に成立した、日本最古の漢詩集。収録された詩...
--⑤大友皇子
天智天皇の第一皇子で後継者であったが、壬申の乱において...
#br
-(2)
⑥我は書を彼に与ふ。
⑦虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
⑧汝は我の古人の書を読まんと欲するを知る。
⑨我は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
⑩未だ之有らずや。
⑪須らく病苦之時を思うべし。
⑫将軍をして城門を攻めしむ。
⑬天帝は我をして百獣の長たらしむ。
⑭信にして疑はれ、忠にして謗らる。
⑮唯だ奴隷之手に辱めらるのみ。
#br
-(3)
--⑯
金烏は西舎を臨み、
鼓声は短命を催す
泉路に賓主は無し
此の夕に誰の家に向ふ
--⑰
傾いた太陽は西の建物を照らし
時を告げる太鼓の音は私の短い命をせきたてる
黄泉の道には客人も主人もいないという
この夕べに私は一体誰の家に向かうのであろうか
--⑱
// 文章から考えれば、普段から見聞きしていた筈の斜陽も時...
この詩は大津皇子の臨終に際して詠まれた辞世の詩である。...
#endregion
***第九講目の内容
前回の課題研究のフィードバックと授業。
#region(比較)
''比較''
|文の型|書き下し|現代語訳|h
|[形容詞・形容動詞]ニ+[於・乎・于]+[比較対象]一|[比較対...
|不(未)レ〔如・若〕~|~にしカず|(~に及ばない、~の方...
|莫(無)レ〔如・若〕~|~ニしクハなシ|(~にこしたことは...
>''例文''
①霜葉紅於二月花。
→霜葉は二月花よりも紅なり。(霜にうたれた葉は二月の花より...
②百聞不如一見。
→百聞は一見に如かず。(百回聞くことは一回見ることに及ばな...
③未若文章之無窮。
→未だ文章の無窮なるに若かず。(文章が永遠であることには及...
④莫如寒夜読書。
→寒夜に書を読むに如くは莫し。(寒い夜に書を読むのにこした...
#endregion
#region(浦島子)
''浦島子''
>''『日本書紀』雄略天皇二十二年七月条''
秋七月、丹波国余社郡管川人水江浦嶋子、乗舟而釣、遂得大亀...
於是浦嶋子感以為婦、相逐入海、到蓬莱山、歴覩仙衆。語在別...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|丹波国余社郡管川|現在の京都府与謝郡伊根町のあたりを指す...
|便|訓は「すなわち」。|
|女|訓は「をとめ」。「便化為女」は「便(たちま)ち化(ば)け...
|感|古訓は「めで(愛で)」。ここでは「気に入る」「恋する...
|婦|古訓は「め(女)」。妻の意。|
|相逐|古訓は「あひしたがひ」。逐は「後を追う」「順に従う...
|蓬莱山|道教で東の海上にあるとされる神仙境の島。不老長寿...
|仙衆|古訓は「ひじりたち」。|
|歴覩|訓は「めぐりみる」。覩(ト)は「見る」の意。|
|語|古訓は「こと」。ここでの「こと」言葉の意ではなく、物...
|別巻|古訓は「ことまき」。『日本書紀』は別な書物を指す。...
『日本書紀』の記事は、地方から報告された「浦島子」の体験...
この記事の元ネタとなるような「浦嶋子の物語」があったらし...
この「別巻」が『丹後国風土記』かは定かでないが、『丹後国...
#endregion
***第十講目の内容 [#zd2f1689]
#region(『丹後国風土記』の浦島子)
''『丹後国風土記』の浦島子''
風土記の撰進の命は和銅6年(713年)に出され、その数年の後に...
正確な成立年代は不明であるが、『日本書紀』とほぼ同時代の...
ただし、『丹後国風土記』は諸書に引用された逸文のみが残さ...
浦島子の記事も『釋日本紀』(13世紀後半の成立)という書物...
>''本文と書き下し文①''
丹後国風土記曰、與謝郡日置里、此里有筒川村。此人夫日下部...
爲人姿容秀美、風流無類。斯所謂水江浦嶼子者也。是舊宰伊預...
#br
丹後国風土記曰く、與謝の郡日置の里、此の里に筒川の村有り...
人と爲り姿容秀美にして、風流(みやび)類(たぐい)無し。斯(こ...
是は舊宰(もとのみこともち)伊預部馬養連(いよべのうまかいの...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|丹後国|京都府東北部、丹後半島あたりの国。『続日本紀』和...
|日置(ひおき)|丹後半島東南の宮津市日置該当地。雄略紀に...
|筒川(つつかわ)|現在の伊根町に属する。紀では「管川」と...
|人夫|古訓「たみ」|
|日下部首|日下部(くさかべ)の伴造(ともみやつこ)たちの...
|嶼|音は「ショ」、訓は「シマ」。嶼子は嶋子と同じ。|
|風流|古訓「みやび」|
|舊宰|訓「もとのみこともち」。「舊」は「旧」の旧字体に同...
|伊預部馬養連|持統・文武朝の文人。丹波国守。大宝律令の撰...
|所由|古訓「こと」。|
この冒頭部には、いくつか重要な情報が記されている。
①舞台を「丹後国」とするこの記事は和銅6年(713)以降に書...
→雄略紀は「丹後国」設置(713年)以前の古い国名に依拠して...
②浦嶋子は、この地方では地元の豪族と見られる日下部氏の始祖...
③『丹後国風土記』とは別に、伊預部馬養連(702年没)という...
→伊預部馬養連の「浦嶋子伝」は702年以前の成立だから、雄略...
>''本文と書き下し文②''
長谷朝倉宮御宇天皇御世
(省略)
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|長谷朝倉御宇天皇|雄略天皇を指す。「御宇」の古訓は「あめ...
|五色亀|五色(青・白・赤・黒・黄の中国の説に対応)の亀は...
|人宅|古訓「ひとざと」。|
|海庭|古訓「うなばら」。|
|女娘|古訓「をとめ」。|
|微咲|古訓「ほほえみ」。|
|勝|「かつ」ではなく、「たえる」意。|
|就|「就」は「つく」の意。風雲についてとは、風雲に乗って...
|天上仙家|天空に住む天仙。古訓は「あめのひじりのいへ」。|
|愛|古訓「うつくしみ」。|
|賤妾|古訓「やつこ」。女が自分を卑下した言い方。|
|畢(ヒツ)|「おえる」の意。|
|許不|「許可」か「不許可」かという諾否。古訓「いなせ(否...
|触|物事に触れて心が動くことで、ここでは心変わりの意。|
|蓬山|神仙境の蓬莱山の略。古訓「とこよのくに」。|
|闕臺|古訓「うてな」。宮城の門。|
|晻(アン)|「くらい」の意。|
|楼堂|古訓「たかどの」。二階建ての建物|
|玲瓏(レイロウ)|美しく照り輝くさま。|
>''要点整理''
①時代は雄略天皇の時代のこと→『日本書紀』と同じ。
②嶋子の釣った五色の亀が乙女となる→『日本書紀』では大亀
③乙女の方が風流な嶋子を見そめて近づいた→独自の記述
④乙女は「仙家の人」であり、「神女」と認識されている。
⑤二人が向かうのは蓬山→『日本書紀』の蓬莱山に同じ。
『日本書紀』雄略紀と類似しているが、内容は『丹後国風土記...
#endregion
***第十一講目の内容 [#ib872ca7]
#region(否定)
''否定''
>''否定を示す漢字''
①不・弗(~ず)※条件文の場合(~ずンバ)・(~ざレバ)
②無・莫・勿・毋(~なシ)※命令文・禁止文の場合(~なカレ)
③非・匪(~ニあらズ)
>''練習問題''
①其人弗能応也。
※能...あたふ(~できる)
→其の人応ふる能はざるなり。
②我心匪石。
→我が心は石に匪ず。
③非疾痛害事也。
※疾痛...痛み
※害...支障がある
→疾痛事を害するに非ざるなり。
④過則勿憚改。
※則...すなわチ。意味としては特に訳さない助辞
→過ちては則ち改むるを憚る勿かれ。
|CENTER:全部否定|CENTER:部分否定|h
|常不~&br;(つねニ~ず)&br;「いつも~ない」|不常~&br;...
|必不~&br;(かならズ~ず)&br;「必ず~ない」|不必~&br;...
|盡不~&br;(ことごとク~ず)&br;「すべて~ない」|不盡~&...
|復不~&br;(まタ~ず)&br;「今回もまた~ない」|不復~&br...
|構文|書き下し文|現代語訳|h
|未嘗~|いまダかつテ~ず|今まで一度も~ない|
|不敢~|あへテ~ず|決して~ない|
|例文|書き下し文|現代語訳|h
|必不&color(Red){&size(10){レ};};有&color(Red){&size(10){...
|不&color(Red){&size(10){ニ};};必有&color(Red){&size(10){...
|我復不&color(Red){&size(10){ニ};};努力&color(Red){&size(...
|我不&color(Red){&size(10){ニ};};復努力&color(Red){&size(...
|未&color(Red){&size(10){ニ};};嘗見&color(Red){&size(10){...
#endregion
#region(蓬莱山(とこよ)の浦嶋子)
>''記述''
-''本文''
即立前引導、進入于内。
女娘父母共相迎、揖而定坐。
于斯称説人間仙都之別、談義人神偶會之嘉。
乃薦百品芳味。兄弟姉妹等挙杯献酬。隣里幼女等紅顔戯接。
仙哥寥亮、神儛透迤。其爲歓宴、萬倍人間。
於茲不知日暮。但黄昏之時、群仙侶等漸々退散。
即女娘獨留。雙肩接袖、成夫婦之理。
-''書き下し文''
即ち立ちて前に引導(みちび)き、内に入り進む。
女娘の父母、共に相ひ迎へ、揖(をろが)みて定めて坐す。
斯(ここ)に人間(ひとのよ)・仙都(とこよ)の別(わかち...
乃ち百品の芳しき味(あぢはひ)を薦(すす)む。兄弟姉妹等 ...
仙哥(とこよのうた)は寥亮(まさやか)にして、神の儛は透...
茲(ここ)に日の暮るるを知らず。但し黄昏(たそがれ)の時...
即ち女娘は獨り留まれり。肩を雙べ袖を接(まじ)へて、夫婦...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|引導|古訓(二字で)「みちびき」|
|揖(ユウ)|胸の前に両手を組み合わせて行う挨拶の礼法。古...
|斯|訓「ここ」|
|称説|申し述べる。古訓(二字で)「とく」。|
|人間|古訓「ひとのよ」。|
|仙都|古訓「とこよ」。|
|談義|古訓「かたる」。|
|偶|たまたまの意。古訓「たまさか」。|
|献酬|杯をやり取りすること。古訓「とりかわす」。|
|戯接|古訓「たはぶれまじる」。|
|仙哥|古訓「とこよのうた」。|
|寥亮(リョウリョウ)|声や音が澄んで通るさま。古訓「まさ...
|透迤(トウイ)|道や川が曲がりくねるさま。ここでは身を緩...
|歓宴|古訓「うたげ」。|
|萬倍|古訓「よろづまされり」。|
|茲|訓「ここ」。|
|群仙侶等|古訓「とこよびとたち」。「群」は「おおく」「も...
|漸々|次第々々に。古訓「やうやく」。|
|雙|ふたつ並ぶこと。|
|接|まじわる。まじえる。|
|成夫婦之理|「理」は「ことわり」。古訓は「まぐはひ」。|
>''まとめ''
浦嶋子が訪れた蓬山(常世)は、中国的な仙界のイメージ。
そこでは女娘だけでなく、その父母や兄弟姉妹、近隣の幼女ま...
浦嶋子と女娘は結婚し、肉体的にも結ばれる。その場面も具体...
しかし、浦嶋子は望郷の思いに耐えられず、故郷に帰ることに...
つまり、子ども向けの昔話や童話ではなく、大人の読み物であ...
#endregion
***第十二講目の内容 [#i1913488]
#region(疑問)
''疑問''
文脈判断が重要。機械的な判断は危険。
|用法|書き下し|現代語訳|備考|h
|誰~|たれカ~|誰が~か|「誰~者」で「たれカ~ものゾ」(訳...
|~|たれヲカ~|誰を~か||
|孰~|たれカ~|誰が〔どれが〕~か|多数から選ぶ|
|~|いづレカ~|どちらが~か|二者択一|
|何~|なにヲカ~|何を~か||
|何・奚・胡~|なんゾ~|どうして~か||
|何為・奚為・胡為~|なんすれゾ~|どうして~か|「何為者」...
|安・悪・焉|いづくニカ~|どこに~か|場所を聞く|
|~|いづクンゾ~|どうして~か|理由を聞く|
|奈何・如何・若何|いかん・いかんセン|どうしよう|「奈A何」...
|何如|いかん|〔状態〕どうだろうか/〔理由〕どうしてだろう||
|幾何|いくばくゾ|〔数量〕どれくらいだろうか||
|何以|なにヲもっテカ|〔理由〕どうして~か/〔手段〕何によ...
>''練習問題''
①誰為&color(Red){&size(10){ニ};};此計&color(Red){&size(10...
→
②弟子孰為&color(Red){&size(10){レ};};好&color(Red){&size(...
→
③何謂&color(Red){&size(10){ニ};};浩然之気&color(Red){&siz...
→
④何能爾。
※爾...「しかる」(そのように)
→
⑤何為不&color(Red){&size(10){レ};};去也。
※也...疑問文の場合の訓は「や」
→
⑥子将&color(Red){&size(10){ニ};};安之&color(Red){&size(10...
※之...「ゆく」
→
⑦天下悪乎定。
※乎...置き字
→
⑧奈&color(Red){&size(10){レ};};若何。
※若...「なんぢ」(あなた)
→
⑨以&color(Red){&size(10){ニ};};子之矛&color(Red){&size(10...
※子...あなた
※陥...「とほす」(突くこと)
→
⑩其賢幾何
#endregion
#region(帰還後の浦嶋子)
''帰還後の浦嶋子''
『丹後国風土記』の浦嶋子の記事(嶋子が蓬莱を訪れて、帰郷す...
多くの人物が登場し、一般的な「浦島太郎」とは違いがある。...
二人は別れ別れになり、悲恋に終わるが、明らかにこのお話は...
つまり、子どもための童話などではなく、大人のための読み物...
>''記述(抜粋)''
-''本文''
忽到本土筒川郷。即瞻眺村邑、人物遷易、更無所由。
爰問郷人曰、水江浦嶼子之家人今在何處。
郷人答曰、君何處人、問旧遠人乎。吾聞古老等相伝、先世有水...
今経三百歳餘者、何忽問此乎。即銜棄心、
-''書き下し文''
忽ちに本土(もとつくに)の筒川の郷(さと)に到る。即ち村...
爰(ここ)に郷人に問ひて曰く、水江の浦嶼子の家人は今 何處...
吾 古老等の相ひ伝ふるを聞くに、先の世に水江の浦嶼子あり、...
何ぞ忽ち此を問ふや。即ち棄てし心を銜(いだ)きて、
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|本土|古訓「もとつくに」|
|郷|むら。行政区画の「郷(きょう)」ではない。|
|瞻眺(センチョウ)|瞻は「見る」、眺は「ながめる」。古訓...
|村邑|村も邑も「むら」の意。古訓は「むらざと」。|
|遷易|易は「かえる」「かわる」の意。|
|爰|訓「ここ」。|
|旧遠|古訓は二字で「むかし」。|
|者|古訓「てへり」。「...と言った」の意。ここでは「者なり...
|忽|ここでの「タチマチ」は「すぐ」ではなく「おもいがけな...
|銜(カン)|「口に含む」が本来の意だがここでは「胸に含む...
|棄心|古訓「すてしこころ」。「心ヲ棄テ」とは訓じない。放...
|親|古訓「したしきもの」。ここは「おや」の意ではない。|
|旬日|十日のこと。|
|感思|古訓は二字で「したひ」。|
|神女|古訓「かむおとめ」。|
>''歌''
-''本文''
即未瞻之間、芳蘭之體率于風雲、翻飛蒼天。嶼子即乖違期要。
還知復難會。廻首踟蹰、咽涙徘徊、于斯拭涙。哥曰
〽[※万葉仮名]
等許餘弊尓(とこよへに)
久母多智和多留(くもたちわたる)
美頭能睿能(みづのえの)
宇良志麻能古賀(うらしまのこが)
許等母知和多留(こともちわたる)
#br
-''書き下し文''
即ち未だ瞻(みえ)ざる間、芳蘭(かぐわしき)體(すがた)...
還(ま)た復び會ひ難きことを知る。首(かしら)廻らして踟...
〽
常世べに雲立ち渡る水江の浦嶼の子が言持ち渡る
#br
(この後も「神女」の返歌やそれに対する嶋子の返歌、そして...
|>|語釈|h
|単語|解説|h
|未瞻之間|瞻は「見る」。「見えざる間」とは一瞬のこと。|
|芳蘭|蘭の花のような良い香のこと。古訓は二字で「かぐわし...
|體|「体」に同じ。古訓は「すがた」。|
|乖(カイ)|そむくこと。|
|還|訓「また」。|
|踟蹰(チチュウ)|ためらうこと。古訓は二字で「たたずみ」。|
>''まとめ''
★浦嶋子のお話は、ラブ・ストーリーの要素が強い。(伊予部連...
★「蓬山」など神仙思想が見られ、中国文化の影響を受けている...
★『丹後国風土記』の浦嶋子伝では、老人になったのではなく、...
#endregion
***第十三講目の内容 [#w8fd3513]
***第十四講目の内容 [#qe0c8cbc]
***第十五講目の内容 [#yd139e2f]
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